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春眠

「ーー必ず幸せにするから」


絶対がないことは分かっていた。
それでも尚、二人で駆け出していた。

君が哭く声がする。
矢羽の嵐に囲まれて、
真っ赤な飛沫が舞い散った。

「どうか忘れないで。
僕が生まれ変わった暁にはーーー


重い瞼を擦る。
あの時約束したのは、誰だっけ?
心地よい温もりに誘(いざな)われて。
僕は再び、記憶の底へ落ちる。

春眠(しゅんみん)

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