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恨む相手がいなくなっても

僕の父親はいわゆる毒親で。

お前なんか生まれなくてよかった。生まれてしまったから仕方なく育ててやってる

お前は狂ってる。本当なら病院に連れていくべきだがかわいそうだからやめている。

人格否定も毎日だったし、酔っては暴言を吐き、灰皿を投げられたり水をかけられたりした。

殴ってやりたいと思ってた。

高校生のときに母がストレスで一時的な記憶喪失になり、その後にまたストレスで胃がんになり、その後、両親はもめながらなんとか離婚した。母親も今考えると結構自分勝手で、僕も名前を変えてほしかったのだが自分だけ名字を変えた。一応、父親とは別れ母と住んでいた。名前は父親の姓のまま。

結婚した時、やっとチャンスが来て、姓を妻の姓にした。よく「養子?」と聞かれるが、日本では結婚した時にどちらの姓を選んでもかまわない、男女平等の国だ。法律では。

僕は長男だったので父親は姓を変えられて激怒したと妹に聞いた。

ついで、結婚したことを父親に連絡しろと言われた。何もそんな必要はなく、もう他人の気でいたので断ろうとしたが、周りに何度も言われ、しかも戸籍上、どこにいても父親が調べようと思えばいつでもバレることがわかっていたので、仕方なく電話した。

もちろん、電話では大ゲンカになり、罵倒されたり「お前の会社の社長とは何度も会ったことがある、元気か」と嘘を言われたり、何も実のある会話はできなかった。

その後、正直、帰ってきたら父親が家に押しかけているんじゃないかという恐怖もあった。さすがにそれはなかった。しかし妹が何度も、父は今はどうしてるとかなんとか連絡してくるので、忘れることができなかった。

そして、僕も娘ができた。かわいくて仕方ないし、バイトや会社で人の育て方を一生懸命勉強したので、娘には罵倒どころか怒ったこともない。娘に何を言われても肯定し、褒めて、道を指し示して進ませている。娘は中学生になり、思春期、反抗期になったが、それでも夜寝る前に僕の部屋にズカズカ入ってきて我が物顔で椅子に座ったり寝転んだり自由な姿勢になって、あーだ、こーだ、学校であった話や悩みや趣味やオタク話に興じる。少々度が過ぎるほどに仲良しだ。

正直、今はとても幸せだ。

そして、唐突に妹から、父の体調が悪くなったので今後について意思知りたいと連絡がきた。

即答で、全て遺産を放棄するし弁護士を通じて連絡すると答えた。

その返答に妹はかなり不服だったが、前々から決めていた。もう会いたくもない。わざわざ喧嘩しに行っても仕方ない。欲しいものも何もない、むしろ借金でも出てきたら知ったことではない。というか、本当に死にそうなのか?そろそろ僕がどうしてるか探りたかっただけではないか?とまで思った。

その後、父が死んだと連絡があった。

すぐに、手続きをするとだけ答えた。

今は手続きをしている。のだが、本当に死んだのかとまで思っていたが住民票を手に入れたら本当に死亡してた。

その後、何度か思う。どう思うんだろうか。うれしい?ほっとした?実は悲しい?

何もない。ずっと居なくなってほしいと思っていて、ずっと恨んでずっと忘れたかった相手がいなくなっても、恨みも晴れないし、うれしくもないし、何も変わらない。むしろ妹との関係が悪化したので問題が残ったくらいだ。

考える。僕はパワハラでうつ病になったが、はたして、その人がもし死んでもやっぱり何も変わらないのだろう。うつ病が治るわけでもないし。

うつ病の人はだいたいが、誰かに何かされたのだと思うが、だいたいは相手は認めないし、そのまま苦しむだけだと思う。

ものすごく理不尽だと思う。

今、僕は父との離縁の最後の手続きをしているが、もやもやしながらしている。その後、手続きが終わればしばらくしたら、やや忘れるだろうが、ときどき思い出してはもやもやするのだろう。

ちなみに、手続きに弁護士はいらなかった。遺産放棄の意思を書いた書類を家庭裁判所に送るだけでいいとのことで、今それを自分でやっている。

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