冴返る
旅立ちの朝。吐く息は真っ白だ。
ここしばらくで多少緩んだと思っていた寒気が、今日は思い出したかの如く調子を取り戻していた。
凛とした空気が肌を刺す。
カッターで引いたような真っ直ぐな鋭い線。それがすっと自らに走り、ここから新しい自分が生まれる予感がし、一方で、気を抜けば裂け目からずるりと溢れ出るのは不安かも知れなかった。
靴ひもをぎゅっと結び直す。
地面にはきらきらと霜が光っていた。
こういう日も悪くない。
いざ。
冴返る(さえかえる)
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