【えいごコラム(9)】インターンとエクスターン
2月から3月にかけて実施される本学のニュージーランド研修は、後半の2週間でインターンシップ(職業研修)が行われるのが特徴です。
今年の研修に参加した学生も、動物ふれあいパークで子どもたちの相手をしたり、中高一貫校で日本語の授業の補助をしたりと、さまざまな研修を体験したようです。
しかしこのインターンシップ(internship)は考えてみれば妙な言葉です。
これは intern の「研修生・実習生」という意味から派生しているわけですが、 intern は internal とほぼ同じように使われることもありますし、本来「内側」という意味であるはずです。
なぜこれが研修生や実習生を表すのでしょう。
ODE で intern を引くと動詞の項に次のように出ています。
動詞としての intern は、戦争などの際に敵を捕虜として閉じ込めることなのです。
次のような例文があります。
intern が人を何かの「中に入れる」という意味なのは納得いきますよね。
intern の対義語は extern です。 ODE は名詞の extern を次のように説明しています。
この order は「修道会・教団」のことで、 nun は修道女です。
“strictly enclosed order of nuns” は厳格に閉鎖された、つまり部外者の立ち入りも内部の者の外出も許さない女子修道会、といった意味になります。
extern は、その閉鎖環境にあって例外的に外出を許され、 outside errands つまり対外的な用件に従事する修道女のことで、「渉外修道女」と訳されることもあります。
extern がこういう意味をもつなら、対義語である intern も修道女を表すことがあるのではないかと私は考えました。
いろいろ探し回ったあげく、カトリックの女子修道会、クララ会に関する記事に関係ありそうな記述を見つけました。
この記事では、修道女を志す女性は修行の中で “extern nun” になるか “ intern nun” になるか選択すると記されています。
extern nun は上で述べたように対外的なことにも携わる修道女です。
それに対して intern nun は次のように説明されています。
intern nun は一生修道院の外に出られないだけでなく、ラジオやテレビ、パソコンといった情報媒体に触れることも許されません。
彼女らが世間の出来事を知るのは、 “prayer requests” 、つまり、地震や航空機事故などの犠牲者のために祈ってくれという信者の願いを通してのみなのです。
私は、今日の intern は、このような extern と intern との対比を通して、ある組織・団体に専従的に帰属する者、という意味の語として形成されてきたのだろうと思っています。
ここから先は想像にすぎませんが、それが転じて、本来部外者であるはずなのに、ある組織の業務に専従的に携わるようになった者、つまり研修生や実習生を表すようになったのではないでしょうか。
ご存じと思いますが、この意味での intern はまず「研修医」を指すために使われました。
しかし(英語辞典の親玉) OED は、主にアメリカで他の職種に転用されるようになったとして、次のように説明しています。
OED によれば、医師以外の職業に intern が使われたことがうかがえる最初の例は、レディ・バード・ジョンソンによる『大統領夫人日記:ホワイトハウスの5年間』(1967)の次のような記述です。
おそらく1960年代のアメリカで、教育実習生などさまざまな職種の研修生・実習生を intern と呼ぶようになり、そこから研修・実習を意味する internship が生まれたのではないでしょうか。
案外新しいんですね。
ところで、職業研修にはインターンシップだけでなくエクスターンシップもあるのです。
この両者がどう違うのか、自分に向いているのはどちらか・・・それはいろいろなサイトに出ていますので、ぜひ調べてみて下さい。
(N. Hishida)
【引用文献】
“NEWS FEATURE: Nuns, ‘Knights’ Live Simple Lifestyle at Angelica Shrine.” Region News Service 2000.09.19.: https://religionnews.com/2000/09/19/news-feature-nuns-knights-live-simple-lifestyle-at-angelica-shrine/