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住宅売買において目指すべき「DX×顧客体験」と「電子契約」について

※この記事は、2023年2月27日に住宅新報が主催した「不動産業界のDX戦略セミナー」において「売買取引のDX化で顧客体験向上を目指す―電子契約から始まるデジタル利用促進へ―」というタイトルで僕が講演した内容を纏めたものです。基本的には、内容を文字起こしし、ChatGPTが清書したものです。あんまりこれまで「DXとは」とかGOGENが思う「目指すべきDX」について文字ベースで発信しておらず、良い機会だと思ってNoteにしてみました。
尚、参考として貼っているスライド資料の出来が諸般の事情で良くないんですが、そこは目をつぶってもらえれば幸いです(泣)

はじめに

皆さんこんにちは。私はGOGEN株式会社の代表の和田と申します。元々は日鉄興和不動産の新卒社員としてデベロッパーとして働き、住宅の開発や販売を行ってきました。また、DX室にも所属しており、お客様の体験を向上させることに取り組んできました。今回のテーマについても非常に興味深く感じています。

不動産業界のデジタル活用

不動産業界では、消費者の不満を解消しながら、マーケティングやデジタル化が進んでいると感じています。しかし、不動産取引の性質上、デジタル化が直接的に売上につながることは難しい部分もあります。消費者の体験とDXがどのように関わってくるのかは、解釈が分かれる点かもしれません。

弊社は、不動産売買に特化した電子契約サービス「Release(レリーズ)」を提供しており、顧客体験とDXは非常に重視してサービス開発をしています。私たちはMISSIONとして、「あたらしいやり方で、人々によりよい不動産を」を掲げ、不動産会社と協力してエンドユーザーの価値を向上させたいと考えています。

まずはじめに、不動産×顧客体験におけるDXの現状について振り返りたいと思います。不動産テックのカオスマップを見ると、430のサービスが存在し、不動産×デジタル化・DXのプレイヤーが増えていることが分かります。

私たちの電子契約サービスは、業務支援-契約決済の分野に位置しています。VR活用などの新技術はコロナ禍を背景に拡大しており、業務支援の部分は競争が激しくなっています。しかし、業務支援-契約決済の中でも、顧客体験に関わるものとバックエンドでの業務に関わるものとで差があると感じています。したがって今後、顧客体験に関わる変革が増えていくことで、さらに多くのプレイヤーが参入してくることが予想されます。

DXとは何か?

改めて、DXとは何かというと、さまざまな定義や考え方が存在しますが、一例として経済産業省は「データ技術による新価値創出を実現するために経営や事業革新を行う」と定義しています。現在の企業や産業は、デジタル企業を目指さなければいけない、ということです。

これはつまり価値を創造し、顧客体験を変革し、ビジネスの変革を進める必要があるということです。高い目標かもしれませんが、原理・原則・定義を振り返ると、デジタルトランスフォーメーションとはそういうことなんです。独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が出している今年のDX白書のサブタイトルは、『進み始めた「デジタル」、進まない「トランスフォーメーション」』です。まさにデジタル化だけではDXと言えず、その先を目指す必要があり、まだまだ高い壁だよと言っている。非常に興味深いと思いました。

同じくIPAが出しているDX変革のフェーズに関する考え方がこちらの表です。

DXにおいて、デジタルオプティマイゼーションと呼ばれる業務改革やデジタルトランスフォーメーションという概念には、大きな隔たりがあると考えられます。まさに今日のテーマである「顧客体験」はこの中間に位置する重要な要素であり、顧客体験を入口にして商品の競争力や市場そのもの、さらには社会全体を変えるということに繋がっていくわけです。

したがって、目指すべきは顧客体験だけで終わらないことです。このイメージのところは表の「典型例」を見ると非常にわかりやすいかなと思います。例えば、ネットで音楽を聴くという顧客体験から、コマツやUberEatsなどがもたらした社会変化やインパクトを最終的には目指すことが、日本の成長や競争力強化に繋がると思われます。改めて、顧客体験とDXは大きなテーマなんですよね。

不動産事業においても、「顧客体験×DX」というテーマに対する方針や施策を、大手各社は中期経営計画やDX戦略に盛り込んで取り組み始めています。例えば、三井不動産のDX白書では、顧客ニーズを起点にデジタルとリアルを融合し、不動産をものからサービスへと変革する考えが示されています。
これは、彼らが価値観や競争力を根本から変えたいという思いの表れであると思われます。東急不動産も同様に、ビジネスプロセスを変え、顧客体験を変え、イノベーションへと向かうことでビジネスを再構築しようとしています。

先ほど触れたDXの定義同様、単に顧客体験というところで終わらない、その先にイノベーションがあり、価値観を変える必要がある、どいうことを不動産大手各社も意識をしながら、まさに取り組み始めようとしているというのが足元の現状なんじゃないかなと思います。

住宅売買取引において「DX×顧客体験」とは何か?

