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代表監督って普段なにしてるの?/吉田達磨氏(サッカー・シンガポール代表監督 )

吉田達磨さんをゲストに迎えて、3週にわたり鎌倉インテルFMを放送してきましたが、なかなか時間内に収められませんでした・・・
そこで、もっとお話しを聞きたいということで、今回はロングバージョンでお届けしたいと思います。
前回までの話とプロフィールはこちら

(ヨモケン/写真左から2番目)
達磨さん、3週に渡りお付き合いいただきまして、ありがとうございました。僕も達磨さんも喋りたいことだらけで、なかなか時間が・・・(笑)

(吉田達磨監督/写真左から3番目)
いやいや、俺は喋りたいことだらけではないけど。(笑)

※写真1番左はアシスタントコーチを務める飯塚浩一郎氏、1番右は昨年通訳を務めていた石橋稜氏。

シンガポール代表オファーの経緯

(ヨモケン)
ここから、アディショナルタイムということでやっていきたいんですけど、シンガポール代表監督に就任したエピソードについて、この辺をもっと聞きたいと思いました。
シンガポールサッカー協会の副会長がわざわざ日本に来て、達磨さんにラブコールを送った、と先ほどお話しがありましたが、どんなお話しをしたんですか?

(吉田達磨監督)
成田空港のラウンジで初めましてと挨拶をしてから、雑談はそこそこにしてという感じでしたね。
その後に、今シンガポールはあなたがいた時の状況ではない、と言われましたね。

(ヨモケン)
以前に達磨さんがシンガポールにいたのはいつ頃ですか?

(吉田達磨監督)
2002年だから、18年くらい前ですね。
今シンガポールサッカーは、タイやベトナムにかなり差をつけられていて、試合は拮抗するけど、恐らくライバルであるマレーシアに簡単に勝てない。インドネシアも今はものすごい経済成長をしていて、サッカー熱がとても高く、シンガポールがどんどん置いていかれている状況という話しを熱く語られましたね。
若手の成長も欠かせないという話もあり、ずっと喋っていました。
この話を聞く前は、自分のなかで監督をするのはちょっと厳しいかなと思っていて、気持ち的には20、30パーセントくらいでした。
ただ、この話を聞いて、行きたいと思う気持ちがグッと跳ね上がりましたね。
そこから、自分が行ったらどういうことが起きるのか、契約条件はどうなのか、みたいなことを聞きたいと思うようになりました。

(ヨモケン)
年俸がいくらで、みたいな話はあったんですか?

(吉田達磨監督)
全くないまま、ほぼ一方的に話しをされました。(笑)
言葉の全てを理解したわけではなかったんですけど、そこではポジティブに考えますと言って、わざわざこういう機会を作って、限られた時間に合わせてくれてありがとうと伝えました。
トータル5時間くらい話しをしましたね。
その後、台湾に向かったんですけど、着いた時LINEがたくさん入っててびっくりしましたね(笑)
ポジティブに考えるということがどう伝わったのか、誰に話したのかはわかりませんけど・・・

(ヨモケン)
もうメディアに出てたってことですか?

(ヨモケン)
本人だけよくわからないまま、フライトで3〜4時間ネットが繋がらない状態で、着いたらLINEがいっぱい来てたんですね。
その時の気持ちとしては、話が違うんじゃないか、そこまで言ってないぞ、みたいな気持ちだったんですか?それとも、しょうがないか・・・みたいな気持ちだったんですか?

(吉田達磨監督)
その中間くらいの気持ちでしたね。こういう風になったんだっていう感じでした。

(ヨモケン)
代表監督就任か?みたいなのがスポーツ新聞にありますが、よくよく見ると決まってなかったり、流れちゃったりすることがありますが、まさにこんな感じですよね。

(吉田達磨監督)
はい。ちょっと笑い話みたいな感じで、監督をするかしないかの話しをしたけど、人によってはこういうことで無くなるんだろうね、という話しはしてました。

(ヨモケン)
20、30パーセントだった気持ちや熱量が、そういう場が設けたられたことで、心がポジティブに動くことになったということなんですが、ここから監督を決めるまでにはどういう心の変化があったんですか?

(吉田達磨監督)
決めるまでは意外と時間はかからなかったですね。
日本では多くの人が、僕がシンガポールの代表監督をやるかやらないかという状況を知っているなかで、何人かの近しい監督とかに連絡したり、連絡してもらったりしていました。
僕は20歳とか25歳の若者ではないので、すぐには、よしやろう、あの気持ちに応えたい、という(ようなシンプルな)ことにはなりませんでした。
自分の監督としてのキャリアを考えなければいけないし、今まで決して良い監督キャリアを送ってきたわけではないと自分でも理解していますから。
今回は、自分にはできるとわかっているなかで、周りの人に相談したんですけど、やらないほうがいいという人は一人もいませんでした。
特に先輩とかは絶対にやったほうがいいと言っていました。

(ヨモケン)
例えば、どんな観点でアドバイスを貰ったんですか?

