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育ちの良い箱入り娘と自由奔放な小悪魔~「あのこは貴族」と「アッコちゃんの時代」

こんにちは、ぱんだごろごろです。
今年の冬は寒いですね。
コロナのせいで、外出を控えている方も多いかと思いますが、外に出る際には、手袋、マフラー、貼るカイロで、完全防備をして下さいね。

さて、寒い中、のんびりと読める、肩の凝らない本を探していましたが、二冊見つけましたので、皆様にもご報告します。
のんびりと、と書きましたが、面白いので、あっと言う間に読み終わってしまいますよ。

若い女性には、この二冊の小説のヒロインの生き方は、対照的で、読み比べてみるのも興味深いと思います。
もちろん、このヒロイン達と、ご自分の生き方とを比べてみるのも良いでしょうし、ヒロインの友人たちも含めて、どの登場人物が自分に似ているかしら、と考えてみるのも一興ですよ。

「あのこは貴族」山内マリコ著

「あのこは貴族」のヒロインは、榛原華子。
小学校から大学まで、東京のカトリック系名門女子校に通い、卒業後は化粧品会社に勤めていましたが、結婚を意識して、会社を辞めたところ。
父は、松濤で代々続く整形外科医院の院長で、母は測量会社の社長令嬢。
極めて狭い社会で、極めて同質的な人々としか付き合わずに生きてきた華子が、27歳を目前にして、婚活を始める所から、物語は始まります。

実は、華子は、恋人と結婚するつもりで会社を辞めたのですが、恋人の方は、あまりに強い華子の結婚願望に恐れをなして、一方的に別れを告げて来たのでした。
華子にとって、結婚はするのが当たり前、と思っていたのに、なぜか、付き合う相手からはことごとく振られ、最早、人生の最大目標は結婚すること!と思い詰める程になっていたのでした。

華子の婚活は、失敗続き、箱入りのお嬢様で、不器用な華子の姿が描かれます。
華子自身、自分はつまらない、退屈な人間なのだ、だからこそ、自分は、結婚するしかないのだ、と思っています。
そこへ現れたのが、理想の王子様を絵に描いたかのような、弁護士の青木幸一郎です。
さあ、どうなる?

華子の友人、相楽さん、その知人の美紀さん、美紀の友人、平田さんと、この物語には、魅力的な女性達が次々に登場します。
作者は、東京と地方の対立上流階級と中・下流階級との格差を背景に、ドロドロ三角関係にもなりそうな女性たちの姿を描くのですが、読者の心配をよそに、そこには女性達の連帯する姿が見られるのです。

初めにも書いたように、この作品は、肩が凝らずにすらすら読めますので、結婚や女性の生き方について、考えたことのある方には、ぜひ読んで頂きたい小説です。
私としては、気位の高さを持っているようで、実は周りに翻弄される華子が、次第に自分の核を手に入れて、自分に自信を持ち、生来の気位の高さを取り戻して行く様に、興味を引かれました。

門脇麦の華子で、映画化もされて、今年2月に公開されるようです。


「アッコちゃんの時代」林真理子著

次は、「アッコちゃんの時代」で、ヒロインは、実在の人物をモデルにしています。
日本のバブル期、地上げの帝王と言われた資産家の愛人になり、別れたあと、今度は、妻も子もある、音楽プロデューサーと不倫関係になり、彼の子を身籠もったことで、妻と離婚した彼と、結婚した女性です。
資産家の男性の場合は、彼とは内縁関係にあった、銀座のクラブのママから彼を奪い、音楽プロデューサーの場合は、妻が有名な女優で、そのひとから彼を奪ったということで、大評判になり、アッコちゃんは、「小悪魔」「魔性の女」とも呼ばれるようになっていくのです。

実は、私は、「アッコちゃん」のことをまったく知りませんでした。
バブル期には、もう子供も生まれていて、堅実な生活をするしかない私達は、バブルの恩恵を受けることもなかった代わりに、バブルがはじけたあとの損失を被る事もなかったのです。

ただ、その有名女優のことは、もちろん知っていました。
いまでも活躍しているひとなので、そんな過去があったなんて、と驚きました。
小説の方は、多少事実を脚色しているところがあるようですが、おおまかな流れとしては現実の事件に沿っているようで、読んでいると、昔懐かしい出来事が要領よく詰め込まれています(皆様にとっては、遠い過去の出来事ですね)。

アッコちゃんは、短大生の時に、資産家男性の愛人になったため、短大を途中でやめ、モデル事務所に登録しますが、真剣にモデルとしてやっていこう、と思っているわけではありません。
美貌と天性の魅力に恵まれた女性が、強引に近付いて来る男性にほだされては、流されるままに人生を漂っていく、という印象を受けました。

自分で自分の人生をコントロールしようという意思がないと、他人任せの生き方になってしまいます。
読んでいる分には、抜群に面白いのですが、さて、アッコちゃんの生き方を思うと、「気位の高さ」をアッコちゃんが身に付けていたら、もっと幸せになれたのに、と思わざるを得ませんでした。


まとめます。


対照的な、若い女性二人の生き方を描いた、「あのこは貴族」と「アッコちゃんの時代」。
どちらも面白く、読みやすくて、登場人物の誰かには、共感できると思います。
また、自分とは掛け離れたひとの生き方を、眺めてみるだけでも興味深いでしょう。
箱入りのお嬢様と、魔性の女・・・さて、あなたが憧れるのは、どちらでしょうか?

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