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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
362.Domestic trial ①

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 翌朝、前日の疲れのせいだろうか、コユキは珍しく起きる事が出来ずに昼前になって漸くようやく目覚めたのであった。

 むにゃむにゃと母屋の食堂に入ってみたが家族の姿は見当たらず不思議に思ったコユキは、庭や畑、物置やガレージなどを慌ただしく走り回るのであった。
 お陰ですっかり目も覚めてしまい、そうなると昼夜の区別なく強烈な空腹感に襲われるのがこの生き物、コユキの習性なのだが今はそれ所じゃない様子であった。

「い、いない、誰もいない! ま、まさか……」

 コユキの脳裏に半年前の悪夢のような出来事、馬鹿状態のオルクスが家族達の魂を奪い取り、ズタ袋経由で魔神アスタロトの復活のにえにされ掛けた事が思い出されていた。
 今度はバアルの配下にでも襲撃されたのかもしれない……
 そう思うと急に不安な気持ちが高められて行き、いてもたってもいられなくなってくる。

 警察とは過去のやり取りから相性の悪さは否めない、とくれば善悪に頼るしかない! そう思いスマホを取り出そうとした時、聞き覚えのある子供達の話声が聞こえて来るのであった。

 唖然として声のしてきた方向を見つめていると、甥と姪に続いて、リエ、リョウコ、父母、祖母トシ子が並んで敷地の中へと現れたのであった。

「みんなぁ~! 無事だったのねぇ~!」 ガッシッ!

 残像を残して走り寄ってきたコユキに突然抱きしめられた甥と姪はびっくりして言葉も返せないようだ。

「ユ、ユキ姉? どうしたのよ、突然!」

リエの問い掛けに対して目尻に涙を浮かべながら答えるコユキ。

「アンタもリョウコも、エグっ、び、びんばぁ(皆)、ぶじべぼばっだぁー(無事で良かったー)! オーイオイオイオイ! オーイオイオイオイ!」

「どうしたんじゃコユキ?」

「オーイオイオイオイ、オーイオイオイオイ――――」

 泣き止まないコユキを連れて、家の中に入った家族は暖かい飲み物を与えて気持ちが落ち着くのを待つ作戦を取るのであった。

 十分ほど経って漸くようやくすすり泣きを止めたコユキの正面には厳しい顔をしたリエとリョウコが座り、その後ろに腕を組んだ父母が立っていた。
 トシ子は遅れて帰ってきたツミ子と共に別室で子供達の相手をしているようだ。

リエがコユキの顔を見つめながら声を掛ける。

「で、どうしてあんな真似をしたんだ?」

「へ?」

間抜けな声を出すコユキに今度はリョウコが優しそうな猫なで声で続けた。

「下手に隠し立てするより全部白状した方が楽だぞ~、お上にも情けが無い訳じゃないんだからな~」

「? 何が?」

問うコユキに対して答える者はなく、代わりにリエが声を掛けたのはリョウコの方であった。

「リョウちゃん甘い事言ってちゃダメだよ、こいつの狙いの本命はウチの娘じゃなくてリョウちゃん所の息子だと思われるわ! んな事じゃ愛する子供を守れないわよ! 」

「それもそうだね…… 判ったわ! おいこらっ! さっさとゲロっちまえよ! このデブが~!」

「その調子よ!」

「何よ、これ? アタシは只、そわそわした気持ちになって、そしたらあの子たちの元気な姿が見えたから、感情が高ぶって抱きしめただけじゃない! 普通、というか自然な事でしょう? 」

 そ、その言い方って…… ヤバくね?
 案の定、コユキの不審者っぽい発言を見逃さない、切れ者、キレッキレのエリート刑事デカ張りに切れているリエが言葉を発した。

「なるほど…… それは、つまり、性欲、劣情を抑えられなかった、って事だよなぁ? ん? 興奮したのか? どうだ、素直に認めちゃえよ…… お前は気持ちの高ぶりに抗えずに、目の前に現れた可愛らしい少年、まあ、甥だが…… その無垢な少年に対して己のイビツな性的嗜好を押し付ける為に、あろう事か腕力によって、無理やり、力ずくで、彼を抱きしめたのだろう? どうだ? 違うかな…… んっ! 」

 リエの迫力が凄い、何を言ってるか分かっていないコユキですら息を飲んで黙ってしまうほどであった…… 父、ヒロフミが沈黙を破ったのである。

「正直に言えよ、コユキ! お前、おま、あの子たちにそんな思いを、くぅっ! あんな無垢で可愛い子供たちに…… 馬鹿野郎っ! 殺すか? 親として殺すべきだよな? な、な、俺が殺るよ! リエっ! それが責任、って奴だよなぁ!」

「ひっ!」

 何が何だか分からなかったが、いつも温和でやさしいはずの父の怒髪天を衝くどはつてんをつく姿を初めて目にしたコユキは、誰に恥じるところが無いにも関わらず思わず怯んでしまうのであった。

 この家庭内裁判にいて、絶対的裁定者たるリエがお爺ちゃんのヒロフミではなく、犯罪者にされかけているコユキに対して口を開いたのであった。

「聞いたか? デブ…… これが被害者家族のいつわらざる気持ちなんだよ…… んでお前はどうするって言うんだ? この状態で、ああっ? 」

「えっ、えっ? 何で? お父さんもリエちゃんも、何でそんな怖い顔して怖い事言うのよぉ~! 被害者って? 皆無事だったんだから良かったんじゃないのぉ? エグッエグッ! オネイチャン、アンタ等に疑われたりしたら…… もう、もう、もおうっ! 辛いわよ…… 辛すぎるのよおぉぉぅ! オオオオオォォォォォっ!」

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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