(吉田達磨監督)
監督同士なので、そんなに細かいことは言いませんでしたけど、代表監督になるっていうことと、小さい国とか地域ではなくて1つの国家代表ということ、そこに辿り着けるチャンスは普通に監督をしていたらなかなかないということを言われました。
Jリーグの監督をやるチャンスはこれからいくらでも来るけど、代表監督はこのタイミングを逃したらなかなかないよ、みたいな感じでした。
良い話しだな、ラッキーだな、ツイているなと言われましたね。

(ヨモケン)
自分が当事者だと、そんなに美味しい話しには見えないけど、他人から見るとこれはラッキーだぞとアドバイスをくれるものなのかもしれませんね。

(吉田達磨監督)
僕の立場なら行きますか?と聞いたら、お前の立場なら行くと言われましたね。
それまでは、色々なオフォーを受けてきましたが、めちゃくちゃ反対されたり、冷静に考えたほうがいいとか言われたりしたこともありましたからね。


代表監督って、普段なにしてるの?

(ヨモケン)
去年の5月とか6月くらいから就任で、(いままで約一年ほど経って)徐々にサッカーとか生活が慣れてきた頃だと思うんですけど、代表監督って普段何をやっているんですか?

(吉田達磨監督)
クラブの監督をしている時は僕も実際そう思っていましたね(笑)
ないっちゃないし、あるっちゃあるしっていうのが率直な感じで、実際に表に出るのは活動期間中の試合だけですし。

(ヨモケン)
合宿とか練習の時以外の時間のほうが圧倒的に多いですよね?

(吉田達磨監督)
はい。普段は基本的にサッカー協会のオフィスに出勤するんですけど、自分の決めた時間に行けばいいので、そこまで厳しくないです。

(ヨモケン)
どうやって行くんですか?代表監督が電車で行くっていうわけではないですよね?

(吉田達磨監督)
一応車が与えられていて、自分で運転して行きます。

(ヨモケン)
自分で運転するんですね!日本でいうと、ハリルホジッチ監督が自分で運転してJFAのオフィスにいくみたいな感じですね。

(吉田達磨監督)
こっちに来てMRT(地下鉄)にほとんど乗っていないですし、ちょっと乗ってみようかな、と思ったくらいです。

(ヨモケン)
代表監督が地下鉄に乗っていたらびっくりしますけどね(笑)

(吉田達磨監督)
気づかれることはもちろんありますよ。フードデリバリーの人に「おおっ!」て言われたり。
ただ、日本の時ほど気づかれることはありませんね。

(ヨモケン)
本編でもお話ししましたが、シンガポールはサッカーの地位が日本に比べてそこまで高くないから、そこまで知られていないんですかね?

(吉田達磨監督)
はい。なので電車に乗っていてもそこまで気づかれないので、乗りたいですね。

(ヨモケン)
(気づかれないので)プライベートとしては過ごしやすいんですかね。

(吉田達磨監督)
過ごしやすいですね。時々寂しい時はありますけど。サッカーで認めて欲しいという気持ちが常にありますね。

(ヨモケン)
さっきオフィスに出社すると言ってましたが、オフィスでは何をするんですか?

(吉田達磨監督)
オフィスには自分の部屋があるんですけど、基本ドアは開けっ放しでスタッフがうろうろしている感じです。
基本は国内リーグの試合を映像で見たり、海外でプレーしているシンガポール選手も見たりします。これに大きな時間を費やしますね。

(ヨモケン)
そうですよね。例えば、代表選手を30人選ぶとして、ラージグループで考えたら、40人とか見ないといけないですもんね。

(吉田達磨監督)
そこにはけっこう時間がかかって、1日に4〜5時間は見ていますね。
自分達のサッカーのコンセプトに沿って良い悪いを判断します。
時々、彼らのプレーを編集することがあって、例えばタイでプレーしている選手のプレー映像をまとめて、代表ではこうプレーして欲しいと映像を作ることもあります。

(ヨモケン)
ミーティングもいっぱいあるんですよね?例えば誰とするんですか?

