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いきすぎてくれ

恋愛感情のないいきすぎた友情が好きだ。

これは以前から考えていること。私は男女どちらも含むアイドルや俳優、お笑い芸人、ユーチューバーなどのたぐいの人々がグループやコンビで仲良くしているのを眺めるのを趣味としている。

特に、例えばアイドルのメンバー同士がすごく仲良しだったり、お笑いコンビの片割れが相方をすごくリスペクトしていたり、バンドのメンバー同士が幼馴染だったり、ドラマの俳優同士がプライベートでも飲み友達だったり、そういうエピソードを聞くのが大好きだ。ラジオや雑誌のインタビューなんかでそういうのを見かけると、とっても嬉しい。にこにこしてしまう。

その中には、「それって友達同士としてはいきすぎているというか、一般的な感覚で言えば、恋愛感情を向けている相手にとる行動なのではないでしょうか……」というものもけっこうある。

もちろん、彼らや彼女らはそういう関係ではない(いや関係の可能性もあるけど、それはちょっと後述)。アイドルや芸人なんかはフツーの教室でできる友人や会社の同僚よりは一緒にいる時間が長かったり一蓮托生だったり本音でぶつからざるを得ない機会が多かったりするだろうから、そのへんが巷で見る関係性よりは濃くなるのは当たり前だと思う。

ただ、それってもし相手が恋愛対象のカテゴリの人間だったらおおっぴらに話しますかって話。

例えば、ピンだったころに相方の才能に惚れこんで、毎日電話をかけて深夜まで居酒屋で粘って口説き落としてコンビ組んだんですよ、貧乏だったころは一緒に住んで、今はもう別に住んでるんですけど時々寂しくなって泊まりに行っちゃうんですよね、一見強面なんですけど、案外甘いもの好きでパフェとか頼むんです、そういうところ可愛いですよね、あっ最初に賞取ったときに記念でお揃いでこのキーホルダー買ったんです。

っていう温度感の話、話し手にとって相手が恋愛対象でなく、聞き手もそこが恋愛関係に陥ることはないであろう想定しているという状態じゃないとオープンにならない気がするんですよね。

これ、「聞き手が」ってほうが重要で。いくら話し手が相手に持っているのは恋愛感情ではないと思っていたところで、聞き手の方が恋愛関係に陥る可能性をそこに見出している状況では表に出てきづらい話になっちゃう。

そしてそれは、現代の日本では異性愛を基準にして考えられることが多いのではないかと思う。つまり、前述のようなエピソードを同性間でやっていると、それは「コンビ愛」として観測され、公然と扱っていい話題だとされる。異性間だと「?」がつくので世に出てきにくい。

コンビを夫婦に例えるのはよくある。女房役、などという言葉もある。しかし、本当に「女房」になる可能性のある人には使用しない表現だろう。なりえないと思われているからそう呼んでもいいとされているのだ。

相手に対して持っているのが友情でも恋愛感情でも、それは性別というカテゴリとはあまり関係がない。同性にでも恋愛感情は持ちうるし、異性でも恋愛感情なく関係を築くことはできる。1on1それぞれの話だ。だから例えば、女性を恋愛対象とする男性が、その中の特に恋愛感情を持っていない個体に対して「なんかつえ~気持ち」を持っていることはあるだろうし、それを公開してもいいはずだ。

けれど現状、そこの「恋愛感情ではないがなんかつえ~結びつき」をおおっぴらにしてもよいかということになると、そう簡単にはいかないのではないか。急にカテゴリの話が持ち出される気がする。

逆に、例えば女性を恋愛対象とする女性が、恋愛感情を向けている特定の女性に対して、傍から見ても恋愛的な行動として見えることをしたとしても、おおっぴらにすることを許されているような雰囲気はある気がする。ライブ中に同性アイドル同士がキスをしても歓声で済むが、男女だったらそうはいかない。そこに本物の恋愛感情の有無は関係ない。ただカテゴリの差があるだけだ。

これは興味深いことだなと思う。

それが良い、悪いというより、現状がそうであって、そういう「恋愛感情ではないがなんかつえ~結びつき」好きとして自覚的ではあったほうがいいかなと思った次第。強いて何か主張するなら、男女間の「なんかつえ~結びつき」も俺は見たいよ、という話。


今日はここまで。ありがとうございました。

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