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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
472.栄光の手

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 アスタロトが不思議そうな顔で返した。

「ん? ああそうか、たった十個の魂でよく早期に復活が出来た物だといぶかしく思っていたが、茶糖の家族は八人だけだったな、後二人は誰かと思っていたが、そのアリシアとラーシュと言う者達だったのだなぁ、にしてもシヴァん所の嫁さん、カーリーが持って来ただと? そんなレベルの魂魄じゃなかったぞ! あの二人…… 例えるならコユキや善悪に引けを取らない、ズバリ言えばトシ子やツミコにリエちゃん、リョウコでも足元にも及ばないぐらいの密度を持った魂だった筈だが? カーリーは確かに強靭な悪魔だが…… いやいやいや、流石にあの二人相手では後塵こうじんを拝して然るしかるべきだろう、何でなんだろうな?」

 シヴァが申し訳なさそうに言う。

「すいませんうちの奴が……」

 三度目の詫びは皆流して検討に検討を重ねるのである。

 コユキの言葉だ。

「んん? そりゃ実力で勝てない相手を従わせる方法って言ったらさぁ、納得して協力して貰う、それ以外になんかあんのん? アタシと善悪だって世界を救うために頑張っているんだしね…… んまあ、アタシ達の未来は死んじゃうらしいけどね、でもそれが皆の為の死、だったら…… 案外簡単に受け入れられる物よ! ねえ善悪ぅ? だよね?」

「ま、まあね、ってか僕チンはコユキ殿のいない世界なんかに興味は無いでござるから…… そっか、んまあそうかもね? アリシアさんとラーシュさんが進んで死んだとしたらそれくらいしか無いのかも知れないよね? 世界の人々の為か…… なるほどでござるな!」

 アスタロトが言った。

「いや、人々では無いな、この地球に生きとし生ける全ての命の為であろう、人って人間中心に考えすぎなんだよな、あれ程に優れた命が、己の生を失って尚願ったのは、人間だけでなくこの命が溢れかえる楽園たる地球に生きる全ての生きとし生ける物、その幸福であったのでは無かろうか?」

 コユキが唸るように言った。

「生きとし生ける、す、全て…… コロナも?」

 アスタロトが瞬時に答えた。

「ああ、コロナも他のウィルスもだ、全ての命、その幸せと言った筈だろう、どうだ? コユキ」

「あ、ああ、そうか、そうなのね! そう言う~! 取り敢えずそろそろ帰んない? アタシお腹すいちゃったんだけどぉ~!」

 ガクっ! 皆がずっこけたがそれも織り込み済みだった一行はハンニバルやネヴィラスが待つパティオに向けて歩を進めるのであった。

 そこで、それぞれの幹部たちの意見を聞きながら何とかすればいいじゃないか!

 わからない事は人に聞いたり、互いに相談を交わせば、何だか進んで行くものなのだ。

 最初、家族たちの魂を奪われ、独りぼっちでどうすれば良いか見当もつかなかったコユキが、薄らと見える悪霊じみた亡霊を友達とか言ってる寺の息子、善悪に相談をした。

 そうやって始まったこの物語、観察の主人公たちはいつもと変わらぬ気楽な口笛を吹いて、かつて無い程の謎に向き合って行くのである。

 パティオに戻った一行を迎えたネヴィラスが労いねぎらいの言葉を告げた。

「アスタロト様、ご苦労をお掛けしてしまい、誠に申し訳ありませんでした」

「ん? 我? 苦労とか無かったけどな! んまあ、ネヴィラス、お前たちこそ退屈だったんじゃないか? んで、お前に頼みたい事があるんだが、いいかな? お前ってさぁ、『栄光の手』探すの得意だったと思うんだが、違ったかな?」

 ネヴィラスが答える。

「えっ? 『栄光の手』ですか? んまあ、確かにあれ見付けるのは得意ですが…… 誰の『永久死体』を探してくればいいんですか? 我が君?」

 アスタロトがうろ覚え的に言うのである。

「ほら、『ランの奇跡』のニコール・オベリーだよ、彼女の眼球が、コユキと善悪の前の真なる聖女と聖魔騎士、アリシアとラーシュの『永久死体』と一緒にテュロスのメルカルト神殿にあるらしい、とは言えこっちの二人は復活して既に移動している可能性が強いがな…… テュロス、今で言えばレバノンのスール村辺りだろう、どうだ、探せそうかな?」

「仰せのままに…… 一両日頂ければ探し出して見せましょうとも…… お任せください!」

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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