【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
第二部 五章 続メダカの王様
768.死の種(挿絵あり)
唖然とし、挨拶も忘れたままで居たナッキたちに話し掛けたのは長老の方である。
「呼び付けて悪かったのぉ、ナッキ王とやら、ワシがこの沼を預かる長老じゃ」
ナッキはハッとした後、慌てて返す。
「ご、ご挨拶します! 僕はナッキ、こっちはヒット、それにティガ、二匹とも友達です、どうぞよろしく」
ナッキが頭を下げるのに合わせて自分も会釈するヒット、ティガはジーっと長老の巨体を見つめ続けている。
やや挑戦的な視線を気にするでもなく長老はナッキに話しかける。
「ふむ、外の池にはモロコとカエル、後はメダカ達が住んでいた筈じゃが、見た所、ナッキ王とヒット殿はギンブナ、それにティガとやらはウグイのようじゃが? そなたらが住んでいると言う事は前から居た者達は一体どうなったのじゃ? 殺したのかの?」
バッと頭を上げたナッキは、露骨に嫌そうな表情を浮かべて言う。
「そんな事しないよ! 最初僕が『メダカの王様』を頼まれて、その後モロコとカエルも仲間になったんだよ! 今はギンブナとウグイも加わって仲良く住んでるんだからね! 僕は、いいや僕たちは平和主義者なんだからね、基本的に」
「ほう、そりゃ立派な事じゃがのう、相手から攻め込まれでもしたらそうも言って居れんじゃろうて、もしそんな事になったら戦うんじゃろ? 殺されない為の努力は出来るかのう?」
ナッキが即答だ。
「当然だよ、戦いは本意じゃないけど仲間たちを守る為だったらどんな事だって厭わないよ! こう見えても、王様なんだからね!」
「ああ、その通りだナッキ! それに俺たちの武器は仲間の多さや体の大きさだけじゃない! 他にも色々――――」
「ヒットっ! そこまでで良い、それ以上言うな! さて…… 長老さんとやら、それを聞いてどうするってんだぁ? 目的は何なんだ、聞かせてくれよ」
いつになくシリアスで迫力ある話し方で睨みつけるティガに答える長老は変わらず暢気な感じである。
「目的か? そりゃお主らが攻め込まれた時、生き残る努力を惜しまないかどうか、それを聞きたかっただけじゃがのぅ」
ティガはこれまで見せた事ないほどの殺気を纏いながら、酷く冷たい声で言う。
「それはつまり、あんた等が俺たちの『美しヶ池』に宣戦布告する、そう取って良いんだな?」
長老は目を瞬かせた後、心底あきれ返った様子で返す。
「儂等が? そんな事する訳無いじゃろうがあいつ等じゃ有るまいし…… もしその気なら一々会ったりせずに不意打ちで夜討ちじゃよ、その方が楽じゃからな! ティガとか言ったのう、お主って馬鹿じゃのう~」
「くっ」
ティガは悔しそうにしていたが、ナッキは長老の言葉に含まれた具体的な危機に繋がる言葉を聞き逃しては居なかった。
「長老さん、あいつ等って一体誰なんですか? そいつ等が僕たちの住む『美しヶ池』に攻め込んでくるんですよね、教えてください」
長老はナッキの言葉に満足そうに頷きながら答える。
「うむ、覚悟が込められた良い言葉じゃ、勿論、教えてやるぞい、その為に来て貰ったんじゃからのう、だが正確に言えば、攻め込んでくる、では無くて、攻め込まれている、なんじゃよナッキ王」
「えっ? もう攻められてんの僕たち! それって、えーっとぉ……」
「気付いて居らんかった様じゃのぉ、こう言えばどうじゃろう、『残忍な捕食者は空から死の種を蒔く』どうじゃ? それに思い当たる事が無いんじゃったらこう言うのもあるぞい、『耳を澄ませ、死は空から来る、ヤツラの羽音を聞き逃すな』とかな」
ナッキは出かける前の御前会議でのメダカ達の言葉を思い出していた。
『だなナッキ! 美味いといいな、げへへへ』
違った…… これは食い意地の張ったヒットの言葉だった。
自分の事は棚にあげる事にしたナッキは、改めてメダカ達の言葉を思い出した。
『見た事も無い虫が空を行ったり来たりしていましたよ』
確かそんな感じだったはずである。
その後、大きな羽音が聞こえていたとか何とか、それに何かを空中から大量に落としていたとか何とかぁ……
「あああぁぁぁー! き、来てます捕食者ぁっ! し、死の種蒔いてますよぉっ! ど、ど、ど、ど、どうすればぁぁぁーっ!」
狼狽し捲るナッキに対して長老は笑顔で告げたのである。
「ほっほっほっ、んじゃから来て貰ったんじゃよ、ペジオが造りし池を統一した最初の王者、ペジオ池の王ナッキよ、そなたらが生き残る為の方法を教えさせてもらうぞい? まあ、所謂年寄りの助言、アドバイスじゃよ、聞いてみるかの? ペジオ池の王様、ナッキ?」
「はいっ! 是非教えてくださいぃっ! あと『ペジオ池の王様』じゃなくて『メダカの王様』でお願いします、でないと狂気の悪鬼羅刹八千匹が長老に何をするか判りませんので……」
「悪鬼羅刹? わ、判った『メダカの王様』じゃな…… ではアドバイスじゃ!」
お読みいただきありがとうございます。
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まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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