第11回　マンション防災を考えよう

在宅避難生活のポイント9（設備）

こんにちは。マンション防災研究所の城戸です。
マンション防災を考えよう、前回まで数回にわたり備蓄について考えてきましたが、今回は「設備」についてです。

設備と一言で言っても、たくさんありますね。特にマンションの場合は戸建て住宅と違って集合住宅として必要な設備、「マンションならでは」の設備もたくさんありますので、いくつか代表的なものを中心に考えていきたいと思います。
（管理組合としては様々な設備を一つ一つ考えていくことが必要なことなので、この記事にないこともいろいろと想像しながら考えていきましょう。）

マンションの設備と言えば、まず頭に浮かぶのは「エレベータ」ですね。
戸建て住宅にはほとんど設置されていない設備で、逆にマンションではほとんどの建物に設置されているといっても過言ではありません。

そのエレベータですが、よく「5階建て以上にはないといけないんだよ」という話しをされる方がいらっしゃいますが、建築基準法では高さ31mを超える建物に設置が義務付けられています。31mというのは、各階の高さにもよりますが、一般的には6～7階だということですので、5階建てだと設置しなくてもよいのだそうです。
でも、やはり生活するのには不便なので、ほとんどのマンションに設置されている状況ですね。（サ高住（サービス付き高齢者向け住宅）では、3階建て以上に設置義務があります。）

そんなエレベータですが、災害時のことを考える際に、最低3つのことを考えなければいけません。

第1は安全装置です。
大地震が発生した際に乗っていた場合、すべての階のボタンを押して停止した階で速やかに脱出することというのはよく言われますね。最近のエレベータには様々な機能が付加されているものがあります。
例えば、地震を感知すると自動的に最寄りの階で停止する機能、同様に自動的に1階に降りる機能、停電時の非常電源機能などです。

第2に閉じ込めへの対応です。
安全装置の種類によってや地震対応の機能がない場合、また停電した場合など、階の途中で停止してしまい、閉じ込めに会ってしまう場合を想定した対応を考える必要があります。
最近はエレベータ内に非常用チェア（ちょっとした荷物置きや椅子になる形のもので、中に水や食料、懐中電灯、災害用トイレなどを収納したもの）を設置しているところも見かけるようになってきました。
でも、本当にそれで対応できていると思いますか？例えば首都直下地震が発生した場合、東京都内だけでもマンションだけでなく無数のビルに無数のエレベータがあります。停止したらその復旧はエレベータ保守会社しかできませんが、自宅マンションに来てくれるまでどのくらいの時間がかかるか想像してみてください。1台のエレベータの復旧が1分でできるとは思いませんが、もし1分でできるとして、移動に5分かかったとして合計6分としても（これも実際には絶対できない想定ですが）、1000台復旧に6000分＝100時間＝がかかります。不眠不休で続けても最後のエレベータに来るのは丸4日以上です。普通に考えると1週間以上かかりそうですよね。ましてやそれほど保守会社のクルーがたくさんいるとは考えにくいですし。その間、エレベータチェアで賄えますか？数人が閉じ込められたとしたら、災害用トイレをその場で使う勇気がありますか？

第3に、けが人などの搬送についてです。
一見狭く見えるエレベータでも、箱の奥のスペースが担架やストレッチャー（病院や救急車が使っている移動式のベッド）を運べるようにトランクというスペースを設けているものがあります。これがあると、けが人などを搬送する場合に便利なので、管理組合で利用方法を設定しておくこともいいかと思います。ただし、災害発生時には使用してはいけませんので（二次災害や閉じ込めの危険があるため）、復旧・復興に向かっての活動などに利用することを、どの段階で利用可能とするかなどを考えておく必要があります。

以上のことを考えると、普段からエレベータのことを知っておくことが必要です。そして、実際に災害発生時のことを想定、想像した対策が必要で、そのためにはエレベータの閉じ込め者救出訓練の実施もぜひ検討していただきたいです。エレベータ会社は危険が伴うこともあり、なかなか訓練の実施には消極的ですが、粘り強く交渉していきましょう。

エレベータだけでもいろいろ考えなければいけないことがありますね。でも、やはりマンションでは重要な設備の一つなので、慎重に、良く考えていった方が良いと思います。

今日はここまでです。
次回もマンション設備について続けて考えていきたいと思います。
またご覧いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

マンション防災研究所　所長　城戸　学