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その後の菜穂子① <#あなぴり 創作  全4回>

こんにちは、ぱんだごろごろです。
今日は、以前書いた創作(ピリカさんが書いた短編小説の前半部分に、自分で作った後半部分をつなげる試み)の続きです。

今年の初め、ピリカさんから、こんなメッセージを頂きました。

昨年末のピリカさんの企画、「#あなたとぴりか」に応募した私の作品への、講評の一部です。

メールで、「ステキに変身するため」の指示が届き、菜穂子が変身する予感がする本作。
あー、続きが気になる!

できることなら、この続きを読んでみたいです。ぱんださん、書いてくれないかな(願い)

https://note.com/saori0717/n/n84378bc16881
「あなたとぴりか≪緑≫菜穂子の大活躍」より引用
(太字は筆者)

ピリカさんから(願い)を頂いてしまったら、お応えするしかないではありませんか。

と言うことで、ピリカさんの思し召しに叶うものができるか、不安はあってもない振りをして(笑)、書かせて頂きますね!

ピリカさんの前半部分と、ぱんだごろごろの後半部分は、こちら
▼▼▼

<承前>

「所長」
【ビューティー・ファッション部門】の担当者である前田さやかが、部屋の一番奥の席に座っている、体格の良い中年女性に声を掛けた。
「はい、前田さん、何でしょう?」
「佐倉菜穂子さんのことなんですが」
「菜穂子さん・・・。ああ、スーパーにお勤めの方ね」
「そうです、その菜穂子さんですが、」
パソコンの画面を見ながら報告する。
「そろそろ①から⑤まで、コンプリートしそうです」
「まあ、早いわね。そうそう、担当はあなただったわね。菜穂子さん、どんな風になったのかしら。途中経過でいいから、見られる?」
「さっき、所長のPCに、まとめたものを送っておきました」
「ありがとう」

所長の進藤晶子は、自分のデスクのPCを立ち上げ、クライアント別に振り分けられているデータの中から、
「佐倉菜穂子」
のページを取り出した。

彼女は28歳の独身女性、実家住まいで、県立高校から、同じ県内の短大の英文学科に進学し、卒業後は、大手総合スーパーマーケットに勤務している。
彼女のモヤモヤは――。

「自分の将来像が見えないことから来る焦りと倦怠感、ね」

彼女が初めて送ってきたメールを読み直してみる。
そこには、毎日同じ仕事を繰り返す、生活の単調さに対する憤りが書かれていた。

見飽きたスーパーの店内、
着飽きた緑色のエプロン、
お客様のクレームにひたすら頭を下げ続け、
取引先に、豆腐と蒟蒻の発注ファックスを送り続ける日々。

バイトさんが急な病欠で休めば、代わりにレジに入って、後ろの客を待たせてでも、執念深く、財布の中の小銭をさがすおばさん(お客様)に、にこやかに対応しなければならない。

一体いつまでこんな生活が続くのだろう。

ざっと、こういう内容だ。

だが、そうは言っても、彼女のメールからは、はっきりした将来の望みや転職願望は読み取れなかった。

今の生活が嫌。
けれど、こうなりたいという、明確なビジョンはない。

「だったら、将来のことは置いておいて、まずは今の自分を変えなくちゃ、ね」


そう呟くと、晶子はさやかから送られてきた報告書を開いた。

どうやら、菜穂子は、事あるごとにさやかに指示を仰いでいたらしい。
1メール往復100円という気安さもあって、買う化粧品や洋服で迷うと、すぐにメールで質問をして来ていた。

さやかの診断によれば、菜穂子のパーソナルカラーはアーリー・スプリングで、骨格はストレートタイプ。
明るくて可愛らしい、親しみやすさのある女性。

菜穗子が、試着室で自撮りした写真も添付されていた。
『どっちのワンピースが似合っていると思いますか?』
という質問が付けられている。

さやかは、菜穂子のどんな小さな質問にも、きちんと答えていた。

「あなたには、こちらの色の方が似合います。なぜなら、こちらは、あなたの顔色を良く見せる色だからです」

「あなたには、こちらのブラウスの方が似合います。
なぜなら、こちらのデザインの方が、あなたの胸元をすっきり見せ、その結果、着やせして見えるからです」

化粧品からヘアケア製品、通勤バッグからポーチに至るまで、菜穂子はそっくり新しいものに取り替えていた。

さやかが、バッグや小物類は、同じブランドで揃えた方が効率的だとアドバイスしたため、休日にアウトレットまで行って、買い揃えたようだ。

さすがに、下着類の自撮り写真はなかったので、晶子はほっとした。

美容院に関しては、さやかは、短大時代の友達の中で、自分と似たタイプで、かつ一番美人だと思う人に、行きつけの美容室を教えてもらうように、と菜穂子に伝えていた。
その際、指名する美容師が重ならないように、という注意もしてあった。

「うんうん、さすがだわ、前田さん」

菜穂子が送ってきた、ヘアカット後の写真は、先ほどの、ワンピースの自撮り写真の時の髪型と比べて、ぐっとあか抜けている。

いかにも重たげなヘアスタイルだった以前と比べて、軽やかでシャープな印象になっている。
それでいて、丸顔の、親しみやすい可愛らしさは損なわず、むしろ、髪型がシャープになった分、垂れ目のかわいさが強調されていた。

「まあ、これは良いわね」

さやかが送ってきた報告の、最後のページには、
「今日、駅ビルの中にある、エステサロンに行って来ます」
という、菜穂子からのメールが転載されていた。

「なるほど、本当にやり切ったわね、菜穂子さん。ここからまた、山あり谷ありよ。楽しみだわ」

晶子はにやりと笑った。

(続く)

*①から⑤のリスト*

①百貨店の化粧品売り場に行き、メイク用品を買い揃えてください。
②必ず試着をした上で、以下の衣裳を買い揃えてください。
ブラウス、セーター、スカート、パンツ、ワンピース、ジャケット、コート、タイツ、靴(ブーツかショートブーツ、踵の低いパンプス)。
色、形、枚数はお任せしますが、それぞれが組み合わせの利くものにしてください。
③百貨店か下着の専門店へ行き、サイズを測ってもらった上で、一式新しいものを買い揃えてください。
④いつもとは違う美容院へ行き、髪型をもっとご自分に似合うものに変えてください。
エステティックサロンかマッサージのサロンで、ベーシックなコースの施術を受けてください。

「メールで変身! クリスマス(緑)」より






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