【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
434.骸骨
「はわわわわわぁ~、シヴァ君って実は凄かったのねぇ~! 何よ、余裕じゃないのん!」
コユキが心底感心した言葉を口にする。
「うん、正直ここ迄とは思いもしなかったのでござるぅ」
善悪も否は無いようだった。
「いいや、まだ安心は出来ないぞ! イーチの奴、何かしようとしてるみたいだからな」
アスタロトの指摘に目を向けるコユキと善悪の視界には、両手の指を組んで、何やら呪文的な物を唱えているベル・ズール・イーチの姿が映るのであった。
必死と見える。
何故ならマントや王冠を地面に落とし、大事そうだった笏も既に後方に打ち捨てて祈っていたのであったから、である。
とは言え、シヴァの踏み潰しは順調に敵、スケルトンの数を減らし続け、最早何を企もうとイーチに逆転の目は無いかに見えていた、のだが……
「甦るのだ、タイラントよ! 再びの暴威を齎せ!」
あ、ほれっ! よ、ほれっ! そんな掛け声が聞こえてきそうないいムーヴで踊り続けていたシヴァがピクリと反応して踊りを止め肩越しに振り返った。
ゴゴゴゴゴゴゴオォゥ!
ここまでシヴァが踏み砕いてきた骨、スケルトンの残骸が、一つに纏まって巨大な、大体三十メートル位のジャイアントスケルトンへと変化していた。
日本的に言えば合体、いや、ガシャドクロの怪獣版と言った方が分かって頂けるかもしれない……
巨大なリサイクル化け物を目にしたシヴァは、顔に狂気と歓びを満たして口にしたのである。
「いいな、そうこなくっちゃ!」
言った直後、シヴァは姿を一本の黒めな青い線へと変えて、巨大な骨へと激突させたのであった。
ゴギっ!
鈍い音だけを発して吹き飛ばされ転がる小さな小さなソフビサイズのシヴァ……
かなう訳無い、コユキはじめ全員、敵対するイーチまでもが同様に感じたのだが、シヴァは笑顔を湛えて言うのであった。
「益々いいな! 面白くなって来たじゃあないかっ!」
やせ我慢だろうか? そう思ってしまったコユキと善悪の予想は次の瞬間打ち消されたのである。
「スウゥゥ――――!」
オルクスやモラクスの『風』と見紛う程の速さで巨大な骨の戦士に接近し、右足の踝辺りに手を添えたシヴァはスキルを発動させたのであった。
「『魔力崩壊、粉砕』」
パンッ! サラサラサラサラ――――
なんと! 破壊の力がたったの一撃で巨大なジャイアントスケルトンを粉々、サラサラのパウダー(カルシウム豊富)に変えてしまったのであった。
大きく口を開けてこの様子を見つめていたコユキ、善悪、実の所アスタロトも心の底から思うのであった。
(((こいつを揶揄うのはもう止めておこう)))
と…… んでもそれはそれで寂しいとか思うんじゃないかな? シヴァだったら。
ジャイアントスケルトンを文字通り撃破したシヴァは先程迄イーチが呪文を唱えていた場所に移動すると大きな声で叫ぶのであった。
「どこだ! どこに隠れた! 出て来い、出て来て俺と戦えっ! 卑怯者ぉ!」
だいぶカカっちゃっているようであった。
太鼓の連打も終わっているにも関わらずまだ鼻息を荒くして興奮の渦中にいるらしい。
善悪が太鼓を、アスタロトが奏者を担ぎ、手ぶらのコユキとスプラタ・マンユも揃って近づいて来て声を掛ける。
「お疲れ様でござる、凄かったでござるよ、カッコイー! でござった」
「同感だ、こと強さに於いては突出してるな、シヴァは…… そら、そんな状態じゃあ魔力消費がきついだろ? 早くこれ、封印だったか吸収しろよ」
シヴァは荒い呼吸のままで首を振って答えた。
「いいや、まだ、あのイーチとか言う奴、アイツが残っているだろう、はあ、はあ」
コユキがすぐ脇を指さしながら言う。
「アイツだったらそこに寝てるわよ、ヘソテンだから参ったって事じゃないかな? そんな事より早く魔力の流出を止めてよ、シヴァ君」
ビクッと一瞬動いた骸骨は、周囲に散らばったガシャドクロ素材にも選ばれなかった残骸とは違い、完全体しかも無傷で寝転がっていたのだから、どう見ても不自然で目立ち捲っていたのである。
カタカタと小刻みに震え続けるベル・ズール・イーチはいったん放置する事に決めたのだろう、小さく舌打ちをしたシヴァは自身に封印を施す為にスキルを発動させた。
「『帰還再生』」
奏者と太鼓が青紫の霧に姿を変え、千切られた二本の腕があった場所に新たな腕を再生させる、と同時に額の第三の目が閉じられ、三叉の槍も消え去るのだった。
表情もいつも通りに戻ったシヴァはその場で座り込んで言うのであった。
「ふう、くたびれた~、んでそいつ、殺すんでしょ?」
「そうねぇ? どうしようか善悪?」
「ふむ、どうやってって事ならデスニードルとかでメシャメシャがベストでござろ?」
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拙作をお読みいただきありがとうございました!
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