自治体DXは進展するのか?ゆるっと考察
デジタル庁の難航(?)は、想像に難くない状況かと思いますが、自治体のDXに関しても簡単に進むイメージは無く、DX人材の観点では充足しているとは思えません。一方で組織の大きさという点では国家レベルと比較するとコンパクトなので、トップ次第でスピード感を持った変革も可能なのでは?と想像したりします。
昨年末の調査によると、8割の自治体がDXに未着手とのことですが、横浜・静岡・前橋など一部の自治体では具体的な動きも見られています。
横浜市: DXに「デザイン思考」
22年度からデジタル統括本部の人数を4倍の100人超に増員
新たに「デジタル・デザイン室」を設置
22年度に32億円のデジタル関連予算を計上
静岡市: 民間人材がDXけん引
袋井市では即戦力となる民間IT人材が常駐
焼津市はNTT西日本から2人招きプロセスを改善
藤枝市はソフトバンクから人材を招きデジタル統括監に任用
前橋市: デジタル化推進団体の推進
前橋市などが設立するデジタル化推進団体に24市区町が参画
同市が開発するデジタル個人認証を活用し医療、行政、交通などの新サービス実現を目指す
PFI(民間資金を活用した社会資本整備)の導入や政府交付金を活用
自治体DXの施策と進め方
自治体DXとして何をすればよいのか?
という点においては、海外事例などの情報は十分存在しており、総務省からも「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」と称して、自治体が重点的に取り組むべき施策が具体化されています。
またそれ以外に、自治体が着実にDXに取り組めるよう、「自治体DX推進手順書」まで用意されています。
計画と手順があればDXが進むのか?
計画と手順に加え予算があれば、あとは実行するだけとも思えるのですが、「現状」は各自治体によって異なるので、個別の課題設定が必要になるでしょう。
自治体内で、すでにデジタル化が進んでいる領域はあるか?
自治体の強みが存在するか?
地域を代表する企業、大学、病院等が存在するか?
このような問いを設定することで、例えば以下のような内部環境分析ができるのと考えます。
1.すでにデジタル化が進んでいる領域はあるか?
例えば、スマホを利用したキャッシュレス決済の利用比率が高いのであれば、スマホを活用した施策に初期投資を集中させる。
2.自治体の強みが存在するか?
例えば、プロ野球球団やJリーグのチームの本拠地であれば、自治体活動の認知拡大施策や提携イベントを開催する。
3.地域を代表する企業、大学、病院等が存在するか?
例えば、日本を代表する自動車メーカーの本社があれば、その会社のDX関連の取り組みを強化してもらい、その結果や効果をPRとして展開し、近隣の企業のデジタル化、DXに対する意識を高めると共に、官民連携でDXを進展させていく。
これらの環境分析の結果、優先的に着手する領域、リソースの配分等、いわゆる「戦略」が立案できます。
立案した戦略に基づき、計画をブラッシュアップしていくと、必要なリソース(予算・人材)がクリアになります。
いよいよここから実行なのですが、いくらブラッシュアップした計画であっても、外部環境は目まぐるしく変化していくわけで、実行しながら計画を見直していくアプローチが必要です。
また、計画段階では静かにしていた、"変えたくない勢"が、実行段階で反旗を翻したり、やるフリだけして何もしない等の問題も出てきますので、事前に対策を打っておくか、できるだけスピーディに阻害要因を排除しなければなりません。
改めてDXに必要な人材を定義
ここまでの整理を元に、必要人材(スキル)を以下のように設定します。
リサーチ、環境分析
戦略策定、xTechデザイン
プロジェクト計画、アジャイルマネジメント
交渉デザイン及び交渉
強力な実行推進
スピーディなリスク管理、問題解決
このような人材を集めれば、フラットな組織の形態で健全な議論をしながら、コトが上手く進んでいく…ような組織では無いと思うので、これらのプロセスを最速で動かせるトップ、リーダーシップが必要です。
ここまで書いたことは、デジタル庁でも企業でも同様で、単純にやるべきことを計画書としてまとめて、やり方を手順書として書き起こしただけでは到底うまくいきません。まずはデジタル庁が手本となるか、有能なトップを擁する自治体が成功事例を示すところから進んでいくことが望ましいと考えます。
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