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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
503.蜥蜴

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 善悪の指名を受けた結城昭は、巨大フィギュアの脇に置いていたビジネスバックからタブレットを取り出して、周囲の面々を見回してから言葉を発したのである。

「言葉で言うより見て貰った方が良いでしょう、リピート再生にしてありますので、順に見て下さい」

 そう言うと、自分の左隣に座っていた丹波晃にタブレットを渡し、受け取った丹波晃は近くにいたメンバーと動画を視聴してから少し離れていた幸福光影に回した。

「ご覧になれば分かる通り、動画の中の爬虫類、フトアゴヒゲトカゲは今回善悪さんから特注の依頼を頂いた際に、デティールの作り込みの参考にする為に悠亜が購入した生体です…… 動画の最後の辺りで口から炎の様な物を吐いている事が確認できるでしょうか? まるで物語に登場するドラゴンのファイアブレスみたいじゃないですか? 無論、コンピュータグラフィックや合成では無いですよ、こんな事、現実だとは思えないでしょう?」

 そこまで言うとタブレットが順調に回っている事を確認した結城昭は、胸のポケットから小ぶりのビニール袋を取り出して丹波晃に渡して言葉を続けたのである。

「こちらも皆さんでご覧になって下さい、これは悠亜が以前から飼育していたトカゲの鱗になります」

 丹波晃が渡された袋の中を見ると、十数枚の剥離された鱗が入れられているのが分かった。

 医者である丹波晃は自分なりの分析を口にした。

「随分カラフルなトカゲのようですね、それにしてもこんなに剝離してしまったんじゃそのトカゲの健康状態が心配だよ…… 次の脱皮までは気が気じゃ無いね、トカゲの鱗は脱皮以外では再生しないからさ」

 この言葉には爬虫類好きなら容易たやすく同意できるだろう。

 事実、コユキの下の妹、リエや母ミチエがコクコクと頷いている。

 結城昭は首を左右に振りながら丹波晃の言葉に答えて言った。

「いや、実は再生してるんですよ、鱗…… おかしいでしょう? それにその色とりどりの鱗、一匹のアルマジロトカゲの物なんですよ、信じられますか?」

「えっ? こんなカラフルな、五色位あるじゃないか…… 赤、青、黄色、銀、白…… 一匹、単体でこんな……」

 思わず言葉を失う丹波晃に続いて結城昭の右隣に居た吹木悠亜が声を出した。

「元は淡い黄色と褐色のツートーンだったんですよ! それがここ数週間で全身が鮮やかな鱗に変わってしまって…… 一日に剥離する鱗が今見て頂いている物なんです! それに…… 大きくなっているんです、脱皮もしていないのに…… それにその子だけじゃなく別に飼っているオオヨロイトカゲの色も二日位前から鱗が金色になり始めていて…… 剥離が……」

「こんな風にか?」

 金色の三つ首ドラゴンフィギュアのアジ・ダハーカが、自分の鱗をバリバリと剥がして落としてから、瞬時に再生させて見せながら聞いた。

 金色の小さな鱗を拾い上げた吹木悠亜は無言でアジ・ダハーカに頷いて見せた。

「そうか…… チッ、ヤバいな」

 アジ・ダハーカは腕を組んで目を瞑り考え込んでしまっていたがやや置いてから口にした。

「金色の方、オオヨロイトカゲだったか、そいつはむしろ悪魔化していると思います、何かを切欠きっかけに魔力の回し方を知って、そのせいで賢くなっているのでしょうね、そろそろ話し始めたりするんじゃないですか?」

 吹木悠亜が驚いたように叫んだ。

「話すんですか! キャアーどうしよう昭! あの子が話すんだってよー!」

 何故だか嬉しそうな悠亜をたしなめる様にアスタロトが言う。

「悠亜と言ったか、会話出来た所で内容がお前の希望している物とは限らんぞ? むしろ逆かもしれん、考えてもみよ、命はどれも気高くそれぞれが役目を担っているのだぞ? 上位だと勝手に思い込んでいる人間に愛玩の道具として飼われる事を良しとしていない事位想像できるのではないか? それともお前は誰かに飼われたいとでも思っているのかな? 狭いゲージの中で、どうだ?」

「は、はい、思いません……」

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