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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
438.生みの親より育ての親

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 貴重な魔核を頼もしい仲間達に見張って貰う事が出来たコユキと善悪は、中腹の饅頭フードコートを後にして丘の上に見えるベル神殿に向けてテクり出すのであった。

 いつも通りの暢気のんきな風情で歩いているのだが、先程イーチから聞いた所に依ればそこそこ有名な相手らしい。

 ちょっと気になったコユキは無口にキャラチェンを果たしたイーチ、ブレビスタに問い掛けたのである。

「ねえイーチ君? ヒュドラって蛇? 竜ってどんな相手なの? 戦歴とか経歴とか教えて頂戴よ」

「は、はい! 経歴と言っても私の生きた時代から見ても随分昔の事ですから伝聞に過ぎませんが、どうやら三つ首を持った年経た巨大な蛇だったとかなんとか、人によって違うんですよね、三つじゃなくて九つの首って言った者もいたそうでして…… あ、それと近付いて空気を吸うだけで人が爛れただれ死ぬほどの猛毒の瘴気を体に帯びていたそうですよ」

 コユキは真剣な顔で頷いて返し、善悪が代わって質問を続ける。

「ふーん、そりゃ凶悪な悪魔、いいや蛇か…… で、ござるなぁ、でも蛇は蛇、アジみたいな竜に比べたら下位互換なのであるよ! 楽ショー楽ショー!」

 コユキや仲間達を安心させる為に、えて気楽な声を上げた善悪であったが、狂信者は空気を全く読まないで返したのである。

「んーでもどうなんですかね? 元来は蛇だったらしいですけど、年経て手足も生えているらしくてですねえ~、人の言葉も話すとか、翼を広げて天空を駆けるとか聞きますからねえ~、厳密に蛇かどうかって言われると微妙な感じなんですがねえ~、へへへ、何なんですかねえ?」

 善悪は思った、ペラペラ述べてんじゃねぇ、それを竜と呼ぶんだ馬鹿野郎! それもバリバリの叩き上げじゃねぇか! と……

 精神の軸の部分に変な物(コユキと善悪)が入り込んでしまっている宗教狂いが言葉を続けた。

「ああ、あと戦歴と言えばヒュドラが生来せいらいの魔獣から悪魔と成った切っ掛け、つまり死んだ理由ですけどね、のハーキュリーズに討伐されたと言われてるんですよお~、ふふふ、ハーキュリーズ、ヘーラクレースと言えば、スプラタ・マンユのお歴々やベル・ゼブブ殿と同じく、お二人、コユキ様と善悪様のご子息でしょう? 末のお子様ですよね? だから、ヘーラクレースよりお強い尊いたっとい尊い絶対神たるお二人にはね、楽ショー楽ショー! ですよね!」

 ん、んん? ヘーラクレース?

 恐らく日本で言う所のへラクレスの事であろう、最高神ゼウスの息子で人間の能力を最大限に発揮できる英雄、ただし大分痛い、かなりイッタイ! イッタイ暴れ者の事だった筈である、それがコユキや善悪の根源たるルキフェルの息子? 私同様当の二人の取り戻しつつある記憶にも一切覚えの無い事だったのである。

 更に爆弾発言を続けるダキアの王、骸骨姿のイーチである。

「ご立派なご子息ですよねぇ~、レルネーでしたっけ? あの沼! ヒュドラだけでなくあの化けガニも迄巣食っていた凶悪な沼、そんな場所に出向くだけでも英雄、流石ですよねえ! ヒュドラの育ての親と言ってもいい巨大な蟹の拠点に攻め込んだのみならず、苦戦を強いられている可愛いヒュドラを助けようと近づいてきた蟹めまで、戦いのついでに踏み潰してやったんですよねぇ? 本当に頼もしい息子さんでは無いですかあぁ~! あやかりたい物ですよぉ~、私の息子たちなんか軟弱で軟弱でどうしようもなく――――」

「カルキノス!」

「はっ?」

「その蟹ちゃんの名前ってカルキノス、違うの? そうでしょぅ?」

 コユキの言葉にイーチは首を傾げて答えるのであった。

「そうっすねぇ? 確かそんな名前だったと思いますけどねぇ? それが何か?」

 善悪が代わって言葉を発したが、その表情は複雑に絡み合う因縁にビックリ仰天、驚天動地きょうてんどうちそのものであった。

「カルキノスの言っていたハーキュリーズが僕チン達の子供? うーん良く分からないのでござるが、これから対峙するヒュドラちゃんの育ての親が蟹ちゃんで…… えっと、コユキ殿? ヒュドラって敵なの、それとも味方? 我輩もうシッチャカメッチャカでござるんだけどぉ」

 コユキが答える。

「んなの私に聞かれても判んないわよぉ! 取り敢えず行ってみましょう! ヒュドラの元に! 幸い話は通じるみたいじゃ無いのん! 語り合って、分かり合って、そして憎み合ってぇ!みたいなテンプレにならない事を祈るしかないじゃないのぉ!」

「だね……」

 イーチは相変わらず空気を読まない、いいや読めない可哀そうな子だった。

「殺すんですよね? ね、ね、うわあぁ、凄く楽しみですよぉ! 神様の戦い…… アガル、容赦なくアガルゥ! 私楽しみですぅ~!」

 シュバッ!

「クッハアァ!」

 無言のままに発せられたオルクスの『飛刃リエピダ』の一撃がイーチの鼻先を通り過ぎ、その良く動く口を閉じる事に成功するのであった。

「オマエ、チョット、ダマレッ!」

「アイアイサー! ヴォルグス様!」

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拙作をお読みいただきありがとうございました!


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