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vol.17「勇気を出して、一歩踏みだしてみて」四季活魚の宿 紀伊の松島・大西孝政さん

意外かもしれませんが、実は、僕は刺身が苦手だったんです。

生臭さが苦手で、食べられるようになったのは大学生の頃だったかな。

そんな自分だからこそ、新鮮さや旬には特にこだわっています。

たまに「刺身が苦手」というお客様がいらして「今日初めて食べられました!」というお声をいただくことがあります。

そんな時は「いいものをお出しできたんだな」と思って、嬉しい気持ちになりますね。


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「きほくる | 紀北町魅力ナビ」にお越しいただき、ありがとうございます。

今回の「しごとカード」インタビューは、

紀北町古里(きほくちょう・ふるさと)にある四季活魚の宿・紀伊の松島の代表であり料理人の大西孝政さん(おおにし たかまさ)さん。

大学卒業後、三重県内のレストランに就職。一度転職したのち、30歳で紀北町にUターンし家業(旅館)で料理の腕を振るっている大西さん。

この地域ならではのお魚事情やお料理やおもてなしで大事にしていること等を、楽しく語っていただきました。

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この記事は「しごとカード」に登場していただく“紀北町で働くひと達”に、地域おこし協力隊の豊川がインタビューしていくシリーズです。

あなたは、どんな風に働きたいですか?どんなところで、どんな人たちと働きたいですか?

あなたが、自分に問いかけ、自分の中にある答えと出会っていく。そのきっかけに、この note がなれたら嬉しいです。


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1. 自分の代で終わらせるのはもったいない。



ーーこれまでの経緯を教えて下さい。


大西さん(以下、敬称略) 
僕は1978(昭和53)年、紀北町古里(きほくちょう・ふるさと)生まれです。

海野(かいの)小学校、紀北中学校、三重高校と進み、富山県にある大学に行きました。

大学卒業後は、三重県に戻って津市にあるレストランに就職。その後一度転職し、30歳で紀北町にUターンしました。


ーー大学卒業後に料理の道に?


大西 そうです。


ーーいきなり料理の道に入るのはハードルが高くなかったですか?


大西 大丈夫でしたよ。

僕は子どもの頃から料理するのが好きで、大学時代も自炊して遊びに来た友だちに食べてもらったりしていました。

それに、最初はみんな同じスタートラインですからね。


ーーレストランで働いたのは家業のことも考えて?


大西 少しは考えていたと思います。

当時は家業を継ぐとは思っていなかったけれど、頭の片隅に「仕事を通じて、調理や経営のことを学べたら…」という思いはありました。

でも、レストランで働くうちに「このままでいいのかな…」という気持ちが湧いて、転職したんです。


ーー違うお店に?


大西 いいえ、県内のガス会社に営業職として転職しました。


ーー調理とは全然違う職種ですね。


大西 そうなんです。でも、前職が料理人だったので当時の上司から「営業活動の一つとして料理教室をやってみないか?」と提案されて…


ーーそこでも料理が!


大西 はい。そして、その会社で料理教室が始まって、僕が退職した後も続いているそうです。そこでは3年間働きました。


ーーUターンのきっかけは?


大西 もともと「いつかは地元に帰りたい」という気持ちがあったので、30歳という節目で帰ることを決めました。

「地元には仕事がない」という話を聞くけれど自分には家業がある。

旅館を自分の代で終わらせてしまうのはもったいない
と思ったんです。

あとは、やっぱり料理が好きですしね。


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2. ここに来ないと食べられないもの


ーー1日のスケジュールは?


大西 朝6時に起床、6時半ごろから朝食の支度。

朝食提供後に自分も朝食を食べ、8時過ぎから仕入れに行きます。

仕入れ後は昼食の準備または夕食の仕込みです。夕方になったら夕食調理、提供、片づけをして、1日の仕事が終わるのは夜9~10時です。


ーー朝6時半から夜10時ごろまで!


大西 拘束時間としては長いですが、日中パンパンに仕事をしているわけではありません。

ちょこちょこ休んだり、他のことをして自分のペースを作っています。


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ーーレストラン時代も仕入れは行っていたのですか?


大西 いいえ、家業に携わるようになってから仕入れに行っています。


ーー仕入れはどんな風におこないますか?


