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December 16, 2020, 1:00 AM

アレックスはつよい。おぼっちゃまのくせに。
9歳から一人で外国の学校へ行かされ、ともかく素直に頑張った。
ある意味、親の気分や都合で韓国の難関校へ入学されたかと思うと、アメリカへ留学させられ、また戻され、また行かされ、柔軟性と学力がないとやっていられない。私の知らない高校卒業後からの29年間はさらに激動だったと。お父様が亡くなった後韓国へ再度渡り、一浪して難関大学へ進学した。相続では親族に裏切られたりして。自力で起業して。若くて無知だったから、頑張っても頑張っても戦いきれなかったらしい。一度は全てを失ったらしい。『身も心もボロボロになる事』が何度かあったと。

私にはその29年間の全てが手にとるようにわかった。私も彼がお父様を亡くした翌年に母が亡くなり、その後ほぼほぼ同じ道を通ったから。上がるも下がるも、血縁や世間から愛されるも裏切られるも。同じような道を、同じ頃に。それぞれ。彼はソウルで、私は東京で。話を聞いていて、こっちが涙溢れた。

よく生きてたね。よく頑張ったね。私はギブアップして、何度か死にかけて、投げやりになったまま、のらりくらり起き上がって今日に至る。何とか生きているが、思い描いていた人生ではない。のらりくらり。

ところがアレックスはこの15年で完全に這い上がってる。心からおめでとうと言いたいと思った。すごすぎる。一度どん底を見ると人は、それまでの経験から何事に対しても言動がネガティブな先入観に支配されがちで、先回りして世の中を否定したり、見切ってしまう傾向があると思う。私は残念ですがそう。ところがアレックスは柔軟に前を見ている。道を切り拓いてモノにしている。

彼の現在のアメリカでの成功は目を見張るものがあり驚いたが、それを心から喜んでいる自分にも正直驚いた。私は通常他人の成功を心から喜べないので。(嫉妬というよりも、同列に並べない自分がむなしくて引いてしまう感じ。)ところが彼はあまりにも謙虚で、「恥ずかしいけれど僕はまだまだだから、これからは君の知恵を貸してね」といった態度であった。彼の一言一言は、軽やかでありながら、深い。かっこいいばかりではなく、時折少年だった頃とかわならい自我や弱みを曝け出してみたり、甘えに流されるのも隠さず披露してくれるのだが、そういったことが彼をより一層誠実で魅力的な人間に見せている。都度反省し、学び、進み、責任を全うし、人に優しく、謙虚に、だからこそ胸をはって生きることを日々実践していけてる様に感じた。

若気のいたりとはいえ、私が一方的にひどいいいぐさで別れたまま29年が経って今更何ともムシの良すぎる話ですが、この人が欲しい。もう一度、この人といたい。今まで出会ったどんな男性よりも成熟した大人へと成長した元彼に、私はすぐに夢中になってしまった。

娘がいるとはいえ独り身ですから、恋をする資格はある、ある。
問題は、この気持ちが本当の恋かということ。
ただ単に昔懐かしさや馴染みへの甘えから来ている勘違いではないか? 
それから、そもそも相手はきれいに一人なのだろうか? 
たとえば、思ったり思われたりする女性はいないのだろうか? 
洗練された仕草や話し方には大人の男性ならではの色気がある。誠実な人だという事も明らかである。だからこそモテるに違いない。仕事はどれも成功もしている。外見も美しい彫刻の様な男だし。

2回目の電話だったか、アレックスは私に対してと言うよりかは、一般論的にこういった。「そろそろ誰かと落ち着きたいって憧れはあるよ。でも急いで関係を持ちたいとは思わない。色々な経験をしてきたから。」

この上なく優しく、私を女性として褒め称えながらも紳士であり続ける彼の心中はすぐには掴めなかった。若干イライラした。もしかしして、私と同じように優しく声をかけて甘やかす女性は他にもいるのではないかと思い、5回目あたりの電話で聞いてみた。「ねぇ、どうなの?」と。

If I was in a relationship and talked to you the way I talk to you, it is bad. I wouldn’t do that to my lady. 
(もし交際している女性がいた場合、僕の君へ対する話し方は、彼女へ対して失礼になる。僕はそんな事はしない。)

当座ブレーキをかけた会話に留意したかったのだが、この返答を聞いた直後から、非常にそれが難しくなった。超マトモなレスポンスに感動した。普通の事を普通に言ってのける男性はそう多くない。超マトモ!
存在しないと断言された ”my lady" に対して無駄な嫉妬。私が ”my lady" になりたいっ! 

心が口をうごかしてしまっていて、ヘンテコな質問をしてしまった。
Would you be offended if I tell you that I love you? 
(ねぇ、突然ですが、愛しているって言ったら、引いちゃう?)

一瞬の沈黙、そして返答。
Why do I get offended by hearing the word I want to hear from the person the most. I love you too. I think I told you, when you are ready I’m ready. I was just waiting for you.
(一番聞きたい言葉を一番言って欲しい人から聞いて、引くわけがない。僕も愛している。言わなかったっけ? 君次第って。)


涙が勝手に出てきた。心臓がバクバクいっている。

「へっ?そんなこと言われたっけ?w」 と、ヘラヘラしながら日本語で問う。
すると、ストレートにはっきりとした口調の日本語で、「はい、そうです」と返ってきた。

そして続けた。

I love you. You must know by now. I tell you one more time, I love you too.

「・・・え、じゃあ今後もし、一人ですか?って聞かれたらなんて答えるの?」

I have a girlfriend now and she is in Japan. I think we should try again.

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