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「東京には何でもある説の真偽」

2020/6/11

東京出身かつ在住の方の感覚は分からないが、自分のような地方出身者は、
"東京にはなんでもある"みたいな言説を信じているところがある。
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上京して初期に地元の友達と喋る機会があると、特に自分が特別な体験をしているというわけではなくても、
「まあなんでもあるし色んな人がいるよね〜」となんとなく言ってしまうなんて事も、多くの人が経験しているのではなかろうか。
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実際のところ東京には何でもあるのかというと、まあ、ある。
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本日の写真のように、スクーターのVespaの中古車販売や修理を専門にする店があって、そういう店が長いことやっていられる点を例に話そう。
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スクーターの中でも人気車種のVespaとは言え、高級車への憧れを語ったりするように、「俺、将来ヴェスパ乗りたいんだよね〜」なんて言う人はそういないだろう。
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いても、探偵物語の松田優作のファンぐらいだろう。そしてそう言う人も、40年前ならいざ知らず、もはや少ない。
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そんな商品ばかりを扱う奇特な店に需要があって成立するのだ。
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なにせ人が多い土地である。
ニッチ戦略で勝負するに最適な場所は、人が多い土地なのは間違いない。
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ただまあ、このように何でもあるからと言って、
それが東京に夢見て上京してきた者達にとって意味があるかと言えばそうでもない。
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だってVespaの専門店があるなんて、一回友達に話して「へ〜そんなんあるの??おもしれ〜」で終わりだ。
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というかほとんどの人は、Vespaの専門店があることに対してなんらの感慨を抱かないだろう。
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自分がわざわざこの店の写真を撮りたいなと思ったのも、自分がスクーターに乗ったりVespaが好きだからではなく、
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探偵物語で松田優作が乗っていたり、1960年代のイギリスのモッズカルチャーのアイコンだったりすることを知っているからであって、多くの人がVespa専門店に興味を抱く蓋然性は低いと言わざるを得ない。
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だが、まあ色々なことを知識として持っていることによって、その知識に関連する物事を現実に目にしたり、触れたりした時というのは、
意外に感慨深いものがある。
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自分が意図せず見知っている物事に身体的に接近した感覚がもたらすのは、
世界に素手で触れる感覚である。
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これまで多くの人や歌、本や様々メディアが発してきた東京に存在する物事の情報は、相当数の日本人に植え付けられているのは間違いない。
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そうした情報を持った上で東京にくるとある程度世界への手触り感を味わえるという意味において、
"東京にはなんである説"を肯定できなくもない。
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そして、世界のあらゆる情報をスマホを通して得られる現代人にとっては、
あらゆる場所が東京のように世界に素手で触れる感覚を味わえる場所になる可能性さえある。

このロクでもなくやはりロクでもない世界の目を瞑ってはいけない部分を目を見開いて見た結果を記してゆきます。