まず近年、顧客の価値観が大きく変わり始めていることから目を背けてはいけない状況だと思います。デジタルネイティブな人たちが中心となり、世代交代や所有から賃貸へのシフトなど、さまざまな変化が起こっています。
コロナの影響もあり、消費者が求めるデジタルへのニーズが大きく変わっています。最近は住友不動産さんが全ての広告活動をデジタル化することを発表し、話題になりました。住友さんは数年前から接客をオンライン化し、VRを使ってさらにデジタルマーケティング活動を展開しています。このような顧客への変化に合わせた取り組みが業界でも始まっています。この数年間で、顧客は大きく変わってきているのです。

加えて、売買取引において、避けて通れないトレンドがあると思います。人口減少や少子高齢化が進んでいる中で、流通案件も徐々に減っていくでしょう。また、販売経費もマーケティング領域が強くなりすぎて、投資対効果が厳しくなっていると言われています。このトレンドも、お客様の体験がどうあるべきかを見直す必要がある理由の一つです。

私たちは顧客体験とDXにおいて、目指すべき目標と必要な要素を以下のように考えています。まず、取引自体が価値ある体験となるようにすること。そして、取引を経験したお客様のロイヤリティが向上するように、単に良い体験で終わらせず、イノベーションにつながるような、不動産売買に関する固定概念を変えるチャレンジをしていくことが重要です。

ロイヤリティについて考えるべき重要な要素は、顧客満足度との違いです。顧客満足度を追求する企業は多く、それは間違っていないと思いますが、ロイヤリティとは少し異なります。目指すべきは、お客様との結びつきを強め、解約率や離脱率を減らし、LTVを高めることです。また、反省点を次のお客様に生かすだけでなく、その反省を生んだ目の前のお客様とどう向き合っていくかを考えることが、満足度とロイヤリティの違いです。

お客様のニーズや市場環境が変化する中で、ロイヤリティを高めるお客様を獲得することが重要になってきます。消費者の体験を向上させ、収益を増やす方法、例えばリピーターを増やすなどに取り組むことで、最終的には取引の価値観が変わり、お客様を増やすことにつながると考えています。これがDXの真の意味だと思いますが、同時に足元の顧客体験を変えることに取り組まなければ、変革は生まれないというのもまた事実だというふうに思います。

仮にその取り組みがうまくいって、お客様の価値感を変え、それが競争力や市場での自社のポジショニングまで変えることができれば、より高い到達点として社会を変えることが見えてきます。特に業界の大手プレーヤーや私たちスタートアップは、まさにそうした高い到達点を目指すべきだと思っています。

なぜなら現状多くの人にとって、不動産は一生に一度の買い物であり、ロイヤリティが高まっても価値観を変えなければ再取引やリピーターにはつながらないと思われます。逆に言えば、不動産取引をショッピングのように楽しむことができるようになると、それこそ社会変革レベルの変化です。DXになるわけです。

令和の不動産会社の使命は、顧客が不動産取引自体の体験やサービスに価値を見出すようにし、さらにその行為を再現できる仕掛けをつくることだと思います。単に良かったというだけでなく、再び取引をしたいと思い、また実行できるというイメージが不動産取引や不動産会社に対して生まれないといけません。その結果、新しい不動産取引が生まれ、顧客が再びその会社で取引をしたいと思うようになることで、LTV向上による収益強化にもつながっていくでしょう。

実際にロイヤルティを高め、リピーター化するためには、お客様とのコミュニケーションを大切にし、関係性を築く施策が必要です。取引中から終了後まで一連のフローとして繋がりがなければ、お客様のLTVを高めることは難しいでしょう。

概念的な話をしましたが、大手不動産会社はこういった考え方を取り入れ始めています。私の古巣で恐縮ですが、日鉄興和不動産はマンションのオンライン販売を行っており、まさに消費者の価値観の変化というところに目を留めて今あるべき販売のマンション販売のあり方って何なのかとか、どういうことを消費者に望んでるのかこんなことを掘り下げながら、「消費者がオンライン完結で不動産を買う」価値観をあたらしく生み出しました。
また、野村不動産ソリューションズは「不動産売買取引のデジタル融合」という言葉を掲げており、「不動産のサービス化」の概念も含む非常に象徴的なワードだと思います。
他にも、リバブルのような流通大手が同様の取り組みを行っており、業界全体が変化している兆しが見えてきています。住宅売買領域でも顧客体験を通じて価値観を変え、収益とリピーター化を促進し、ロイヤルティを高めることに取り組んでいるのが業界の現状です。

「DX×顧客体験」で電子契約が果たす役割

そんな中で、不動産電子契約が果たす役割や意味についてお話ししたいと思います。昨年5月に宅建業法が改正され、電子契約が可能になりました。

DXや顧客体験の取り組みを進めるにあたって、各社課題は大きいと思います。経営者や現場の意見が入り交じる中で、いきなり取引自体のあり方を改革することはハードルが高いと感じます。新しい取り組みを始めることで、どれだけすぐに顧客が増えるのかは未知数ですし、業務フローやビジネスモデルを変えることになると、社内の抵抗勢力も増えるでしょう。

