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【特別対談】中村蓉×栗原一浩(吉祥寺シアター支配人)番外編~中村蓉さんと舞踊~

2023年9月22日(金)~24日(日)に上演される中村蓉単独公演『fマクベス』が遂に本日開幕します。この公演をもっと楽しんでもらうべく、本公演で振付・構成・演出を手掛ける中村蓉さんと当劇場で支配人を務める栗原一浩で対談を行いました。

およそ一時間程でしたが、内容盛りだくさん!今回は番外編として、中村蓉さんと舞踊の出会い、現在までの軌跡を辿ります。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

~子どもの頃の話~

栗原:中村蓉さんは3歳ぐらいにバレエを始めたとのことなんですけど。
中村:クラシックバレエ。
栗原:それから中学1年生まで、どんなお子さんでしたか。
中村:はい…(笑)どんなお子さん…もう正直に言いますと、みんなと一緒にいたいけど、なんか一緒にいられない、みたいな。複雑な人だったかもしれないですね。
栗原:うんうん。
中村:元気ですよ、全然元気なんですけど。なんか居場所がないな…っていう感じを抱いていた気がしますね。その中で、でも踊りが好きだったんです。でもちょうど中一くらいで、「あ、私バレリーナになれない」って気づくっていう。
どうでしょう?
栗原:そうですね。人間は好きなんだけど。
中村:はい。好き好き。
栗原:人間は凄い大好きなんだけど、でも私、人と違う。
中村:人と違うんですかね?
栗原:そんなことはない?
中村:人と違う…って思ったことはない。う~ん、そんなはっきり思ったことはないですけど。ただ、居場所がやっぱ無いなぁって思うってことは人と違うってことでしょうね。
栗原:心の居場所がないってこと?
中村:あの~しっくりこないっていう感じです。
栗原:自分の存在っていうものが?
中村:はい。どこにいても、なんかしっくりこない。それが結果的に踊りも、ソロダンスから始まるきっかけがそこかもしれないです。
でもバレエでも、学校でもいいお友達には恵まれてますけどね。多くはないですけど。一人は必ずいる。
栗原:独立してましたか?
中村:独立?
栗原:インディペンデントな感じだった?
中村:えぇ~クラスの中でってことですか?
栗原:どこでも。
中村:多分そうだと思います。うん、そんな気がします。
栗原:独立派は大切です。
中村:大切ですか?
栗原:うん、弱い人のために生きる、みたいなところがあるので。つまりインディペンデントなところには、色んな弱い人達が寄ってくることができる。誰にもひよらないからっていう。
で、人が好き。だからちょっと色んな事を抱えた人達がついつい集まってきてしまう。そういうのは全然ない?
中村:あります!ありました、小学校のときからそうでした。なぜか慕われるっていうのはありました。
栗原:そうですね、だからインディペンデントだと思う。独立していたんだと思う。
中村:そうか、インディペンデントだったっていうことなんですね。面白いなあ。
栗原:そういう子だったんだろうなと思って。
中村:栗原さんはどんな幼少期だったんですか?
栗原:僕はまあ、昔はあったんですけど、自分のわがままさを消して、自分が無になっていく。自分に何ができるかっていう。どうしたら自分の我というものを捨てられるのかっていうことを小学校5年生くらいにずっと毎日考えていました。
中村:え…修行?(笑)修行僧みたいな。そうだ、無がテーマだったんですもんね?
栗原:自分の自己というものを、わがままさとかそういったものを無くしていって、人のためにどうしたら生きられるのか。ずっと考えていました。
中村:小学校5年生から?
栗原:はい。
中村:なんでそうなったんですか?
栗原:わがままだから。
中村:あ~
栗原:小沢健二 っていう歌手が僕はわがままだからって歌っている。自分がわがままだって分かっている 、と。どうしたら良いのかって。
中村:そっか、わがままなままではいないっていう。いたくないっていう。
栗原:そうですね。わがままだけでは世の中は生きていけない。わがままな人間が生きていくにはどうしたらいいんだろうっていう。
中村:自我を消す? 無っていうことをテーマに。
今は? 今は無になりました?
栗原:人のために生きるっていうことは変わらない。それが理想だ、自分のためじゃなく誰かのために何かをするっていう。そういう風になりましたね、50歳を過ぎてから。
中村:特に?
栗原:もう良いでしょ?って。やりたい事は沢山やった。あとは人のために、ってそんな感じですね。
小学5年生から考え始めて、50歳で少し光が見えた。人生の往路と復路みたいなものだと思います。もう帰ってるんですよ、一応半分のゴールまで行ったからあとは人のためにって。もう帰ってきている。
中村:栗原さんの教えでした。

