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怪談No.12 卒業制作の化物

職場の先輩から聞いた話です。

その先輩はある大学の映像学部?出身で、お世話になった教授から聞いた話を僕に話してくれたのでその話をします。

先輩のA大学映像学部は卒業制作として、学部全員が映画を一本作る必要があった。

卒業制作は5人ほどのグループワークで行われる。

佐藤教授(仮)は卒業制作の中で薄気味悪い出来事に遭遇したそうだ。

佐藤教授のゼミに所属していた畠山(仮)が卒業制作の途中発表でゼミのみんなを驚かせた…

畠山はホラー映画を撮っていて途中まで作った映像を見せたが、映像の中に見たことのない化け物が写っていた。

その化け物はメインキャラクターではなく、映画の主人公が恐ろしい幻覚を見ると言うシーンで一瞬現れただけだった。

その化け物に1番見た目が近いものを挙げると人間の胎児に爪を伸ばしたり、腹から触手のようなものが生えている感じのもの。

佐藤教授は絶賛して畠山にこの化け物をどう作ったのか質問したのだが、「最後の卒業制作発表会でまた話します!今は内緒で!」と笑顔で答えたらしい。

そしてその日の途中発表の授業は終わった。

気になってしょうがなかった佐藤教授は畠山に内緒で、畠山と同じグループのメンバーに化け物の正体をこっそり聞いてみたらしい。

しかしどのメンバーも「知らないし、畠山も教えてくれない。あの幻覚のシーンを入れることは畠山から聞かされてたけど。多分あいつ1人であのシーンを撮った」と答えたらしい。

佐藤教授は最後の卒業制作発表まで待つしか無かったが、予想外の出来事がおこる。

なんと畠山が急に大学に来なくなったのだ。

原因は大学の窓口で暴れたことだった。

卒業制作にかかる費用はある一定金額を超えると大学から補助が出るらしく、畠山はそれを申請するため今までの経費の領収書を大学へ提出した。

その際に畠山は見知らぬ言語(窓口担当曰く中国語っぽい)で書かれた領収書を一部提出してきたらしく、その領収書の金額が日本円に換算するとかなり高額だった。

ルールとして日本で発行された領収書でないことや高額を理由に経費と認められなかったらしい。

認められないことに不服だった畠山はその場で暴れて、大学を出て行った。

この一件以降畠山は大学に行かず音信不通、しばらく休学扱いであったがついには退学となった。

さらに畠山を除くグループのメンバーは畠山抜きで残りの映画を完成させようとしたが、今まで撮影してきた映像データが破損したため続きすら作ることが出来なかった。

他のメンバーは泣く泣く急いで他の作品を作り卒業制作として提出したが、時間もなかったためお世辞にもあまり良い作品ではなかったらしい。

佐藤教授は結局あの化け物の作り方がわからないまま、今でも畠山とは一切連絡が取れてない。

その後佐藤教授はCGコースの学生から特撮などを作るコースの学生まで学内のほぼ全学生に畠山が作った化け物について知っていることはないかと聞き回ったらしいが手がかりは一つもなかった。

佐藤教授はその話の締めくくりとして、映像データはしっかりと保管しろと言った。


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