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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
387.瓜子姫の生皮

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 さて、話を戻して善悪とコユキが、リエとリョウコから出資を打ち切られそうになった原因のアーティファクトを見て行く事としようではないか!

 この期間、十日の間に手に入れた聖遺物は合わせて四つであった。

 猿蟹合戦の蟹の聖遺物、『柿のタネ』
 瓜子姫うりこひめ天邪鬼あまのじゃくの聖遺物、『瓜子姫の生皮』
 姥捨て山のせがれの聖遺物、『おっ母の背負子しょいこ

 そして、最初にゲットした柿のタネと同じ現場で偶然拾った使用方法不明のお菓子、『美味しそうな柿の種ピーナッツ入り(小袋)』の四点である。

 列挙しただけでポンコツ風味が漂ってくるが、仕方ないのでご説明する事としよう。

 まず、使えないアーティファクト代表としては間違いなく『瓜子姫の生皮』だろう。
 瓜子姫の生皮は想像通り、装備すると天邪鬼になってしまうのである。
 天邪鬼、外見は現代風に言えばそうゴブリンである。
 緑色の肌を持ち、コソコソと暗がりを隠れ住む、その癖、名誉欲とか出世欲が異様に強い化け物である。

 そいつが瓜子姫様を騙して木に吊るし、生きたまま皮を剥いだという、非常にハートウォームな場面展開で物語は綴られている。

 生き血滴るその皮を被る事で姫に化けた天邪鬼が、このままでは身分の高い人に輿入れこしいれしてしまう! どうするんだ? ヒーローは! 早く出てきてっ!

 緊迫するオーディエンスを嘲笑うあざわらう様に原作者は言うのであった、

『あ? ゴメン、この話にヒーローとか出てこねぇから、ゴメだけど~』

『エエェエっ~!』

 そう、このお話には颯爽さっそうと現れ、問題解決してくれる王子様や名も無き英雄は登場してこないのである。

 んじゃあ、誰が悪い悪い最悪なグロ野郎、天邪鬼を懲らしめるのか?

 なんとびっくり!
 答えは意外な事に、殺されてしまった瓜子姫自身なのである!

 皮を剥がれた瓜子姫は、哀れ木に吊るされたまま死んでしまうのであった、ここまでは、悲劇とは言え普通である。
 日本の昔話としては、結構上質なファンタジーと言われる所以ゆえんはこの後なのだ。

 身分も持たない自分を見初めて求婚してくれた尊いたっといお方が、このままでは邪悪な天邪鬼に騙されてしまう!

 そう思った瓜子姫のは、枝に吊るされ朽ちた我身に唯一残った自分の骨を、最後の力(魔力?)を振り絞り、小鳥に変化させて、天邪鬼の企みを嫁入り行列の人々に伝え、天邪鬼の邪悪な計画を阻止することに成功するのであった。

 なんて、心温まるヒューマンドラマであろうか……
 胸がすく思いである、良かった良かった。

 しかし、この『瓜子姫の生皮』、最後に使っていたのが天邪鬼だからだろうか?
 装備した効果が、『天邪鬼な事が言えるようになる』であったのだ。

 もうお分かりであろう、我らがコユキは一部、とは言え結構大勢の人々から、『ジャック・ザ・アマー』と呼ばれる程のスーパーア・マ・ノ・ジ・ャ・クである。
 つまり、コユキの下位互換、一切使えないアイテムだったのであった、もう本当にがっかりである。

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拙作をお読みいただきありがとうございました!


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