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「やりたい!」という気持ちが本当なら小さくても、始めてみよう。

もうすぐ夏が終わる。

男子高校生が青春をかけてシンクロに情熱を注ぐドラマ『ウォーターボーイズ』を動画配信サービスで見ながら、物思いにふけっていた。

主人公の新藤勘九郎は、人生初&高校最後のシンクロ公演の実現に向けて奮闘するが、次々と困難が降りかかってくる。

仲間集めは捗らないわ、家族や先生に反対されるわ、プールが使えなくなるわ、書き足りないが本当に散々なのである。

地味で、口下手で、泳ぎも不得手の新藤。だが、仲間を信じる優しさと困難に立ち向かう彼の姿に、周りがどんどん引き込まれ応援の輪が広がっていく。

一人だったらできないことも、仲間と一緒だから頑張れる。

きっとこれを読んでいるあなたにも、「忘れられない仲間との物語」があるのではないだろうか。

1ヶ月ぶり、約80名との再会

コピーライター・阿部広太郎さん主催の「企画でメシを食っていく2021」(企画メシ2021)の第3回が始まったのは、お盆真っただ中の8月14日。

第2回は7月17日なので、約1か月ぶりの再会。
と言っても、オンラインで画面越しに。

企画生(この講座で学ぶ人たちのこと)が画面上に続々と現れると、「久しぶりですね!」「そちらの天候は大丈夫ですか?」などと声をかけたくなってしまう。赤の他人とはまた違う、不思議な関係性だ。

今回の課題は「チームの企画」。

81名の企画生が4~5名に振り分けられチームとなり、「年内に自分たちが本当にやってみたい企画を1つ考えて企画書にまとめる」

出会って1ヶ月も経たない人同士で企画を考えて、20日後には企画書を提出しなければならない。

「楽しかったけど、大変だったよなあ。懐かしいなあ。」

私きゃわのは、今回聴講生(講座卒業後に現役企画生の伴走をする有志)となり、「チームの企画」を伝えるレポートライターに手を挙げた。この課題に向き合うのは1年ぶり2回目となる。

企画会議という名の「企画」

レポートの中で「企画が誕生する瞬間や軌跡が伝えられないだろうか」と考えていた私は、「課題提出前の企画会議を覗かせてもらう企画」を試みることにした。

締切10日前の急な呼びかけにもかかわらず、4つのチームに声をかけてもらった。

「どのチームにも所属していない私だからできることはなんだろう?」
そんな思いから実施した今回の企画。

さあ、あなたも、一緒に覗いてみよう!

「おじゃまします~!きゃわのです、初めまして!」
「わ~きゃわのさん、初めまして!よろしくお願いします!」
「こちらこそ!本日は、チームの企画会議を覗かせていただきます!きゃわのは発言しません。皆さんが話しているところを1時間ほど眺めさせていただきますね。お気になさらず進めてください。(笑)」

ニッチを極める。どこまでも狭き道を突き進む『地球の企画』(チーム3)

Kさん「自販機の下の物を取るのは、チリが良さそうだよね。」
Yさん「チリは細長いし結構万能!」
Tさん「私あんまり地理が得意じゃないから、どこにあるかどんな形かパッと思い浮かばない。(笑)」

細かすぎて何の話をしているのか分からないが、メンバー同士がとても楽しそう。だが、盛り上がりすぎても、軸がぶれない。なぜなら、話し合った内容を画面共有し、まとめながら進めているからだ。過去の話し合いも同じデータにまとめているようで、振り返りもすぐにできる。こんなに細かいところを詰めていけるのは、その積み重ねの賜物だと思った。「日本や世界の地理を楽しく覚える企画」を考え中とのこと。今後どのような広がりがあるか楽しみだ。

アイディアは出したもん勝ち。即席企画出し会議から生まれた『企画のタネで呑んでいく』(チーム8)

Jさん「ちなみに今、この中で個人的にやってみたい企画がある人いる?」
他4人「。。。」
Jさん「じゃあ、僕がやりたいことを話してもいい?」

あるメンバーの発言で空気がガラッと変わった。それまでは、各々が企画のタネを持ち寄り話し合いを進めていたが、煮詰まっている様子だった。だがその話から、「分かる!」「面白い!」そんな明るい言葉が飛び交うようになった。「せっかくだから、やってみたいことは口に出していきたいし、実践して検証したい。本当は、他の企画生も口にする機会がないだけでは?」企画会議中の気づきや空気感を味方につける、感覚を大事にするチームだと思った。

「推しの」可能性は無限大。コロナ禍で「推し」の大切さを知った『偏愛ラボ(仮)』(チーム14)

