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サッカーを本気で学ぶ。そのためにどれだけの労力をかけているか。

サッカーを勉強したい。
指導者の勉強がしたい。
戦術を学びたい。
理論を学びたい。
仕組みを学びたい。

そういってドイツやスペイン、イングランドやオランダにわたる若者がいる。欧州で指導経験を積み重ねて、ライセンスを所得して、学んだ経験を生かして、日本でチャンスをつかもうとする。

そんな野心が悪いとは言わない。向上心や好奇心は成長の大事な糧。でも、そう簡単にそれぞれの国にあるサッカーが何たるかを理解することはできない。僕はそう思う。

何年いれば、どこまでライセンスを取れば、どのカテゴリーで指導者をすれば、サッカーがわかるようになる、なんて方程式はない。

それこそドイツ語一つにしても、僕は仲のいい友人にこんなことを言われたことがある。

「外国人がドイツ語を自分の言葉にできると実感できるまでに必要な時間は最低でも5年間」

ドイツに渡り、語学学校に通い、朝から晩までドイツ語を勉強し、話す機会を探し、それでも、相当の時間がかかるのだ。

個人差はあるだろう。僕自身の経験を話せば、大学に通うためのドイツ語試験に合格し、大学に通っていた時期もあったけど、大学に通うために学んでいたドイツ語と、大学で使われるドイツ語とのレベルの差にがくぜんとしたことがあった。

そして「ああ、自分はドイツ語を自分の言葉として考えて、話して、聞き取ってということができるようになったな」と実感できるようになったは7年目だ。ちょうど、B級ライセンスに2度目の挑戦で取得できたころ。

学びの道に果てはない。何をもってできるようになったとか、わかるようになったかは線引きが難しいものでもある。立ちふさがる巨大な壁を前に、足が立ちすくんでしまったり、何をしていいかわからなくて立ちすくんでしまうことだってあるだろう。

でも、だからといって、何もしなければわからないままだ。変わらないままだ。わかっているか、わかってないかすらわからないままだ。

やるべきことはたくさんある。
覚えるべきことはたくさんある。
調べるべきことはたくさんある。

そうした作業もせずに、現場を見て、指導をして、ライセンスを目指して取り組んでも、何も変わらない。

いま、僕が監督を務めるSVホッホドルフのU13とU19でアシスタントコーチという形で携わっているごとう君という指導者がいる。ドイツにきて5カ月ほど。来年5月に帰国予定なので、ちょうど折り返し地点にいる。

先日、相談を受けた。ドイツに来たら、「サッカーとはどういうものかという答えがわかると思ったんですが、いろんなのを見て、聞いてとしているうちに、余計答えがわからなくなってきました」と。

悩みを抱える気持ちはわかる。僕にだって経験がある。自分が思っているイメージと、描きたいイメージと、現実のイメージが合いそうで合わない。

僕は彼に尋ねた。

「答えを見つけられるほど、サッカーを学んだか?基礎知識を読み込んだか?負荷設定基準は?年代別の特徴と性質は知っているか?ドイツにおけるクラブの成り立ちを調べたのか?コーチング理論は?子どもたちにおけるトレーニングのあり方はどんな優先順位で考えられるべき?」

どんな本を読んだらいいのか、何から学んだらいいのかわからないと彼は答えた。一度読んだことがある内容もあるが、はっきりと覚えてはいないともも。

ジーっと考えて、それから彼を自宅に招き、僕が持っている基本的なサッカーについて書かれている資料を日本語とドイツ語と両方渡すことにした。そして課題を出した。

「これから、渡した本をとにかく読んで、調べて、考えて、そして毎日自分が学んだことを書き綴っていくことを勧めるよ。やったつもりになるのが、わかったつもりになるのが一番良くない。頭の中を整理していくこと。ドイツ語でも読んで、トレーニングで使える表現を増やすこと。そして、学んだことを実践し、フィードバックをすること。わからないことや疑問に思ったことはすぐに誰かに聞くこと。そうやって地道に積み重ねてはじめて、輪郭が見えてくる」

話を聞いた彼は、こうつぶやいた。

「大変だなぁ」

僕はすぐに答えた。

「大変なんかじゃないよ。知らないこと、わからないことと向き合うことが大変なんだったら、何もできない。何も見えない。そうではなくて、そうしたできないこと、見えないことを覗きたいという好奇心があれば、これからやろうとすることは喜びでしかない。嫌いな教科に取り組むんじゃないんだろう?大好きなサッカーと本気で向き合うんだから」

その日から、ごとう君は毎日、noteに学んだことを書き綴っている。自分と向き合い、サッカーと向き合おうとしている。意志の力というのは大切なんだ。

サッカーってなんだろう?指導者ってなんだろう?グラスルーツってなんだろう?

そんなことに興味がある方は、ぜひごとう君のnoteをフォローしてみてほしい。僕も楽しみに読んでいる。そして、彼からもたくさん学ばせてもらっている。

僕もまだまだ途上の人なのだから。


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