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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
302.忘れ者

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 名古屋駅を過ぎた頃、十二個の蛸メシを食べ終えたコユキがマスクを確りしっかり装着しながらヤングマダム二人からの質問攻撃を受ける事となった。

「奥様? 何故マスクを着けるんですの? まさか、コロナ対策…… んなワケナイデスワネ? 一体何故ですの?」

「そうですわ! 可笑しいですわ! コロナなんかマジシャンズチョイスの最たる例! ですよね? 何故そんな物をお着けになりましたの?」

 ふむ、こいつら本当に素直なようだ! そりゃ溢れかえる情報の波に遭難する筈であるな、よしっ! 言ってやれコユキ! この人達に真実の刃を振るうのだ!
 そんな風に思ってしまった、私、観察者の想像と、お婆ちゃんコユキの言葉は、些かいささか乖離かいりしていたのであった……

「ん、ああ、マスクか! 何だか今日花粉症が酷くてねぇ! 鼻水垂らしてたら格好悪いじゃない? んだから隠してんのよ、垂れる鼻汁を覆い隠すに便利な布であるなぁ! 的なノリで鼻ナプキンよ鼻ナプキン! 分かるでしょ? どう?」

「なるほど、言い得てたえですわ!」

「ああー、そういう…… OK! 分かりましたわ、今後はワタクシも鼻ナプキン、いいえ、ハナプキン! スナフキン的にマスクを使ってみる事にいたします!」

コユキは無言のままニヒルな笑顔を浮かべ右手をサムズアップさせている。

 うーん…… 女の人って、時々不思議なんだよなぁ……
 まぁいっか、兎に角三人はスナフキン、トーベヤンソン的になったようである、良かった良かった!

「ところで、意識高い奥様、いいえ私達の憧れの奥様のお名前を教えて頂いても?」

「んあ! アタシ? アタシは茶糖コユキよ! 静岡県金谷駅近くの幸福寺にいるわよ? そうだ! アンタ等遊びに来なさいよ! ウロウロ歩き回る編みぐるみとか、半透明の悪魔とか、この世に未練を残した怨霊とか、色々いるからアトラクション的な楽しさもあるわよ、ホーンテッド○ンションのガチバージョンよ! どう? 興味有るでしょう?」

「「おおぉぉぉぉぉー!」」

二人合わせた声を発した後、揃って意外な事に言及するのであった、ヤングマダム、いやヤングセレブって不思議だなぁ?

「奥様、朝お会いしたお美しい殿方も、そちらのお寺のアトラクションで働いて居りますのでしょうか? そのスタッフゥ~、的なぁ?」

「ん?」

「奥様! 聞くまでも無い事では無くって? あれほど見目麗しい殿方たちでございますのよ? きっとスターですわよ? ねぇ恰幅かっぷくのよい奥様、いえ大奥様、いやいや巨大奥様! そうですわよねぇ? スターでしょ? スター!! あ、あれ、巨大奥様?」

コユキは思った…… こいつら一体何の話を…… っ!!

「やばっ! ………… 忘れてきちゃっ、た…………」

 青褪めた顔を浮かべたコユキは気もそぞろ、ファンの奥様二人の様々な問い掛けにも適当に相槌を打つだけで、右手の親指の爪をガリガリ噛む事だけに執心し、無碍むげに時間を費やしていくのであった。

「あ、今どのへんなの?」

 今更気が付いたコユキを嘲笑うかのように、新幹線は幸福寺の最寄駅への到着を無情にも告げたのであった…… 最終です……

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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