~創作の種~

栗原:中村さんは 國學院久我山高校に進学されたということで。
中村:はい。中学、高校が。
栗原:あ、中学からなんですね。
中村:中学からです。6年間。
栗原:どうでしたか?
中村:あの、めちゃめちゃ厳しい学校なんですよ、今どうか分からないですけど。スカートは膝より下、ちょっとでも上げたりベルト使ってるとすぐ没収されたりするんですけど。でもそんな厳しい学校生活の中で、自分の欲求をギュッと我慢する時期があったので、そのあと大学でふぁって解き放たれて、倍増、爆発したっていう感じはあるので、決して悪いことではないなって思ったんです。我慢するときって。
特に久我山では私は、中学校の時はクラシックバレエを習いながらも剣道部にも入っていたりして。剣道部は中学でやめちゃいましたけど。そのあと高校は茶道部に入りまして。バレエで、中学1年生の時にクラシックのバレリーナにはなれないなと思うという挫折も味わいまして。
一番のトピックはあれですかね、創作ダンスの授業が楽しかったっていうのがありますね。
栗原:先生が面白い先生だったんですよね?
中村:はい。日女体出身の先生で、たまたまその先生が体育の先生でダンスの先生だったので、良かったなと。凄いスパルタでした。
栗原:ふ~ん。
中村:5分でワニをテーマに作りなさいって。ええぇって言って、なんやかんやとにかく作って、良かったら褒められる。悪かったら何も言わない。スパルタなので恥ずかしいとか思ってる隙間がなかったのが良かったです。そのときに仲間に振付するっていう楽しさも覚えましたし。
栗原:うんうん。
中村:そのときは創作ダンスの授業って思ってましたけど、振り返ればコンテンポラリーダンスだったなって思います。
栗原:なるほど、そうですか。クラシックバレエはやめてしまって?
中村:まだやってました。
栗原:まだやってたんだ。そうなんですね。じゃあクラシックバレエ的なものとコンテンポラリーの要素がだんだん合体していった時期っていう。
中村:そうですね、自分の中で見つけたっていうことですかね。それまでクラシックバレエしかやってなかったけど、自分に創作する楽しさっていうのが。持ってたんだって気づくきっかけになったのは創作ダンスの授業だった。
栗原:そうなんですね。
中村:久我山は…どうですか?結構いるんじゃないですか?この辺り。久我山の制服着た子。出会いはしないですか?
栗原:電車に乗ればいっぱいいますよ。
中村:いますよね。
栗原:井の頭線乗ればね、いっぱいいますよ。最近凄い難関校になりましたよね。
中村:らしいですね。
栗原:東大行く子もいるしね。
中村:そうそうそう。
栗原:すっかり難関校になってしまいました。
中村:今でも男女別学でしたっけね。
栗原:あ~そうかもしれませんね。
中村:あれもまた特殊なシステムでね、男女別の校舎ってところで。そこで観察眼が養われたと思います、私。
栗原:男の子の観察眼ですか?
中村:見るしかできないので、興味はあっても見るしかできないから、こういう感じなんだなって。一目見る、横切る姿で一目惚れとする、みたいな。何時何分に2時限目から3時限目の移動を彼はここを通る、みたいなのをリサーチしてベランダで覗くとか。
栗原:へぇ、凄いですね。
中村:ちょっと危ない感じですけどね。そこで見た彼の姿で想像を膨らませる、みたいな。
栗原:へぇ、そうなんだ。面白いですね。大学で段々とそれが解き放たれていくんですね。
中村:解き放たれていくって感じですね。
栗原さんの中学高校時代は?
栗原:僕中学は普通の公立でね、高校は早稲田実業というところで。
中村:あぁー 早実。
栗原:ひたすら勉強してましたね。
中村:あー そうなんですか。何がお得意で?
栗原:英語と世界史でしたね。
中村:英語と世界史かぁ。
栗原:でした。甲子園、全国大会に行けない者は勉強しろ。
中村:(笑) スポーツか勉強。
栗原:5時半だか6時だか以降に部活をしちゃいけないって。
中村:へー!
栗原:だから段々弱くなりましたよね、甲子園はもう行けないと思ってます。だって6時までしか練習できないんだもん。
中村:厳しいですよね、それね。
栗原:今はどうか分からないですけど、僕の時代は暗くなったら帰って勉強なさいって感じでしたよね。そういう高校生活でした。
だから女の子は全く存在しませんでした。今の早実は1クラスだけ。
中村:今はね。
栗原:商業科っていうのを無くしたからじゃないですか?
中村:うんうんうん。
栗原:そんな高校生活でした。
中村:お勉強に集中していたと。
栗原:う~んそうですね。
中村:部活は?
栗原:部活はなかったんですよ。
中村:無かった?!
栗原:全国大会レベルのスポーツクラブか帰宅して勉強するか。
中村:凄いな。極端。
栗原:そういう学校だった。今は違う。今は女子が入ったので文化部がありますけど、文化部ってものがなかった。で、野球部の子たちはモテモテ。みたいな。
中村:あぁ。
栗原:そういう感じでした。
中村:分かる、うんうん。
栗原:王さんの時は女の子がチョコレート持って並んでたのに、お前らだらしないぞ、とか先生が言って。女の子の並びが少ない、とか言って。
中村:そこなの?!怒るところ。
栗原:並んでる女の子が少ないじゃないかってお前らもっと頑張れって野球部に言ってました。
中村:どうしたらいいんやら。
栗原:王の時知ってるお爺さんがいるのが問題かもしれないけどね。
中村:それも凄い、歴史ですね。
栗原:そういう感じですね。