F さん「じゃあ、それぞれがまとめてきた推しの話をしましょうか!」
Oさん「まだまとめ途中なんですが、まずは散歩の話を。」
Nさん「楽しそうですね!」

自分たちの「推し」について語る会が始まった。ある人は音楽と散歩、ある人はコーヒーとのフードペアリング、ある人はカレー。お互いの話を聞き合い、魅力を発見し合う。以前のような楽しみ方はできない状況だが、今だからできる楽しみ方を模索したり、提案したり。「推し」は心の栄養。不要不急なんかじゃない。自分の知らない世界なのに、聞いていて飽きないし、むしろ興味が沸いた。「推し」がない人にも趣味を持つきっかけになったり、「推し」×「推し」の化学反応を楽しめそうだ。

「自分らしさ」とは何?自分の中にある魅力を見つけよう『あるものみっけ』(チーム17)

Mさん「皆さんは「自分らしさ」に悩んだ経験がありますか?」
T さん「はい、僕はあります。」
Hさん「私も職業柄よく考えます。」

「自分らしさ」をキーワードに、自分の経験したエピソードをお互いに聞き合っていた。一人一人の考えを丁寧に確認しているのが印象的。話すうちに、そもそも「自分らしさ」という単語でいいのかという疑問が、彼らの中に浮かんだようだ。「自分らしくないことをやっても自分になるよね。」ある人の言葉が光のように思えた。全員が少しずつ歩み寄りながら核心に迫る。ゆっくりでも、確実に。そんな時間を大切にするチームだと感じた。

「覗かせていただきありがとうございました!どんな企画になるか楽しみにしています!」

私が覗いたのは、各チームたった1時間ずつ。
彼らが課題に向き合う時間に比べたら、ほんの少しの時間だったかもしれないが、真剣に向き合おうとしている姿勢は伝わってきた。

各会議に共通して感じたこと。
それは、この企画会議自体が企画になり得るということだ。

自分たちの興味がある話題を持ち寄ったり、実践してみたりする。まだ言葉やかたちになっていないフワフワした状態が一番楽しいのではないだろうか。

「大きなプロジェクトだけが企画ではない。週末のご飯や休みの日の予定だって企画になる。「企画」のハードルを高くしすぎないでほしい。」

講座中に言われてホッとした。沢山の人や大きなお金を動かすことだけが企画じゃないんだ。

今回私が実施したのは小さな企画だったけど、楽しかったし、やってみて良かった!

自分の初めての仲間は「自分」

阿部さんが「チームを組むときに大切にしている3つのこと」を伝えてくれた。

①まず、自分と組む

自分と組むとは、自分の意見を真剣に考えるということ。
「誰かと組むときに相手任せにしてはいけない」、「『手ぶら』で会議に参加するのは自信過剰すぎる」という言葉が刺さる。

真逆な自分とコンビを組む。
ポジティブな自分とネガティブな自分。
無責任な自分と責任感のある自分。
自分の意見を真逆な自分に通してみる。
ときには、第三者に意見を聞き俯瞰的に自分を見つめる。

一人で考えるから、二人(チーム)が始まるのだ。

②お互いを引き出し合う

相手へのリスペクトを忘れないこと。

「年齢も経歴も関係なく相手から何を学べるか」という姿勢が未来を創る。そして、お互いの考えを聞き合うためには、自分の意見が必要である。

競い合う気持ちが大切なときもあるが、「いいね!」と思ったら嫉妬せずに伝えよう。

競争し、共創しよう。

③相手は「敵」ではない

クライアントや仲間と組むときに、ヒートアップしたり否定されたりするかもしれない。だけど、向かっている方向や目標はきっと同じ。本当は味方のはずだ。立場や考え方が違ったとしても「建設的」に向き合うべきである。

自分の意見を折ることは簡単だが、モヤモヤしていることがあれば伝える努力をすること。
配慮はするけど、遠慮はしない。

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当たり前じゃないかと思うこともあるかもしれないが、これを実際に行動に移すことは結構難しい。現に私はできていなかったと思う。

相手へのリスペクトという部分を履き違えて、独創的な考え方ができない自分に引け目を感じることが多かった。自分の意見を、相手に真剣に伝える準備ができていなかったんだと、今なら分かる。

