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02文通_たわいもない話を。

編集長と、兵庫在住の道前さんの文通も4月に入りました。話は10代で経験した心の揺れのエピソードへ。(01はこちらからどうぞ)

集まらなくても、会わなくても、お互いをあたため合うことはできるはず。

道前さん

こんにちは。工藤大貴です。
福男選びしている神社も甲子園球場も、両方西宮なんですね!
それだけ聞くとすごく刺激的な場所のように思います。
センバツ、中止残念でしたよね。
なんだか、街のアイデンティティまで、もがれていくような…。

東京もこの前メールを送った時から、あっという間に雰囲気が変わりました。桜の名所、上野公園も立入り禁止エリアができて、毎年の騒がしい宴会が懐かしいほどです。

やっぱり雑多で猥雑なほうが楽しいなぁと思うし、それがこの街のアイデンティティだったんだと気づかされました。

学生の頃に、友達とコンビニでお酒を買って、上野公園で飲んだのを思い出します。なんでもない記憶だったのに、まさか暇を潰していたような日常が非日常になるなんて。

ところで、道前さんは聞き書き甲子園で「私の知らない場所が無限にあると実感した」と書いていたよね。
たぶん、聞き書き取材は初めて訪れる地域で、いろんな出会いがあって、いろんな感情が交錯したと思うんだけど、具体的にどんな旅だったのか聞いてみたいです!

僕は10年くらい前に聞き書き甲子園に参加して、北海道の小さな町で木こりをしている人に取材しました。雪深いところで、鳥の羽音が聞こえるくらい静かで、きれいな小川で釣りもして、物語のなかにいたみたいな不思議な時間だったのを覚えています。

通っていた高校で少し窮屈さを感じていた僕は、その旅で知らない世界がたくさんあるんだってわくわくして、半年後には初海外でウズベキスタンに1週間の旅行にも行きました。

聞き書きとウズベクへの旅で、窮屈さから少し解放されて、息がしやすくなったなぁと思った気がします。僕が生きていく世界は学校とか生まれた場所だけじゃないんだ、って。
その時、初めて実感として持てたんじゃないかなぁ。

ちなみにウズベクを選んだ理由は、画像検索してもらえるとわかるはず。イメージがあんまりないかもしれないけど、とっても美しい国なんです。

道前さんの聞き書きでの旅の記憶。ぜひ聞かせてください。

工藤大貴(3月31日、芝浦より)

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工藤さん

こんにちは!道前結です。
センバツの中止、出場が決まっていた高校は本当につらいだろうなあと思います。目標が突然なくなって、戦いの土俵に立つこともできないなんて…。

私は学校で絵画部に入っているんですが、今まで当たり前にやってくると思っていた文化祭や合宿が、突然なくなる可能性だってあるんだよなあと思わされるこの頃です。

結果のために努力を重ねることも大切ですが、その過程や何気ない日々を、今の時間を楽しむことが1番なのかもしれない、なんて考えています。

聞き書きでは、福井の小浜市でアユ漁や狩猟を行っている名人に取材をしました。まず、西宮から小浜への約3時間の電車での旅路が、“日本の広さ”を実感として教えてくれたように思います。

西宮から小浜。日本のごくごく一部にすぎないなかにも、おそらく何十、何百もの駅があって。ローカル線に乗車してくるおばあさんや制服を着た学生の姿は、私の知らない場所にも人々の生活がある、という当たり前を身をもって感じさせてくれました。

身の回りの生活が日本の全てのように思い込んでいたことに気づかされ、海外に目を向けなくたって、日本にも知らない生活がこんなにあるじゃないか!と思ったんです。

名人への取材では、そんな私の知らない生活のなかにある、素敵なものの存在にハッとしました。

名人が一から手作りした投網漁のための網。
箱罠の中で激しく身をぶつけるイノシシ。
太陽の光がキラキラと反射している小浜の川。
名人のアユ漁への熱心な思い。

挙げだすときりがありませんが、もし聞き書き甲子園に参加していなかったら、このどれもに出会うことがないまま一生を終えていたと思います。
そんな素敵なものたちが、私の知らない場所、生活の中に溢れています。

聞き書き甲子園に参加できて、本当によかったなあとこの文章を書いていても、思います。

最初は東京への研修会にも、取材にも全額無料で行けることに惹かれて応募したのですが、こんなに多くのものを得られるとは…。

ウズベキスタンへの旅、すごく憧れます!画像検索してみると、建物の色合いも模様も綺麗で、びっくりしました。
ウズベキスタンでの旅のこと、高校時代に感じていた窮屈さのこと、ぜひまた聞かせてください。

道前結(4月2日、西宮より)

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ありがとうございます。 列島ききがきノートの取材エリアは北海道から沖縄まで。聞きたい、伝えたい、残したいコトバはたくさんあります。各地での取材にかかる交通費、宿泊費などに使わせて頂きます。そして、またその足跡をnoteで書いていければ。