大西 僕は直接魚屋さんにいく方法と仲買さんに電話して仕入れる方法、両方でやってます。


ーー仕入れについて勉強したんですか?


大西 魚屋さんがいろいろ教えてくれるんですよ。

あとは、魚屋さんにはいろんなお店の人が集まってくるので、いろいろ話しながら情報交換しています。


ーー魚屋さんが先生なんですね。


大西 魚屋さんは、僕がどんな魚を求めているか知っているんですよ。

僕のこだわりは「天然の旬の魚」

それに加えて、「ここに来ないと食べられないもの」というのも意識しています。

そういうこだわりを魚屋さんはわかっているので「今日はこんな珍しいのが入ったよ!」とか「この魚、市場で一匹しか上がってなかったよ!」と薦めてくれたりします。

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ーーこの辺りでは「マンボウ」が有名ですが、ほかに珍しいお魚は?


大西 最近、好評なのが「アカヤガラ」かな。お刺身でお出ししています。


ーー初めて聞く名前です。


大西 アカヤガラは、高級魚で大きくて細長い形です。

流通させにくくて地元消費がメインで一般市場に出回りにくいんですよ。

なので、お客さんにお出しすると「初めて見た!」と驚いてもらえて人気です。


ーこの地域ならではのお魚なんですね。


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写真:ユメカサゴ


大西 この辺りは、底引き網漁があるので「深海魚」も上がります。

メヒカリとか、ガスエビとか。お客さんに一番喜ばれるのが「ユメカサゴ」です。

ユメカサゴは、深海にいる「ガシ(この地域の「カサゴ」の呼び方)」ですね。


ーー深海魚!


大西 深海魚は冷たい海にいるので、基本的に脂がのっています。身も柔らかくて、煮つけにすると美味しいですね。

ユメカサゴの煮つけは、ノドグロより美味しいと僕は思います。


ーーそれは食べてみたい!


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3. 初めて食べられました!


ーーこの仕事の喜びは?


大西 やっぱり、お客さんが「美味しい!」と言ってくれることですね。

意外かもしれませんが、実は、僕は刺身が苦手だったんですよ。

生臭さが苦手で、食べられるようになったのは大学生の頃だったかな。

そんな自分だからこそ、新鮮さや旬には特にこだわっています。

たまに「刺身が苦手」というお客様がいらっしゃるんですが、「今日初めて食べられました!」というお声をいただくことがあって…

そんな時は「いいものをお出しできたんだな」と思って、嬉しい気持ちになりますね。


ーーそれは嬉しいですね!


大西 他には、お客さんがリピートして下さったり、お友達にうちのことを紹介して下さるのも嬉しいです。

「美味しい」と言っていただけることは、もちろん嬉しい。

でも、美味しいと感じる度合いは人それぞれで目には見えないものです。

それが、お客さんがリピートして下さったりお友達に紹介して下さったりすると「本当に美味しいと思ってくれたんだな」と分かるので嬉しいですね!


仕事で大事にしていること



ーー仕事で大切にしていることは?


大西 2つあります。

1つは、先ほどもお話ししましたが、魚にこだわっていることです。

もう1つはお客さんとこの地域を繋げることです。

これは宿だからこそ出来ることだと、僕は思っているんです。

というのも、料理屋さんはお客さんがお店にいる時間は長くても2、3時間。

一方、旅館の場合はお客さんは泊まりで滞在し、僕が接する機会が増える。

その機会の中で「お客さんにこの地域のことを色々と知ってもらうこと」を大切にしています。


ーーお客さんとどんな話をされるんですか?


大西 例えば、家族連れのお客さんには、銚子川などお子さんも楽しめるスポットを紹介します。

ほかには、僕が体験して良かったもの紹介したり…

今春に僕が道瀬(どうぜ)のカヤックツアーを体験してすごく良かったので、最近お客さんに紹介しています。

そうやって、お客さんとこの地域や地域の事業者さんを繋げることを大切にしています。


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4. 自分を成長させてくれるもの。


ーー仕事のモチベーションになっているものは?


大西 「お客さんの喜ぶ顔が見たい」という気持ちです。


ーーそのために工夫していることはありますか?


大西 小さい宿だから出来るんだと思いますが、お客さんに合わせてお料理やスケジュールを考えています。


ーーお客さんに合わせて、と言うと?


