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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
253.トシコ婆ちゃん

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 コユキはいつに無く真面目な顔をして返答とも言えない感じで何となく口にした、その後、顎の前に手を置いて暫ししばし考え込んでしまうのであった。

 言っている事は理解出来る、相棒って奴は恐らく『善悪』の事だろう、それは良い、良いんだが、バアルを顕現? んまあ、アスタと同じ様にってんなら分からなくもない。
 だけど、何で態々わざわざそんな事を伝えに来たのん?
 まあ、いいや、アタシと善悪の事だったら答えてやろうじゃない、心配スンナよラビスちゃんってか!

「分かったわ! ってかアタシと善悪が離れるとか考えられないのよぉ! 子供の頃からずっと一緒だしね! 心配しなくても良いのよぉうー」

「お黙りっ!! コユキっ!! 最前から言っていたろうがっ! 和尚様、善悪さんと距離を置きなさいってね!」

 叔母ツミコを伴ってダイニングに現れたお婆ちゃん、トシ子が大きな声でコユキを窘めるたしなめるのであった。

 因みちなみにだが、皆知っているとは思うが、ウトゥックはシュメールの言う所の精霊である。
 ラビスとはその第一の精霊、精霊王とも言うべき存在である。

『なんかババアが横槍入れて来たねぇ、何? コユキちん、こいつ殺して良いのぉ?』

 怖すぎる事この上ない…… 
 コユキは言った、もう必死に……

「こ、殺さないでぇ! アタシのお婆ちゃんなのよおぅ! んでも、でもでも! 婆ちゃん、問答無用に善悪と距離を置けって…… そんなの聞ける訳ないじゃない! イイイイイィィィィ!」

 コユキは怒った! 自らの婆ちゃんに対して、反抗期さながらに敵対の意思をあらわにしたのであった……

 婆トシ子が言った。

「なんだい! コユキっ! あんたっ! あたしに逆らうって言うつもりなのかい? ほぉ、面白いじゃないかい……、んじゃあぁ、妹のどっちかに神聖銀を渡して、さっさと引退するんだね! どっちか選びな! 和尚様と距離を取るか引退するかのね!」

 婆ちゃんの婆ちゃん! 強権的すぎるんじゃねぇかぁ?
 これが私、観察者の偽らざる気持ちであった。

 コユキも同様の気持ちだったのだろう、ムキになって言い返すのだった。

「引退するのは良いわよ、だけど、何でこの子達に危ない真似させなきゃなんないのよ! だったらアタシが続けるわよ! 善悪と一緒にね! ふんっ!」

 トシ子婆ちゃんも負けていない。

「分からない子だね、全く! あのね! 聖女と聖戦士が討伐以外は極力接点を持たないってのは、昔から伝えられてる事なんだよ、決まりなんだ!」

だそうだ。

「言い伝えって、迷信じゃん! 第一コンビネーションとか考えればマイナスにしかならないし、仮にその決まりに従わなかったらどうなるって言うのよ?」

 ふむふむ。

「そりゃあんた、聖女も聖戦士も不幸になるに決まっとるわ! それに世界が変わってしまう、なんて言う恐ろしい予言もあるんだよっ!」

 ほう。

「あはは、迷信丸出しじゃん? それに論理破綻はたん甚だはなはだしいわね! 聖女が不幸になるんなら何でおばさんこんな状態なのよ! 光影ミツカゲさんちのお父さんと距離を取っていたのに? おばさん見て幸せそうに見えるんだ? へぇ~、そうなんだ~」

 そう来たか。

「ツミコが不幸なのはツミコ自身の人間性に問題あるからに決まってるじゃないかい! 光影の父、昼夜チュウヤと一緒になっていたらこんなもんじゃ済まない位、品性が下劣げれつな娘だからだよ!」

 なるほど。

「んなの分かんないじゃない! その昼夜チュウヤさんと一緒になったりしてたら、こんな風に身の置き場も無い惨めみじめ居候いそうろうじゃなかっただろうし、皆にうとまれてる事に気が付いてる癖に無頓着むとんちゃくな振りを続けるカスみたいな人生じゃなかったんじゃないの!」

 確かにね。

「馬鹿言うんじゃないよ! ツミコにまともな人生とか、ヘソで茶が沸くわい! ツミコがどれほど社会不適合で人間のクズかなんて、生んで育てたあたしが誰よりも知ってるわい!」

 それもそうか、ん? 
 テレビを見ていたツミコさんが急に立ち上がってどうやら自室に戻るようだな。

 なんか息苦しそうにしている、手足が小刻みに震えてもいるし、眩暈めまいだろうか?
 ちょっとヨロヨロしながら台所の棚を空けて緑色の一升瓶を手に取り、無表情で歩いていく。
 片手に小さめのビニール袋を持っている所を見ると『過換気症候群』かもしれないな?
 大変だな、大事にして欲しい物である。

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拙作をお読みいただきありがとうございました!


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