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今、フィリピンでキチママと暮らしてます。(第二期)(3)

トモダチ


キチママが借りている家はバランガイキャプテンの屋敷の敷地内にある。


バランガイとはフィリピンの都市と町を構成する最小の地方自治単位で日本で言えば区や村にあたるが、バランガイキャプテンとはその自治体でトップの人の役職である。

そのキャプテンの屋敷のなかに5世帯の家族が住んでいて全員キャプテンの親族のようなのだが、キチママの叔母とキャプテンが旧知の中ということで借りることができたのだが、その家に住んでから4歳になる娘にはじめての友達ができた。


父としてはこんなに嬉しいことはない。とくに生まれてから今まで親戚の子供と会う機会があっても友達と呼べる子が周りにいなかった。私が住んでいる家はタウンハウスといっても、住宅街というわけでもなかったので、娘と同い年くらいの子供があまりいなかった。

とくにコロナになってからは子供が外出禁止になっていたので、私が友達のつもりで毎日遊んでいたのでいつも「ダディ、ダディ」とお父さんっ子になってしまったのだが、キチママのワガママにより私はいっしょに住めなくなった今、キチママは新しく始めた商売で忙しく、ヤヤさんも娘の世話をほったらかしてスマホで動画を見ている。そんなひとりぼっちになった娘に友達ができた。父親としてはうれしい限りだ。


その友達は隣の家に住んでる、娘と同い年くらいの子でバランガイキャプテンの親族のようだった。始めてうちに来た時は衝撃的だった。私と娘が人形で遊んでいると女の子が一人、家の玄関から中に入りたそうにこちらを眺めている。


「誰?」とキチママに聞くと、知らないと言われた。入ってきなさいと手招きすると中に入ってきて、家の中を見わたしてからオモチャ箱を見つけてすぐに飛びついてガチャガチャと音を立ててオモチャを取り出した。


私も娘も唖然だった。


それから自分の方にきて、タガログ後で話してきたのだが、よくわからなかったので英語で聞き返したら、理解してもらってないようだった。そのあと自分と娘が遊んでいた人形を手に取り、遊び出すが、自分のオモチャを取られた〜と言う娘に「いっしょに遊びたいんだよ」と言ってなだめた。


「一緒に」と言っても、娘とではなくて私と遊んでほしいようだ。それをみてヤキモチなのか怒り出す娘。はちゃめちゃな展開にたじろぐ私がいた。


娘がトカゲの形をしたグミが大好きで、「ダディ、スネーク(トカゲをヘビだと思ってる)」と言って、グミが入っている冷蔵庫に手を引いて連れて行く娘のあとをついていき、冷蔵庫に入っていた飲むヨーグルトを勝手に取って、飲もうとしたり、戸棚に入っていたスナック菓子をポリポリと食べて最後はそのまま持ち帰っていったりしたのだった。


その後もおもちゃを勝手に持って帰っては、あとでその子の母親が返しにきていたが、しつけされてないのか、そもそもフィリピンではこれが当たり前なのか、娘の人生初めての友達は何とも変わった子供だった。

この子供のほかにも、その子の兄や、バランガイキャプテンの家に2歳くらいの子供がいて、初めのうち娘はいつも夜遅くまでキャプテンの家にいくようになり、自分が「帰るよー」といっても、きかなかったりしたが、今までそういうこともなかったので、親としてはうれしいような寂しいような複雑な心境だったが、おもちゃを見せびらかしては貸しさないでただ自慢をしているような感じに見えたので、それもそれでどうなのかなと思って「いっしょに遊びなさい」と言ったことが何度かあった。

でも今まで友達という友達がいなかったんだ。少しずつ、子供たちの輪に入っていってケンカして、仲直りして、人間関係を作れるようになっていってほしいなと、思っていた。


でも、そのうちキャプテンの家にも遊びに行かなくなり、友達は家にも来なくなっていた。娘に「友達は?」ときくと「I dont like friend(友達が嫌い)」と娘が答えた。

ケンカしたのかな・・と思ったが、それからはまた以前のように「ダディ、ダディ」と言って私がいるときは朝から夜までいっしょに遊ぶようになっていたが、私と娘が楽しんでいるときまって子供たちが集まってくるので、お菓子をあげたりして、娘がもっと友達との時間を持てるようにしたりしたが、そんなこともまた当時は楽しい時間だった。

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