クラスターを数学を使って考える

12月14日に菅総理大臣が8人で会食したのが話題になった。マスクを外した会話がどれだけあったのか、距離がどれだけ離れていたのかどうかは私は知らない。その週末に、アメリカのペンス副大統領・ネタニヤフ首相がファイザー製の新型コロナワクチンの接種を一般公開した(その後、バイデン次期大統領も接種を公開した)。それと比べたら「リーダーが率先して行動すべきなのに…」といわれても仕方がないだろう。

「大人数での会食で感染リスクが高まる」ということはなんとなく想像できるかもしれない。でも、それはなぜなのか?と考えた人はあまりいないと思う。「論証はできないのだろうか? もしかして数学を使って考えられるかもしれない」と考え、以下のように考えてみた。数Aの確率の知識があれば理解できるはずなので、一緒に考えてみよう(もしかすると中2の確率で十分かもしれない)。


仮定

4人と8人の会食をそれぞれ考える(自分を含む4人・8人、密閉空間)

会食の会場にいたメンバーのうち、1人でもウイルスを持っている場合、全員に感染させると仮定する(=クラスターの発生)
(実際はウイルス保持者5人のうち1人程度しか拡散しないと考えられているが、モデルや計算を簡単にするためにウイルスを持っている人が感染してしまうことにする)

ウイルスを持っている人を2%と多めに仮定する。
(日本の人口は2020年7月1日時点で1億2583万6000人、2020年12月22日までの国内の累計感染者数20万1050人、無自覚で検査に行かない人を含めて感染者が10倍いると仮定すると、ざっと200万人÷1億2500万人=0.016=1.6% となる。累計(今まで)の感染者ということは、「今現時点でウイルスを持っている人」とは限らない中での1.6%なので、2%の仮定は多めと言えるはずです)

余事象を使って考える

以下、累乗の計算で出てきた数字に関して、小数第4位を四捨五入して小数第3位までで表します。

ウイルスを持っていない確率が98%なので、4人全ての人がウイルスを持っていない場合の確率は、

(0.98)^4≒0.922(0.98の4乗)

それ以外の場合、つまり1人以上ウイルスを持っている場合の確率は、

1-0.922=0.078=7.8%

となる。よって、4人の会食に参加した場合7.8%の確率で自分がウイルス保有者になる。

画像2

・同様に8人の場合で行う。

8人全員ウイルスを持っていない場合の確率は、

(0.98)^8≒0.851

つまり1人以上ウイルスを持っている場合の確率は、

1-0.851=0.149=14.9%

となる。よって、8人の会食に参加した場合14.9%の確率で「自分がウイルス保有者」になる。

画像2

先の仮定において、8人での会食は4人での会食と比べて、
(14.9÷7.8≒)1.911倍と約2倍リスクが高まってしまう

もしはしごをしたら…

8人で会食を何度も繰り返した場合を考えてみよう。別の店に行くと、他のお客さんや店員さんに出会います。4回繰り返し、それぞれの過程において8人接触者が追加されることを考える。
(1回目に会食した8人が、2回目の会食を8人いる密閉場所で、3回目の会食を8人いる密閉場所で、4回目の会食を8人いる密閉場所で行うする。すなわち、会食の過程で自分を含めて32人と空間を共にしたとする。)

1回目に会食した人全員がウイルスを持っていない確率は0.851(85.1%)。2回目の会場にもともといた8人全員がウイルスを持っていない確率は0.851。3回目の会場、4回目の会場も全員がウイルスを持っていない確率は0.851となる。よって、32人全員がウイルスを持っていない確率は、

(0.98)^8≒0.524

となる。つまり、自分がウイルス保有者になる確率は、

1-0.524=0.476=47.6%


一般的には…

ウイルスを持っている人がp%、その過程でn人と出会ったとする。

n人全員ウイルスを持っていない場合の確率は、

(1-p)^n

つまり1人でもウイルスを持っている場合は、

1-(1-p)^n

となる。よって、n人と出会った場合、1-(1-p)^nの確率で自分がウイルス保有者となってしまう。


密閉空間をはしごした場合は以下の通り

画像3

補足

この考え方は、「クラスの中に同じ誕生日の人がいる確率」の考え方をもとに考えました。専門家などのもっと詳しい人に意見を伺ったりしたことがないので、ご意見がありましたらコメントいただきたいです。

まとめ

感染症対策をすれば可能性を減らせるといわれているし、ウイルス保持者のうち2割程度の人が(多くの数に)感染させているといわれている。新型コロナウイルスの実態や実際何人の感染者が日本にいるのかがわからないが、(おそらく)感染者を高く見積もっている。簡単にモデルをつくったので、より現実的な確率を求めるためにはもっとさまざまなことを考慮しないといけない。

けれども、多くの人数といると可能性が高くなるということを高校数学レベルで考えることができる。高校数学で考える経験をすれば、そうでない人と比べて、自然と「大人数でいればリスクが高まる」という考えを(計算はしなくても、頭の中で考えが浮かび)受け入れる可能性が高いのではないか、と思った。


参考文献

・総務省統計局(日本の人口、2020年12月22日参照)

・NHK (国内感染者数、2020年12月22日参照)



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