雪を楽しめなくなったのは、いつからだろう。
雪が珍しくて、白くて、冷たくて、好きだった。
小さい頃、雪が降れば、びしょびしょに濡れるまで遊んでいた。
ダウンと手袋、ニット帽、長靴を母に付けられて外に飛び出した。遊び相手はいつも姉や妹だった。みんなで雪を投げあって、雪だるまを作って、風邪を心配する母に止められるまで遊んだ。そうして手も足も真っ赤にして入るお風呂は、お湯が異様に熱く感じられた。
中学生のうちもまだ、雪の降った朝や昼は友達と遊んでいた記憶がある。グラウンドは整備の面から立入り禁止だったから、中庭の端に寄せられた雪を投げあった。この年にもなって、と制服が濡れたまま授業を受ける私たちに先生は言った。高校生にもなると、窓から外を眺めて、雪で遊ぶとか元気だよねと言う側になった。
いつからか、雪が降ると知った時、積もった雪を見た時、考えることがすっかり変わってしまった。電車が遅延するな、急いで歩けないな、傘持ってかなきゃかな、靴どれにしようかな、靴下濡れたらイヤだな。そんなことばっかり考えるようになった。
いつの間にか、楽しみだったものが憂鬱になる原因になっていた。いつからだろう。雪は、ずっと雪のままなのに。
年をとるって、大人になるって、こんなことだっけ。と、部屋から外を見て思ったのでした。
KIKI
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