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出戻り新人時代の一曲

ダンス・ミュージック・シーンへと出戻り新人し始めた6年前のことを懐かしくよみがえらせる。

スカイの名作『Ain't No Need (要らね)』は、ニュー・ディスコや、ディスコ・エディットと呼ばれる温故知新なミックス音の原型とも呼べる一曲。小刻みにスイングするキャッチーな繰り返しが耳を打つ。

初めて聴いたのは、日本でも根強い人気を誇るDJセオ・パリッシュがプレイしていたとき。ファンク、ソウル、ディスコの各うまみを注入し、ジャンルという垣根を超えたこんな画期的な音楽が78年に生まれていたことに感激。

ボーカルは「要らね〜」と曲の大半で繰り返しているだけ。それ以外のコトバが要らなかったのがカッコいい。それでいて厚みのあるコンテンツを吸収したくらいの感覚に陥る。夢見心地がマヒする程の輪唱でウネリを提唱するのがセオ節なのかと感心。

その後にこの曲と再会したのは、ブルックリンの英雄であるラッパーのノートリアス・B.I.G.や、帝王ことジャズ・トランペッターのマイルス・デイビィスのプロデューサーを務めたイージー・モー・ビーがDJエモスキーとふたりでパーティーをやっていた際。通称モー・ビーに家まで送ってもらう車の中でかけたミックスCDの一曲目。知っているかと聞かれたその時、久しぶりに聴いて惚れ惚れした記憶がある。

原曲の方にはフル・ボーカルが入っていることをその後に知った。最初に耳にしていたのは、ダンス・バージョンだった。通りで簡略化されていたワケだ。でもワタシに合っている。オリジナルには甘く悲しい別れ話の渦中に「執着する必要なんてナ〜シ」とやるせな〜く軽はずみな唄いがシブくてたまらンわ。そんなシャカリキセクシーな曲のシチュエーションとは、様々な対人関係に置き換えることができる。

例えばこうだ。バッド・ボーイ・レコードを仕切っていたパフ・ダディーとの絡みでモー・ビーが被った制作の権利にまつわる苦いエピソードとは周知の事実。そこで彼は膨大なレコードコレクションからステキで無敵な選曲をし、ダンス・フロアでシェアすることに従事した。その方向転換で実際に行動で示したことによって複雑な心境を打破し、ネガティブな出来事にこだわりる必要性を自らゼロにした。

その延長上に私みたいなテンションの高いサンラおばさんが音につられてやってきて、パーティーへ遊びに来れば最後までいつも踊り狂うありさま。互いに持っていた「音楽愛」への共感はけっこう強力だったと思う。いいミュージックを真摯に共有してくれたことに純粋に感動したワタシ。彼のDJだけでなく人間としても好きになった。

だから色んなこと心配するなんて「要らね〜」。特別なふたつの出会いが素晴らしい一曲を教授し、出戻り新人時代の私に改めてそう告げた。

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思い出の曲

48歳から人生の本編スタート。「生きる」記録の断片を書く活動みならず、ポエム、版画、パフォーマンス、ビデオ編集、家政婦業、ねこシッター、モデル、そして新しくDJや巨匠とのコラボ等、トライ&エラーしつつ多動中。応援の方どうぞ宜しくお願いいたします。