~選んだ世界~

栗原:で、國學院を卒業されて早稲田大学に入られる訳ですけれど。高校で創作に目覚めた 中村蓉先生 は。
中村:(笑)
栗原:大学ではどんなになっていくんでしょう。
中村:まあでも創作に目覚めたんですけど、忘れるんですよ、それを。その楽しかったことを。楽しかったなって思い出ぐらいにしてるんですけど。
なので、早稲田大学文化構想学部に入ったときは。
栗原:文構なんだ。
中村:1期生です。なので入ってすぐは大人たちに、え?文化放送?とか色々聞かれて。や、 文化構想学部ですって。今だいぶ広がりましたけど、そういう学部が言いづらい感じなんです。入ったときは踊りを作るっていうのを忘れてて。でもバレエは習い事で続けていて。で、 美術サークルに入りました、最初。そこにいた人達が面白かったんです、人間として。だから何をするでもなく入り浸ってたんですけど。1年生の秋頃に、はっと思って。
そういえば私、踊りたい。って思って。で、もう一回新入生歓迎会の資料読み直して、モダンダンスサークルっていう部活があるのを見つけて。トントンっていって行ったら。モダンダンスクラブって綺麗な女の人が踊ってるイメージだったんですけど、そこにいたのは幹事長の男性が一人寝っ転がってて。間違えたって思ったんです。思ったんですけど、その幹事長が文化祭に向けて踊り作ってる最中で。まんまと文化祭に出ることになって。そのまま入部するっていうのが最初の出会いで。
入ってみたら 河合ロンさんとか ダンサーの。 先輩でいらして、山田うんさん の作品に出たりとか、ニブロール で踊ってらしたりする先輩がいたんで。自分もやってみたいな、もっともっとやってみたいなと思って。
在学中に 小野寺修二さん と 近藤良平さん のオーディション受けたり、そこからサークル以外のダンス活動が始まっていくっていう感じで。本当に早稲田の卒業も単位ギリギリでした。
栗原:うんうん。
中村:もう踊りが好きになっちゃってたので、なるべくもうダンス活動がしたいと思って。結構キラキラしてたと思います、当時。ダンスが好きっていうのが一番光を爆ぜてたと思います、私自身。栗原さんは早稲田の大先輩ですよね。
栗原:僕はまあ、そうですねぇ。今、文構難しくなりましたよ。
中村:らしいですね~
栗原:外語大蹴って。文構に行く人がいるみたいですよ
中村:えぇ~本当ですか?
栗原:そういう感じになったんです。ダンスがお仕事になって良かったですね。
中村:そうですね、ギリギリ。なって良かったです。なかなかね、お仕事にならない人の方が多いですからね。
栗原:多いです、うん。お仕事になって、大学から上手く繋がっていったんだなって。
中村:そう、繋がりましたね。ちなみに何で政治経済学部なんでしたっけ?
栗原:僕ですか?僕は元々公務員とかになろうかなって思っていたので、政治学科に行こうかなと。
中村:なかなかあれですよね、お芝居、オペラを観るため、美味しいものを食べるためって聞きましたが。
栗原:植木等 というコメディアンが好きだったので。日本一の5時から男 っていうのが大好きだったので、5時になったらオペラを観に行ってって。そういう生活が送りたかったんですよね。実際に公務員になってみたら全く違ったんですけど。残業ばっかりですけど、そう思っていたので。でもそれは三菱商事さんに行ったらもっともっと仕事の人生だったと思うので、それよりは。
中村:それよりは?