また、リピーター獲得を目指すとなるとリードタイムが長いことも、取り組みを難しくする要因でしょう。どんなに頻度が高い顧客でも普通は売買を毎年繰り返すことはほとんどないため、顧客の価値観を変えられたとしても、その効果は先の話になります。そうなると目先の取り組みはなかなか評価されにくかったり、お金が付きにくかったりする。

一方で、将来に向けた種まきとしてまずは目先の顧客体験を変えることも重要です。宅建業法改正による電子契約の解禁はまさにその絶好のチャンスだと僕は考えています。

その理由として、まず一つ目に、電子契約は取引フローの中で必ず通る体験だからです。不動産を購入するお客様は、契約をせずに不動産を買うことはあり得ません。そのため、契約が絶対通るポイントであることを利用し、全てのお客様にデジタル体験を波及させる入り口としては非常に良い取っ掛かりだと思います。
よく大手は「レジデンスクラブ」なるものをつくって、顧客IDをどれだけつくるかみたいなKPIを持っていたりしますが、上手くいっている事例でも50%程度ではないでしょうか?ところが契約をデジタル化すると、理論上は100%を目指すことが可能になるわけです。これってすごいことだと思いませんか?

次に、やはりDXとデータは欠かせない要素であり、不動産取引の中心である売買契約がデータ化されることは、中長期的に大きな価値を生み出すと考えます。またデジタル化によって業務改革が行われ、生産性が向上し、従業員が働きやすくなることは電子契約の特性として有効だと思います。デジタル化として有効というのは、「なんだよDXではないじゃないか」ではなくて、とりあえずはそれでいいんです。
さっきデジタルオプティマイゼーションとトランスフォーメーションの狭間のような話をしましたが、デジタルオプティマイゼーションのような業務改革がされて生産性が上がり、従業員が働きやすくなる施策は経営にも現場にも受けが良いのです。

新しいビジネスや価値を生み出す際に抵抗勢力が出てくることもありますが、電子契約はデジタル化においてとても効果があり、データ化が進み業務効率や経費圧縮にも価値があると思っています。ついでにお客様が通る体験の最重要部分でデジタル化が進み、さらなる飛躍の基礎にもなるということであれば、非常に取り組みやすくなります。顧客体験に向き合うタイミングで、電子契約というのは「取っ掛かりやすいネタ」なんです。

何よりもエンドユーザーも、電子契約を望んでいるという調査結果が出ています。おそらくプロの取引の方々ほど電子化を望んでいると思います。投資用不動産の売買では、既にかなり電子契約が進んでいます。その理由は、リピーターとして取引の体験が理解されているからです。売買契約や不動産取引の内容がわかっているため、お客様は電子契約を望んでいます。アーリーアダプター的な側面もあるかもしれませんが、お客様が高額な費用を払いたくない、紙を持ちたくないというのは当然のことであり、デジタル世代に変わっていく中で、電子契約が望まれるのは間違いがないでしょう。

まだ電子契約に取り組んでいない企業様は、今日を機にぜひ検討を始めていただければと思います。国交省マニュアルへの対応、業務フローの見直し、不動産業務の管理体制、デジタルな顧客接点の整備など、これらの点を押さえておくべきだと思います。勿論、必要であれば弊社がお手伝い可能です。

一つポイントをお話しておくと、電子契約サービスは多く存在しており、どれを選ぶべきか迷われるかもしれません。よく耳にされるような一般的な電子契約サービス(クラウドサインやGMOサインなど)は、価格面のメリットは存在しますが、単に電子で契約を行う機能しか持っていません。一方で弊社を含めた不動産業界特化型電子契約サービスでは、お客様専用ページのようなものが設けられてコミュニケーションが取れるなど、顧客体験において大きな差があると考えています。業務効率化の面でも、業界特化型のサービスは不動産業務のポイントや国交省マニュアルへの対応を抑えて設計されているため、導入や運用の負荷を考えた際には、おすすめだと思います。

また、すでに電子化が進んでいる不動産会社においても、単に契約をデジタル化した、であったり、お客様から「電子契約できないの?」と言われたときにに対応できるよう電子契約を導入することで止まってはいけないと強く訴えたいと思います。電子契約を切り口に、価値ある体験を提供し、顧客ロイヤルティの創造にまで繋げる取り組みを検討できていないとすると、これほどもったいないことはありません。もちろん電子契約が全てであるとは言いませんが、顧客接点を自然にデジタル化できるチャンスはこれまであまりなかったと思うため、電子契約から始めるDX×顧客体験の取り組みは極めて重要だと感じていただければ幸いです。

まとめ

今日は、DX×顧客体験を通じてエンドユーザーの不動産売買体験を向上させ、収益を増やしリピーターを獲得し、市場での競争力を強化していこう、ということをお話ししました。そして電子契約がその入り口・チャンスと捉えていただければ幸いです。顧客体験に取り組むことこそが、この業界の真の変革に繋がっていくと考えています。一方で大きな到達点を描きながら、まずできることに目を向けて進めることが重要だとも思っています。共に頑張っていきましょう。


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