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「翻る(ひるがえる)」という動詞によるトランスフォーメーション
「役者は数々の他人の人生を生きるが、訳者は他者のことばを生きる」。翻訳家の鴻巣友希子さんの言葉だ。あらためて「翻訳」とはうまく翻訳したもの。続けて、鴻巣さんは自分の実体験を詩的にわかりやすく語る。ヴァージニア・ウルフの『灯台へ』の翻訳作業エピソードが秀逸だ。引用してみる。中心人物が編み物をしている場面。「彼女が編み目に針をひとつくぐらせる間にも、内面では膨大な出来事が起こる。空想・回想・願望。心の外と内、過去や現在や未来が継ぎ目なしにつながっている。スコットランドの海を前に、コンスタンティノープルの古都が拡がり、さらに昔の哲学者がそこを歩く。意識の流れを追って視点が移り変わる度に、訳者もそれについて時空を駆け巡る。どこまで深く、果てしがないのだろう、意識の海というのは!自分だけではとうていたどり着けない深淵や岩陰へ、訳者はウルフの文章につかまって潜っていった」。さぁ、変身してみよう。「翻る」という動詞で。
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