(吉田達磨監督)
そんなに多くはないんですけど、テクニカルディレクターとかとしますね。
自分達がやっていることの手応えや評判は悪くないので、そこまで周りが何かとやかく言ってくることはないですね。
逆に負けたらめちゃくちゃ言うんだろうなと思うくらいです(笑)

(ヨモケン)
今戦っている、ワールドカップ予選の成績とかも良いですもんね。

(吉田達磨監督)
あとは、国内リーグの運営ミーティングで意見してよ、とも言われますね。
例えば、日本だったらどうなの?とか、日程について飛行機のプランを選ばさせられるとかもありますね(笑)
なので、常に誰かといる感じで、暇ってことはないですね。

(ヨモケン)
リーグ戦があれば、週末生で1試合2試合連続で見ることもありますよね。

(吉田達磨監督)
平日の夕方とかは各クラブのトレーニングを見に行きます。
日本だと不可能ですが、シンガポールは、クラブ間の距離が近いのでどこのクラブでも見に行けるんですよね。

(ヨモケン)
確かにシンガポールは東京23区くらいの面積と言われていて、足立区から世田谷区間で6、7クラブあるみたいな感じなので、すぐに移動ができますよね。

(吉田達磨監督)
カーナビの設定の最長時間が37分ですからね(笑)
代表チームとして、パッと行けてパッと集められるのは大きいですね。

(ヨモケン)
極端な話し30分で全員集合できますもんね(笑)
合宿とかする必要ないですよね。

(吉田達磨監督)
はい。なので、試合の2日前にホテルに入ってという感じなので、それまでの期間は通いでトレーニングすることもありますね。


一国の代表監督を指揮するってどんな気持ち?

(ヨモケン)
ところで、国際試合で、ナショナルフラッグを付けて試合をすることってどんな気持ちなんですか?

(吉田達磨監督)
日本で日の丸を付けた場合、こんなもんじゃないんだろうなと、熱くなりますよね。
日本でやってる外国人監督の気持ちがわかります。
でも、そこまでプレッシャーに入れ込み過ぎずに、良い精神状態ではいられますね。祖国は別にあるっていう感じで。

(ヨモケン)
日本代表監督とかは凄まじいプレッシャーでしょうからね。

(吉田達磨監督)
もちろん、プレッシャーがないわけではないですが、負けたら後がないみたいなことはそんなに感じないですね。
シンガポール人は(自分たちで)シンガポールのことを卑下することがありますけど、やっぱり母国が好きで心地いいから、ベンチ含めて国家を一生懸命歌うんですよね。
それを聞くと、鳥肌が立ちます。

(ヨモケン)
生半可な気持ちではないですし、ピリッとしますよね。

(吉田達磨監督)
国家斉唱の時は間違いないですよ。ちょっとゾクッともしますし。


今後のキャリアは?

(ヨモケン)
永久にシンガポール代表監督をやるわけではないと思うんですけど、この後のキャリアや理想の監督像はどんなことをイメージされているんですか?

(吉田達磨監督)
そんなに理想というものがありませんけど、自分にエネルギーがある内は、選手と向き合ってバチバチやって、サポーターからのプレッシャー受けてでも、サッカーの現場でジャージを着ていたい、という想いがありますね。
後は、選手を育てていくとか、コーチの人達に何かを分けたいなとは強く想っています。

(ヨモケン)
日本だと、コーチャーズコーチ(指導者向けのコーチ)みたいなのがあるんですか?

(吉田達磨監督)
ありますね。そういうこともやりたいなとは思ってますけど、ただ今は監督として出来る限りのことをやりたいと思っています。
先にビジョンとか目標ばかり掲げてしまうと、そうならないということを知っちゃっていますし、5年後とか、僕がどうなるとかわからないですしね。

(ヨモケン)
自分だけの想いではできないですし、どこのポジションが空くのとかもサッカーの世界だと特に分からないですよね。
成績が悪くなって、いつクビになるかわからない世界ですから、たまたまポジションが空いてて、そのタイミングで自分が空いてたみたいなことですからね。

(吉田達磨監督)
タイミングでしかないですからね。
だから自分はラッキーだな、ツイているなと言われているわけで、「今ここに集中する」という気持ちではいます。
後は、何か漏らさずにやり残さないようにはしたいですね。ダメだったらちゃんとクビになりますし、そういう世界で生きているという認識もありますし。
やり切っていないと結果を受け入れるのは難しいですし、それ以外に消化する方法がないと思います。

(ヨモケン)
普通、アディショナルタイムって3分くらいですけど、これも話し出したら止まらないですね。(笑) ※すでに20分くらい経過。

(吉田達磨監督)
止まらないですね。いくらでも話せますから(笑)

(ヨモケン)
達磨さん、ここから先の更に延長戦は今度二人で飯でも行って話しましょう(笑)
一人目のゲストということで、シンガポール代表監督の吉田達磨さんをお招きしました。
長丁場になりましたが、ありがとうございました。

(吉田達磨監督)
こちらこそありがとうございました。本当に楽しかったです。




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