「チームの企画」のメンバー構成は、ランダムではあるが「年齢、住まい、職業がいいかたちで混ざるように」考えられたそうだ。

たまたま「企画メシ2021」に集まり、たまたま同じチームになっただけ、かもしれない。でも、こんな機会があったからこそ、話せたことや考えたことがあったはずである。

「リアルな場で会うことは難しい状況だが、もっと企画生同士が遠慮せずにつながってほしい」という阿部さんの願いも込められていた今回の課題。

「どんなチームであっても、負担はかかる。だけど、この人のためだったら頑張りたいと思えたり、みんなで作ろうとするものが魅力的であったり、負担を充実に変えられるのがいいチームだと思う。」

一人ひとりの負担を、一人ひとりの充実に。

今回の課題を通じて、様々な出会いがあったと思う。
それは、人も、モノも、体験も。

そして、新しい自分にも、出会えたのではないだろうか。

ゴールとスタートを繰り返す

この「チームの企画」では、課題を提出する際に条件があった。

実際にやろうと全員の心で納得できた場合は「決定」
まだ未定の場合は「未定」を表紙に書いてください
(未定の場合はその理由を添えて)

「決定」にするか「未定」にするか、悩んだチームが多かったと思う。企画書を作ることと、実行することは、全くの別物である。

「決定は、白紙にしてもらってもいい。」

阿部さんからの言葉に、思考停止した人もいるかもしれない。

「もちろん、企画を白紙に戻すという意味ではなく。もっと「決定」をフラットに考えてほしい。企画書を完成させた時点で満足してしまう「企画書マジック」という現象も起こる。だけど、それだけで終わらせたくないと思えたら実行に移してほしい。「やりたい!」という気持ちが本当なら小さくても、始めてみよう。やってみて気づくことは沢山あるから。企画書通りにやろうとしすぎず、変化したっていい。」

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全18チームの想いの乗った企画書に、ひとつひとつ丁寧にコメントをする阿部さん。

「他の人がやってみようと思える動機付けが必要だなと思う。」
「あとはもうやるだけですね。」
「企画書内で使っている表現は、これでよかったのかな?」
「実際にやってみた方がイメージできたかもしれませんね。」
「前のめりに楽しんでやってくれているのが伝わってきました。」
「企画書のはじめに、想いを書いてくれているのがいいですね。」
「僕も書籍のイベントをしようとしているので一緒にできたりするかな?」
「ここから色んな発展の仕方があるよね。」
「本文の内容とタイトルをもっと考えられたんじゃないかな?」
「言葉のチョイスが面白いと思いつつ、ちょっとハードルが高いかも?」
「過去の先輩たちにも話を聞いてみたりしましたか?」
「一人ひとりへの仕掛けがグッと来ました。」
「企画メンバーの顔と企画が一致することをやろうしているのがいい。」
「知らないことを知ることが面白いと思えるような書き方がいいですね。」
「人を巻き込むときのモチベーション設計が鍵になると思います。」
「続けることが大変だと思うから、まずは自分たちがやってみよう。」
「コンセプトがしっかりしているので、手ごたえを確かめよう。」
「企画書での伝え方が面白い!読み手の気持ちを先回りしていますね。」

企画の中身云々というよりも、想いや姿勢、伝え方に着目してフィードバックしているのが印象的だった。

悔しい思いをした人もいるかもしれないが、勇気をもらった人も多いのではないだろうか。

「まずはやってみよう。」

阿部さんは、そうやって背中を押してくれる。見守ってくれている。

そうして早速、この課題を通して、走り出した企画があるので紹介したい。

もっと企画生を知り、つながるための『MOTTO RADIO』(チーム5)
企画生による企画生のためのラジオ。NO.0が8月14日の講座終了後にスタート。誰でも、いつでも聞ける。


現役占い師があなたの悩みを聞くラジオ『もしもし前世?』(チーム2)
個性が大爆発。こちらは現役占い師によるお悩み相談ラジオ。テーマソングは一度聞いたら忘れられない。

「締切は全ての救い。ゴールテープがあるからこそ頑張れる。最後まで粘る限界があることで、もっと良くすることはできないかと考えることができる。」

「チームの企画」のゴールテープを切った。
だがそれは、次の「対話の企画」へのスタートの合図である。

後悔しないように最後まで走り切ってほしい。

でも、頑張れないときがあることも分かる。
昨年の私がそうだったから。

悩む時期が多かったからこそ、同じような気持ちの企画生がいるのであれば、私も背中を押せたらと思っている。

そして、企画メシに興味のある方や過去の企画生には、この企画メシ2021の企画生が残したnoteのマガジンに立ち寄って、彼らの葛藤や喜びを是非覗いてみてほしい。

2021年。

思い通りの夏ではなかったかもしれない。

でも、未来を考えることを諦めたくはない。

どんな状況であっても、仲間とだったら、きっと進める。


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