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3日間の隣のおじさん。

今月の3日間、ある資格を取得するための講習を受けました。そのときに感じたなにげない話です。

2日間朝10時から夕方まで4つ5つの講習を受け、1週間あけてまた朝10時から夕方近くまで3日目の講習を受けて、そのあと試験、という流れの講習でした。
80人を超える受講者。席は長テーブルに1人分スペースをあけて2人ずつ。受講番号で機械的に席が決まっていました。当然隣の席の方は見知らぬ人。わたしの隣はおじさんでした。このご時世なのでマスクはしていますが、なんとなく素朴でやさしそうな印象でした。

講習1日目の朝。初めて席についた時。「おはようございます」と挨拶をするとおじさんも「おはようございます」と頭を下げながら返してくれました。おじさんとわたしの間にある椅子にカバンを置いて良いかをたずね、「どうぞどうぞ」と言ってくれて、「ありがとうございます」と返す。そんな会話だけを交わしたあと講習が始まりました。お昼ご飯はおじさんは外に食べに行ったようで、わたしはお弁当を持ってきていたのでその場で食べる。会場で食事をする人はこのご時世なのでそれぞれ黙食です。お昼休みが終わり、午後の講習が始まり、夕方に終わる。帰り際に「失礼します」と挨拶を交わしてその日は終わりました。

講習2日目。講習期間中、席は決まっているのでお隣は昨日と同じおじさんです。「おはようございます」と挨拶を交わして始まりました。昨日初めて会った知らないおじさん。でも初日よりも少し「知っている人感」が生まれていたように思います。午前中の講習が終わり、お昼休みは昨日と同じようにそれぞれで食べて午後の講習がスタート。午後1つ目が終わった時に、「眠かったです」と何気に言うと、「そうですね。もうちょっと○○な内容かと思ったけど、違いました」とおじさんがボソボソっと言葉を返してくれました。そのあと2つの講習があり、その日の講習は終了。わたしが自分の荷物をごそごそと片付けていると、「早く出ないと車が混んで駐車場から出られなくなるので。では」とおじさん。「そうなんですね、お疲れさまです」とわたし。おじさんは急いで教室を出ていきました。
まったく知らない者どうしとはいえ、2日で約12時間、隣に座って同じ講習を受けてきた同志感みたいなものがじわじわ出てきたのか、1日目とは違った、ぼんやりとした親近感が漂っていました。

講習の初日の受付時に、資格試験のテキストを受け取ったのですが、2センチ近くあるA4サイズの本で、その分厚さに正直途方にくれました。
2日間の講習を終えて再来週の試験までしっかり勉強しなければなりません。3日目の講習の受付時にはレポートも提出が必須で未提出だと試験を受けることができません。ちなみにこのレポートは、教本から抜粋された文章に空白の箇所があって、その空白の言葉を埋めるというもの。これが結構な量でした。さてさてとにかくがんばらねば。

仕事の〆切が重なり、なかなか厳しい状況だった1週間を終え、講習3日目がきました。前夜遅くから試験勉強を始め寝不足のまま会場入り。早めに到着したものの、すでに多くの人が机で教本にむかっていました。
「おはようございます」、席で教本を読んでいたおじさんに朝の挨拶。「おはようございます。勉強できました?」とおじさん。「いえいえぜんぜん」と言いながらカバンから教本を出すわたし。たっくさん付箋のついたわたしの教本を見ておじさんが言った「おぉー、さすがですね!!」。「いやいやこれはレポートの箇所に付箋をつけただけなんですよ笑」「そうなんですね笑」…なんだろうこの感じ。1週間あいだがあいているのに逆に仲間感があるぞ。
朝1つ目の講習が終わり、なんとなく2日目の講習の先生の話をしたり。2つ目の講習が終わり「眠い」という話になったり。午後の講習が始まる前におじさんが書いて覚えたらしいノートが2冊もあって「すごいですね!」「いやいや書かないと覚えられなくって」と会話を交わす。出会って3日目のおじさんだけど、お互い名前も知らないけれど、試験合格という共通の目標に向かって励む同志のような、そんな親近感が生まれていました。
3日目の講習を終えて、ドキドキの試験。解答用紙と問題を提出した人から帰って良いという試験だったので、帰りの挨拶はできなかったけれど、会釈だけして会場を後にしました。

県主催の事業で同じ県民だということ、席の順からどの市の方かまではわかりますが、それ以外のことは何も知らない隣の席のおじさんです。もちろん同じ釜の飯は食べていないですし、わずか3日だけのご一緒。でも席を並べて同じ講習を受け、同じ試験を受けるという共通項があるからか、いつのまにか「お互い合格しますように」と健闘を祈り合うようなほんわかとした空気がおじさんとわたしの間にできていました。

別の市に住んでいるのでまちでバッタリ出会うということはありませんが、もしそうなったら「あぁ、お元気でしたか、あの時はお世話になりました。試験の結果はどうでしたか」なんて声をかけあうだろうなぁ。なんて、マスクをしていたし、そのうち顔も忘れて、もしもまちで偶然会ってもわからないでしょうが、そんなことがふと頭をよぎる気持ち良さや懐かしさを感じながら会場をあとにしたのでした。
共通項と同じ目標、共にした時間のパッケージって人と人を近づける力があるんだなぁって実感した、たわいもない話です。

今日、試験の合格通知がきました。合格率80%以上なのでたいしたことではないかもしれませんが、やっぱりうれしいです。あのおじさんも合格していますように!!

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