栗原:うん。オペラを観に行くことができたっていう。
中村:そのライフプランが立てるの早いですよね。政治経済を選ぶっていう時点でそこまでビジョン見えてた訳ですもんね。
栗原:中一の時くらいに。
中村:早い。
栗原:僕は多分東大に行くには突出してる部分とダメな部分が激しかったので、多分私立向きだと思って、早稲田にしようって。で、公務員をやりながら、好きなことするのが向いてるんじゃないかなって思いましたね。
中村:なるほど。見通しが 晴れやか。
栗原:でも大体当たってましたね。中一で大体のことは決めていましたので そこで決まっていなかったことはあまりない。
中村:あ~うわぁ。悩みとかあるんですか?
栗原:悩みはいつも悩んでますよ。
中村:え!
栗原:悩んでます。
中村:今は?今あります?
栗原:吉祥寺シアターどうしようかなと思って。
中村:おおお~おっきい。
栗原:はい、悩んでます。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

いかがでしたでしょうか?中村さんのことがかなり詳しく分かるお話だったのではないでしょうか。幼い頃から持っていたしっくりこない感覚、違和感や人への好奇心が作品にも表れているのではないかと思います。紆余曲折しながらも舞踊の世界を選び、輝きを放つ中村蓉さん。是非、観に来ていただきたいと思います。ご来場お待ちしております。

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中村蓉単独公演『fマクベス』

2023年9月22-24日 吉祥寺シアター

出演:中村蓉 池上たっくん 山田暁
山田ゆう子 LINDA 武井琴 大澤寧音 中川友里江

2023年 9月22日19:30
9月23日14:00/18:00
9月24日14:00

詳細はこちら↓
https://www.musashino.or.jp/k_theatre/1002050/1003231/1005067.html

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中村蓉×栗原一浩(吉祥寺シアター支配人)
対談動画も公開中(随時更新中)

その1~好きな食べ物~
https://youtu.be/TqNjPH8yxa8

その2~あなたはどんな人~
https://youtu.be/Hc9T8Hn7X_g

その3~音楽とお芝居とダンス~
https://youtu.be/KoXP_xf5XYU

その4~マクベスという演目~
https://youtu.be/yPmkcO8TEQk

その5~今、マクベスをやること~
https://youtu.be/0nkfNk-lg_E

その6~振付師のクレジット問題~
https://youtu.be/cUX5vARmdBY

その7~演出について~
https://youtu.be/meaH2Ld9poM

番外編1~子どもの頃の話~
https://youtu.be/4hho20vRKEA

番外編2~創作の種~
https://youtu.be/zKyrR0Xh65E

番外編3~選んだ世界~
https://youtu.be/7EDmY7jVCAo

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