
Photo by
landyny
無題
街はしとどに振り続ける雨の中で、煌々と輝きを放っていた。
行き交う人々は、ありきたりな顔をしていて、ありきたりな歩幅で歩いている。
車のヘッドライトが水滴に反射して、雲で隠れた星空を蘇らせる。
ありきたりな街。
主義主張のない、無題な街だった。
滑稽に騒ぐ若者。
その横を通り過ぎて、横断歩道を渡る。
ビルに掲示された大型の液晶は、記録的な大雨を報じている。
飲屋街を通り過ぎて、1人で、何もない顔をして歩く。
目的も何もないまま、路地裏のドアを開け、
私は「そこ」に入った。
思い出の場所だった。
何かあったら、何もなくても行く場所。
自分のアイコンのような場所だった。
何度通うのだろう。
最近多くなりすぎている気がする。
何度通えるのだろう。
自分自身の限りある時間を、消費したくてここに来る。
期限付きの場所のような気がしてもの寂しいと思った。
どこまでも形容し難い感情だった。
夜雨と共に、革命からの自由を象徴するそれを飲む。
皮肉にも、迫り来る期限が自由を招いているような気もしていた。
大きな文字で、地名を表すその瓶を手に取り眺める。
数多く飛び交った言葉を咀嚼する。
静かに流れる好きな曲。
そこは、「ムダイ」の場所。