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THE GAZETTEを読む(9)2014年2月号 LSPによって自然なリーダーシップを再び発明しなおす

 本記事は、ラスムセン・コンサルティングが発行しているメールマガジンTHE GAZETTEのバックナンバーを、日本語訳をしながら、コメントを加えながら読んでいくシリーズの一つである。レゴ®︎シリアスプレイ®︎のファシリテーター・トレーニング修了者向けに書いている。
 この記事の引用元原文はこちらのPDFから読むことができる。

 LSP(レゴ®︎シリアスプレイ®︎)の大きなメリットの1つは「20-80の会議」の呪縛を解き、全員が対等であるフェアなプロセスを作り上げることができることだ、と何度も述べています。

THE GAZETTE 2014年2月号をDeepLで翻訳・筆者が修正

 冒頭にあるように、今号は全員が対等に参加するプロセスの重要性について扱っている。

これは、あなたが参加する会議に似ていると思いませんか?
 「20-80の会議」では、1人か2人、多くの場合、最も年上の人か会議の主催者が、会議を支配し、楽しんでいます。この支配的な少数派(20%)が時間の80%を占めるので、「20-80」というタイトルになったのです。このため、残りの80%の出席者は、ほとんど貢献する機会がない。貴重な知見が得られないだけでなく、話を聞いてもらえない、理解してもらえないというフラストレーションは、会議後の社員の仕事に対する姿勢にまで影響を及ぼす可能性があります。

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 この「20-80の会議」というフレーズは本当によくできていると思う。悪い会議の本質を非常にシンプルに捉えている。貴重な知見の発見機会を奪うこと、理解してもらえないというフラストレーションが広まることが組織にとっていかに大きな損失か、LSPファシリテーターもクライアント(候補)にしっかりと理解してもらう必要がある。

時代を超えて愛されるリーダーの条件

 では、なぜレゴ®︎シリアスプレイ®︎は、この呪いを解くために、平等をもたらすことができるのでしょうか。オランダの進化生物学者、Mark van Vugtの「リーダーシップの進化科学」についての研究が、そのヒントを与えてくれるかもしれません。
 van Vugt は、著書『Naturally Selected, the Evolutionary Science of Leadership』の中で、現在のマネジメントの理論と実践が、私たちの脳よりも急速に進化していることを説得的に説いています。私たちの脳の奥底には、善悪、理屈、不合理を見分ける原始的で自然な感覚が息づいているのです。
 石器時代の男女は部族で結束していました。部族のメンバーがどのように、そしてなぜ協力し合い、繁栄してきたのか、その多くの側面は、現代の速く、複雑で混沌とした世界においても意味を持ち続けています。石器時代の人々のリーダーシップは、信頼に基づくものでした。部族の人数が150人から200人を超えることはほとんどなかったので、人々はお互いをよく知り、その関係は緊密で非公式なものでした。原始社会では資源や権力を蓄積することが困難だったため、初期の人間同士はより平等な関係でした。

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 「信頼」が長らく人間社会の編成原理でありつづけてきた故に、それは、われわれの脳底にある原始的で自然で、好ましい感覚となっているという指摘は注目に値する。確かに、信頼のおける人々との協働は、他の人に対する心配というエネルギーの消耗を避けることができる。そして、その分だけ創造的な個人活動や協働にエネルギーを注ぐことができるようになる。「20-80」が続くと20以外の人の考えていることがわからないため全体への「信頼」はなかなか高まらないということになる。
 引用冒頭の「この呪い」の構造については、横のコラムに写真と共に文章が添えられている。

20-80の会議が行われる理由の一つは、数人の支配的な人がすぐに話し始め、その人が議題を引き継ぎ、内容の組み立て方を制限してしまうからです。LSP以外では、全員が議論に参加し、全員が自分の意見を述べるというプロセスはほとんどありません。

 「数人の支配的な人が議題を決め、引き継ぎ、内容の組み立て方を制限してしまう」のは、支配的な人が議論を確実に先に進めたいと思う気持ちから起こっていると考えれば、支配的な人なりに「良かれ」と考えての行動だということになる。そうであるにもかかわらず、結果として皆にとって悲劇である。まさに「呪い」である。

リーダーシップはモチベーションを殺す

 van Vugtによれば、平等の原則は今でも私たちの本能の重要な部分です。だからこそ、大組織はやる気を失わせるのです。大きな組織では、トップが新入社員の380倍もの給料をもらっていることもあります。このような報酬の差は不自然で疎外感を感じさせ、一般社員の不満は深まるばかりです。私たちの祖先の時代には、リーダーは民主的に選ばれるのが普通でした。しかし、現代の一般社員は、リーダー選びに対してほとんど影響力を持ちません。また、状況やプロジェクトに応じたリーダーシップではなく、多くのリーダーがいつも変わらず権力を握っています。

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 大きな組織に関わらず、その組織の環境が変化し、それに対応していくプロセスの中で、結果の「平等」は常に脅威にさらされる。環境の変化に合わせて組織の中で活躍できる(結果が出る人)人に偏りが出るからである。そして活躍した人に対して褒賞で報いれば、活躍の機会のなかった人(環境が求めていない結果、結果が出なかった人である)は不満に感じるだろう。活躍した人に何も与えなければ、今度は活躍した人が不満に思うであろう。

平等を実現するために

 社員が階層的なシステムの中で働くことに慣れている場合、社員がお互いを知り、信頼し、目の前の課題に応じてリーダーシップを発揮する、より自然なリーダーシップモデルに移行することは困難である といえます。私たちが大規模な組織で行ってきた研究から得られた重要な洞察は、レゴ®︎シリアスプレイのプロセスが持つ平等で民主的な性質が、すべての従業員が自らの深い知識と再び結びつき、自然なリーダーシップを生み出し、開花させるためのより良い土台を作ることができるというものです。

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 結果の「平等」の実現が難しければ、プロセスの「平等」を作り出すしかない。つまり、皆がそれぞれ同じ努力をすることで組織に貢献するということである。会議であれば、皆が同じように会議に関わるということである。最終的に誰かの発言や意見が採用されるかもしれないが、皆が等しく関わって結論が出されることが大事となる。同じように、誰かがリーダーシップを取ることになるかもしれないが、誰がリーダーシップを取るかについて皆が等しく関わってそのプロセスの形成が重要である。
 われわれファシリテーターは「平等な」プロセスにこそ価値創出の源泉があることを忘れず、その「平等な」プロセスを際立たせながら、ワークショップを展開するようにしなければならない。

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