見出し画像

ウイルスが見せる事を考えてみた。【HTLV-1キャリアでもある私】回想・・26

どうしても上手くまとまらないが、HTLV-1ウイルスに向き合い、感じた事を別の視点から書いてみる。

私は、縄文時代に関心がある。生きるのに厳しい古代なんだけれど、そんな時代にたくさんのものを生み出し、発掘された遺物は現代に紹介されている。北海道の遺跡では、ポリオに罹患した人の骨が見つかっていて、見捨てられることなく何年も介護されていたという説を読んだことがある。いろんな残された形からは、縄文時代の人々の精神性の豊かさが伝えられている。
HTLV-1は、人が大陸からの移動の頃、おそらく縄文時代の頃日本に入ってきたウイルスであるという。これまでにない視点で縄文時代、そして、縄文の血が濃いと言われている故郷の沖縄が、ぐーんと私の中で近くなった。祖先の事を調べてみよう。何故かワクワクする気持ちは生まれてくる。

HTLV-1ウイルスが無くなることを望んでいる。ワクチンやお薬の開発は進んで欲しいと願う。数十年も遺伝子に入り込み成りをひそめ、次の宿主へと続いてゆくウイルス。宿主が弱ったところで本領発揮なんて、本当にタチの悪い奴だ。一方で不思議な感覚を覚える。縄文時代から・・あるいはそれ以前の何億年前から続いてきた いのちの連なりを、HTLV-1に向き合う事で、私のなかで感じられる時がある。せいぜい3世代前しか顔は知らない。何世代も前、何世代も前‥と考えてゆくと、姿は全然似てこないのでないか。それなのに、このウイルスは脈々と受け継がれてきたのである。HTLV-1ウイルスが見せる不思議である。

辛かった気持ちも整理してみた。
「HTLV-1ウイルスをなくす・・」と考えると、当初私はきつい表現に感じられ「HTLV-1に感染した人間」と、否定されてるような暗い気持になっていた。自身を否定する気持ちがうまれていた。
次世代に感染させた私は、生まれたことが間違っていたのか。若い時なら「私なんか、生まれなければよかったんでしょ!!」と暴れたのかもしれないが、そんな時代はとうに過ぎた。既に立派におばちゃんでもある。暴れる事は出来ないが、冷静を保つのに、気持ちが落ち着くまでに、少し時間はかかった。  ボーっとして指を切ってしまった。流れてくる血液を見て「あー、この血が・・汚れているんだ。私は汚れているんだ。」と、自分の体を、ズタズタにしたくもなった。
辛いことが続いてばかりだった。HTLV-1キャリアとわかるほんの数か月前、私は、自身の複雑な生い立ちについて、はっきりと知る事となる。ギリギリの所で、私はこの世に生を受けた。母が私を堕胎する決心が出来なかったから。そんなことがわかり、気持ちが落ち着く間もなく流行ウイルスで世の中おかしくなってゆき、同時にHTLV-1の問題も降ってきたかのようであった。本当にシンドクてたまらなかった。

自分が生まれた事を否定し始めると、夫に出会ったことや娘や息子が生まれてきてくれた事さえ、否定することにも繋がっていった。始まりが間違いであったとしたら、と虚しくなった。生きていく意味がない。全てを否定することなんだ。目の前に見えていた輝く景色も、気持ちよく肌で感じる優しい風、子どもが生まれてきたときのこと・・・これまで生きるなか素晴らしいと感じたこと、全てが間違いになってくる。何て愚かなんだと・・少しでも、心が曇ったことが恥ずかしくなった。泣けてきた。

かつて日本では1800年代のコレラ流行時、コレラに罹患した人を、人目に触れぬよう、家族が隠していたという話を読んだことがある。コレラ患者を警察が強制収容しており、コレラ一揆も起こり、患者を助けようとする医師が殺害されるという事件もあったという。(『ドキュメント 感染症利権』ちくま新書 山岡淳一郎著 より) 他の病でも暗い歴史があり、最近の流行ウイルスの件でも、同調圧力が蔓延したのである。いつまでそんなことを繰り返すのだろうか。差別・偏見を持って他人を虐めた人は、いつの日か気付いてくれるのだろうか。私自身、差別偏見側に立っていないだろうか。国の方向性によって、差別・偏見を駆り立てる状況は、本当に恐ろしい。

よくよく考えると、「HTLV-1ウイルスをなくす・・」ということは、HTLV-1ウイルス感染者になってしまったことを否定することでなく、ワクチン・治療薬の開発を強く望むということであり、後に続いて生きてゆく方々のために・・これ以上感染の鎖を断ち切るという願いが込められているのだと、理解できるようになった。
つまり、発病者・キャリアが「HTLV-1ウイルス」そのものでは、ないのだ。単純な様だが、結構考えた点である。

そして気づいたことが、またあった。なぜ偏見や差別を受けるのか。当事者は怯えなければいけないのか。 正しい知識を持つという事。誤解を解くため、正しい知識をより多くの方に知って頂く事から拓けてゆくということ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?