Vision Pro では「留学」はできない

日本を出て留学に行くと、留学生自身が大きく変わる。

環境が変わるからだ。場所、人、時間の使い方が変わる。そして、目にするもの、聞こえること、匂い、肌で感じること、いろんなことが変わる。

最近Apple がVision Proという「空間コンピュータ」を米国で発売した。もう語学留学や大学留学はそれでいいのではないか、という人さえいる。

確かに、英語力の向上や資格の取得や研究だけなら、バーチャルな空間で事足りる場面も増えていくかもしれない。

でも、環境を変え、場所や人や時間を変え、人間として感じるものを変えることで、その人自身が変わる、という経験は、バーチャルとリアルとでは大きく異なるだろう。

ゴーグルのような機器をつけた時だけその世界に入り、外すとそれまでの生活に戻れる環境と、日本を出て全く違う環境に一定期間身を置くことは、根本的に異なる経験だ。

言い換えると、英語や資格以外の、「経験」の部分、リアルな感覚の部分が、留学の醍醐味であり、留学によって人が成長する大きな力となるのだ。

「留学」は経験だ。日本ではできない経験をすることで、日本とは違う成長をする。

そうであるならば、その場限りのバーチャルな世界に入るだけでは、「留学」の大きな、そして大切な部分を逃していることになる。

これからいろんな機器が出てきて、選択肢も広がっていくだろう。

でも、生身の人間が、その人のからだで感じ、経験することでしか得られないものは、きっとこれからも必ず残っていくだろうし、それが故に、人生の中でも大切で貴重なものになっていくだろう。

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