大西 ご予約の電話で話した声の感じとか、年齢層・家族構成などで色々と想像するんです。

たとえば、家族連れだからボリュームがあるお料理にしようとか、家族連れで泳いでから宿到着だから夕食は早めで、とか。


ーー細やかなおもてなしですね。


大西 お客さんのことを色々と想像しながらお料理やおもてなしを考えて、それがお客さんのニーズとビタッとはまると嬉しいんですよね。


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ーー仕事をしていて嬉しかったことは?


大西 春に熊野古道のツアーのお客さんがいらして「ここの料理が一番美味しかった」と言って下さいました。

その方々は全国各地を旅行していて舌が肥えた方々なので、そう言っていただいて本当に嬉しかったです。


ーーそれは嬉しいですね。


大西 後日談もあるんです。

うちに泊まられた後、旅行会社の方から「今後もツアーの宿はここにして、ここを起点にして歩けるプランを作りたい」というお話をいただきました。


ーーそれはすごい展開ですね!


大西 本当に嬉しくて、今、いろいろとリサーチして準備を進めているところです。


ーー今後の目標は?


大西 僕は何でも自分でやるのが好きなんです。

なるべく自家製のものをお出ししたいという思いがあります。

その第一歩として干物を作りはじめました。ゆくゆくは販売も出来たらいいなと思っています。


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ーーあなたにとって、仕事とは?


大西 まずは、生活の糧ですね。

そして、自分を成長させてくれるもの。

自分でいろいろ経験して身に付けることができるのが仕事かなって思います。


ーー紀北町で好きな場所は?


大西 やっぱり銚子川(ちょうしがわ)の魚飛渓(うおとびけい)かな。

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大西 他には、地元の古里海岸も好きだし、馬越(まごせ)峠とか天狗倉山(てんぐらさん)も好きですね。


ーー紀北町に帰ってきてよかったですか?


大西 良かったです。やっぱり落ち着きますね。

昔から知ってる人がいるし、友だちもいる。ひととの繋がりが落ち着くし、居心地がいいんだと思います。

自然が身近にあるので、ちょっとした空き時間で泳ぎに行けたり魚を獲ったりできることかな。

今、うなぎ捕りにはまっています。子どもと一緒にそういう体験が出来るのもこの町の良さだと思います。


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5.勇気を出して一歩踏み出してみてほしい。



ーー好きな言葉は?


大西 「頼まれごとは試されごと」かな。

レストラン時代の先輩に教えてもらった言葉です。

お客さんと接していると色々と頼まれることがあります。

その時は「できる・できない」で答えるのではなく、出来ないとしても代替案を伝えるようにしています。

頼まれごとが仕事に繋がることもありますしね。


ーー二十歳の頃の自分に声をかけてあげられるとしたら?


大西 大学生のときかぁ。

「迷うなら、とりあえずやってみた方がいいよ。」かな。

自分が若い頃に迷って結局やらなかったことがあって、今思うと「やっておけばよかったな」と思うんです。

やってみて(結果が)良くなるかどうかは分からないけど、それでも「若いうちなら何でもやってみた方がいい」って言ってあげたいです。


ーー若い世代のひとたちにメッセージをどうぞ。


大西 興味をもったり、やりたいと思ったことはどんどんやったらいいと思います。

二の足を踏むこともあるかもしれないけれど、そこは勇気を出して一歩踏み出してみてほしい。

その時はその価値が分からないかもしれないけれど、時間が経ったときに自分の糧になっていることもある。

だから、なんでもやってみたらいいと思うんです、若いうちは。


ーー若い頃の体験は時が経つと自分の血肉になっていることがわかりますね。お魚事情も勉強になりました。今日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

【紀伊の松島・大西孝政さんからのメッセージ】
・最初はみんな同じスタートライン。
・頼まれごとは試されごと。
・迷うなら、とりあえずやってみた方がいいよ。
・勇気を出して一歩踏み出してみてほしい。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

今回の 四季活魚の宿 紀伊の松島・大西孝政さんのお話はいかがでしたか?

あなたの中にある仕事に対する思い大切にしていることを感じるきっかけになったら嬉しいです。

(取材先情報)四季活魚の宿 紀伊の松島
https://kiinomatsushima.com/
〒519-3209 三重県北牟婁郡紀北町古里1057
TEL:0597-49-3048

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