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02話 出会い

結菜がコメントで「こんばんは」と入力した。
優斗はちょうどギターの弾き語りをしているところだった、結奈のアイコンを見た時に歌が詰まってしまったのだ・・・
まさかあの心のアイドルの「結菜さま」が自分の配信にやってくるそんなこと考えたこともなく、今まさにとんでもないことが自分の配信枠で起きているのだった。

優斗は配信の画面を見つめながら、結菜とのコミュニケーションを深めていった。彼女のコメントにはいつも優しさと好奇心が溢れており、それに対する自分の返事や、彼女からの質問に答えることが彼にとって大きな喜びとなっていた。彼は結菜のそれぞれの言葉に対し、心から感動し、彼女とのつながりを深く感じていた。

優斗は、自分の大好きな写真のことを結菜と共有した。写真を撮ることの楽しさや難しさ、それぞれの写真が持つ背景や思いを結菜に語り、結菜が写真に興味を持ってくれることに喜びを感じていた。優斗は結菜に自分の撮った写真を見てもらいたくて、その感想を聞きたくて、写真のコツやアドバイスを教えた。

次第に、優斗は結菜に自分の気持ちを伝えたいと思うようになった。彼女に直接会い、自分の感情を言葉にして彼女に伝えたい、そんな思いが日々強くなっていった。そして、優斗は自分自身が結菜に恋をしていることを認めざるを得なくなった。

しかし、優斗はまだ知らなかった。結菜が彼の配信に来たきっかけを。それは、偶然の出会いだったのか、それとも運命の導きだったのか。その答えは、まだ誰にも分からない。しかし、一つだけ確かなことは、二人の出会いが、何か特別な始まりになるということだった。

ある日、彼はImeNext(イメクスト)に投稿した写真に結菜からのコメントがあることに気が付いた。「この写真、どこで撮ったの?素敵すぎる!」優斗は即座に返信し、「これは昨日の散歩で撮ったんだ。近所の公園なんだよ。」コメントには、微笑ましいやんわりとした表情が込められていた。

優斗と結菜の間のやりとりが続く中で、彼らはお互いの写真や視点に引き寄せられ、徐々に二人の心が交わり始めた。彼らのコミュニケーションは、一枚一枚の写真を通じて深まり、その背後にある視点や感情を理解することで、互いに深い共感を感じていった。

そんな中、優斗は配信の中で結婚の事実を伝えていた。優斗は自身の家庭生活について触れる際、微細ながらも家庭の影を感じさせないような表現を心掛けていた。彼の言葉や態度からは、結菜に対する深い配慮と尊重が感じられた。

その一方で、優斗は自身の感情を正直に伝えることで、結菜との関係をより深く、より親密なものにしようとしていた。優斗のこの態度は、結菜にとっても心地よく、結菜もまた優斗との関係を大切に思うようになっていった。
結菜は彼の言葉に触れ、彼の友達になることを決めた。彼女自身も内なる葛藤を抱えていたが、その中で優斗とのやりとりは心の支えとなっていった。

そして、ある日、優斗は一歩踏み出すことを決意した。「もし良かったら、一緒に写真を撮りに行かない?君と見慣れた場所を、新しい目で見てみたいんだ。」その言葉が、物語に新たな展開をもたらした。結菜は優斗との出会いを大切にし、優斗の誘いに応じた。優斗との交流が、写真という共通の趣味を通して始まったことが、二人の関係に深みを与えていた。

声にはそのトーン、音量、リズム、速度、息遣いといった、言葉以上の情報が含まれている。これらは話者の感情や心理状態を無意識に伝え、聞き手に影響を与える。優斗と結菜は、この声という媒体を通じて、互いの心の奥底に隠された感情や思考を感知していた。

彼らは、声の微妙な変化を捉え、相手の喜びや悲しみ、興奮や落胆を察知し、深い共感を抱いていた。声という直接的な聴覚情報を通じて、互いの理解を深め、感情的なつながりを築いていた。

しかし、その時点では、彼らは声による情報がもたらす距離感の誤認に気づいていなかった。文字という視覚的な情報は、読み手に想像の余地を与え、理解を深めるのに時間を要する。それに対して、声は脳に直接働きかけ、リアルタイムに情感を伝達する。

そのため、彼らは声によるコミュニケーションを通じて、お互いの距離感を近く感じてしまっていた。しかしながら、実際には彼らの間にはまだ理解しきれない部分が存在し、その距離感の誤認が後に予期しない課題を生むこととなる。

(つづく)



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