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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
262.全くやれやれだぜ、やれやれ全く

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 益々悩みこんで黙ってしまったモラクスに代わり、最初にわけワカメ発言をしたアスタロトが偉そうに言った。

「そんなに難しい話じゃない、リヅパの場合は単純に炭素14にPbの同位体であるPb202を少しづつ反応させて『命』の欠損を無くしただけだ、まあ、平たく言ってみれば生まれ変わりのような物だが、この時代、何代目かは分からないがトシ子が宿してくれて、我は本当に嬉しくて仕方が無いのだ。 元々鉛に耐性を持った『命』だからな、サパを飲んでも悪影響は受けないと確信していたのだよ」

「ねえ、サウル様、あの、アタシは、えっと…… リヅパ? トシ子? あの、どちらでしょうか?」

 トシ子婆ちゃん、いや、見た目の変化から言えばリヅパの方だろうか?
 おずおずと質問したのだが、アスタロトは堂々と答えるのである。

「うむ、そなたはごう事無くトシ子である、リヅパの記憶を持っているだけの今、現在を生きるコユキの祖母、トシ子だ! 因みちなみに我も仮初かりそめの姿であったサウルではなく、オリジナルの大魔王アスタロトであるぞ♪ これからはアスタと呼んでくれれば良い! 分かったか? トシ子よ?」

「うん、アタイは今までどおりトシ子で良いのね、分かったよダーリン、アスタ様♪」

 どうやらトシ子で統一することで双方納得したようだ、ではコユキと善悪も何となく分かった事にするしかない、化学とか物理とか理系じゃない、それどころか文系も怪しい、オタク系の二人には土台無理な話なのであるのだから。

 だからこそであろう、オタク界隈代表の善悪が声を大にして聞いたのであった。

「んじゃぁ、トシ子さんはトシ子さんで良いとして、結局何の話だったのでござる? 脱線しすぎて分からなくなっちゃったのでござるぅ! とっ! 取り合えずっ!」

 叫んだ後、ふぅふぅ荒い息を吐きながら善悪は、本当に本当に聞きたかった出来事に初めて言及するのであった。

「フーフー、ま、それはそれとして、ゴホン、あー、今日って、その、お見合いだったのでござるか? 聞いて無いでござるよ、コユキちゃん! そ、それで相手の男、どんな感じだったのでござるっ? んっ! んんっ! おいっ! 早く教えろよっ! で、ござる!」

 いつに無く押しが強すぎる様だった、善悪個人にとって随分大事な話しだったようである、良くここまで我慢できたよね、偉いと思うよ。

「えっ? お見合い相手って丹波タンバアキラ君のことぉ? 何で善悪が気にすんのぉ?」

 鈍いババアだっ! いい加減分かれよっ!

「いやぁ、何となく…… でござるけど…… も、もう君呼びなの、か……」

 こいつもこいつでオドオドしっぱなしで、イライラする事この上ないなっ!
 はっきり言えば良いのに、全くやれやれだぜ、やれやれ全くっ…… ふぅ……

 いつもここから進まないんだからな、そんな風に思ってしまった私、観察者の予想は裏切られた。
 トシ子婆ちゃんがここでぶっこんで来たのであった!

「アタイらと一緒にアンタも結婚したら良いじゃん! コユキ! そうしなさいよっ!」

 自分が禁忌を犯した途端にこの掌返し、大したものである。
 馬鹿っぽいアスタも意を併せて言うのであった。

「おっ! それ良いじゃないか? そうしようぜっ! コユキ、善悪! それで良いんじゃないかぁっ! 最高だなっ!」

 顔を真っ赤に染めながらコユキが答えた。

「ばっ、馬鹿言ってんじゃないわよっ! 無責任な発言は禁止、禁止ぃぃなのよっ! だっ、第一善悪に迷惑掛けるでしょうがぁぁぁ!」

 阿舎利あじゃり善悪は小さく呟くのであった。

「えっ、僕チンは、その、えっと、良いけどね……」

 残念ながらその小声の呟きはコユキには届いていなかった、残念至極、くぅぅ!

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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