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1992年の裕木奈江(最強伝説④)〜番外編とりあえず、ニューヨーク。

柄本佑は歯を磨いてスッキリした、まさに寝る直前にタバコを一本だけ吸うのが至福だそうだ。10年以上のルーティンだというから本気なんだなあと感心してしまった。

石ノ森章太郎は寝る前にビデオ2本、本を2冊読むことを日課としてしいた(本数うろ覚え!)のを当時少年サンデーに連載されていた「おれのまんが道」で知り、さっそくマネしようとしたのが20のオレ。ちなみに「おれのまんが道」は出版社の枠を越えたインタビュー連載。特に原秀則の章(「冬物語」でヤングサンデーを牽引)は泣けるので単行本、古本屋で見つけたらマストバイおすすめいたします。

石ノ森センセの本数はムリだけど映画(Net flixドラマ含む)1本、本1冊(読みかけ可)はルーティン続いている。朝ドラ録画チェックで終わる日もあるし、本も10ページぐらいめくって、どうにも集中できなくなって寝てしまう日もある。それでも触れる、続けるが大事かなと思ってるわけです。

だから今、旅行先とか便利ですよ。タブレットだけで済むし、せいぜい本1冊持ってくだけ。あとはKindleとネトフリで済んだもんなあ。昔はひどかった。ちょっとした旅や出張でも5〜6冊持っていったもんな。さらに旅先の古本屋で買い足したり空港やら新幹線の駅やらでプラスオン。海外で紀伊國屋書店とか見つけて狂喜乱舞し、そこで買わなくてもよい文庫本買って安心ってもはや何をしに来てるんだって話ですよ。ちなみに初めてニューヨークに行ったその日に無性に「極東セレナーデ」(小林信彦著)を読みたくなり旅行初日に買いました。97年、夏の終わりのこと。ブロードウェイ裏手の安ホテルで見知らぬ外国の皆さまと同部屋。六畳ぐらいのスペースの部屋に2段ベッドがふたつ。そのうちの1つのベッドスペースがボクのもの。バス、トイレは共同。窓際スペースで、街の薄明りが枕元に入ってくる。そんな環境でボクは「極東セレナーデ」の何度目かの再読の旅に入っていった。

なんで「極東セレナーデ」かというと主人公、朝倉利奈が物語の前半戦で滞在した街だから。貧乏なフリーター、朝倉は大学を卒業したはいいけれど希望した職につけずふらふらする日々。サブカルチャーの巣窟と化したエロ本系の出版社でバイトをしたりするがコスト削減でリストラになったり。そんな折にひょんなことからおいしい話が舞い込み、急遽単身ニューヨークへ向かうことになる。だがそれは彼女にとって思いもよらぬアイドルビジネスへ足を踏み入れる一歩だった、、、て話だが、この小説が描かれた時代、たしかにニューヨーク行きって行動はステイタスだった。

佐野元春はAL「SOMEDAY」をヒットさせベストアルバム「No Damage」を置き土産に単身ニューヨークへ渡り、最新のビートに身を任せて「Visitors」を制作、ぬるま湯だった邦楽シーンに波紋を投げた。

尾崎豊は10代のカリスマに一気に君臨した反動から逃げるようにニューヨークに辿り着く。なんか現地で佐野元春か浜田省吾と飯を食ったとかいう記事を読んだ気がするけどまったく覚えてない。

とりあえず、ニューヨーク。山下久美子でそんな曲(近田春夫作品)ありましたけど、気分としてのニューヨーク。スイッチ切り替えにうってつけの街、ニューヨーク。困ったら、ニューヨーク。そういう空気感が蔓延している時代ってのがあったって話なんですけどね。あ、少々時期はあとになるけど小沢健二が97年に日本を離れた際に向かったのもニューヨークですよね、たしか。

ちなみに「極東セレナーデ」を原作としてドラマ化された「ウーマンドリーム」、こちらの朝倉さんが行くのはローマだった。オードリー・ヘップバーン伝説を地でいく発想だけど実に正しい選択。そしてそこで初めて流れる裕木奈江デビュー曲「泣いてないってば」。

実はずーっと長い間疑問に思っていた。なんでデビュー曲がコレなんだと。フランソワ・アルディ、もしくはアグネス・チャン初期を彷彿とさせるサウンドプロダクションは明らかに時代と逆行してると思った。おまけに当時部屋のテレビは「壊れかけのRadio」状態で電波受信状況最悪。つまり製作者側の意図を正しく受け取れる環境じゃなかった。「拗ねて、ごめん」じゃなくまさに「バカで、ごめん」だ。あらためて観てデビュー曲「泣いてないってば」の選択、実に正しい。筒美京平の上品なメロディ。ヨーロッパって環境がより魅力を増幅してくれている。でもニューヨーク設定での「ウーマンドリーム」も観たかったですけどね。

旅をすることがアウェイになってしまってはや1年。はやくもろもろ収束して欲しいですよね。すぐにどうこう落ち着くのは難しいんだろうけど、在宅エンタテイメントも限界がありますよね。さすがに飽きてきた感あり。

昨夜もネトフリサーフィン。「なんかねえかなあ」と「トッケビ」途中まで観て気分にそぐわず。タイミング的にぐっと引っ張って欲しい磁力に欠けるんですよ。出会いは「磁石」(byウーマンドリーム瀬木ちゃん)ですから。

とはいえ、この「なんかねえかなあ」は嫌な気分ではない。あたらしい感動を探すのって実は1番ワクワクしないすか?

だいぶ前に松任谷由実さんのインタビューをすることになった。そのときルーティンの話になりボクが「毎日本屋に行かないと気分悪くなるんです」と言った。それに対しての発言がさすがユーミンだった。

「いいじゃん!本屋は知識の森、ワクワクの森だからね」

本屋もずいぶん減ってしまった。大好きだった渋谷の山下書店、神保町のコミック高岡も跡形もない。毎日本屋に行くこともなくなり、今じゃ週1〜2回。それでもワクワクをめぐる冒険をやめるわけにはいかない。

さて、今日も出かけよう(近所だけど)。





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