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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
666.アンビリーバボー

はじめての方はコチラ→ ◆あらすじ◆目次◆

 イライラしているコユキを横目にカーリーが仕切り始めた。

「では難しい事はおいおい光影に教えて貰う事としてぇ、一旦解散するとしましょうかねぇ、コユキと善悪は生き続けて二十五年後の未来での活躍を期待する事と致しましょう! 皆さん、お疲れ様でございましたね、それでは解散ですわ! ふふぅー、何にしても良かったですわ、最初のゴッドフルバーストを逸らすことが出来て…… 我ながら良い仕事をさせて貰いました……」

 ピックッ! ガタガタガタガタ……

 カーリーの声を聞いて一旦は席を離れてそれぞれの本拠地に戻り掛けていた悪魔達が、揃って席に戻って真剣な顔でコユキと善悪、復活してボオッと呆けているサタナキアに再び熱い視線を送り始めたのである。

 そうだ、彼等も見ていたのであった。
 カーリーが登場するまでにコユキと善悪、そしてサタナキアが受け続けていた、より完璧に近いゴッドフルバーストのきらめきを……

 これが、人間や他の獣であったなら違う結果であったのではなかろうか?
 しくも、この場に集っていたのは命の専門家を自負して止まぬ、最頂上に位置する強者、悪魔達なのである。
 それぞれがそれぞれの本能に従ってこの場に残り、次に語られる話を聞こうとしていたのであった。

 数万の悪魔が耳をすませる中、コユキはカーリーに対して言う。

「ええとっねぇ、カーリーさん? アタシと善悪が二十七回ゴッドフルバーストを受け続けていたって事、さっき言ったよね? アンタなんでそれ無視してんの? んだから皆が帰んないんじゃないのぉ? アンタ馬鹿なの? しくは言葉が判んないの? でなきゃ、聞きたい事だけを聞くって言う只の馬鹿、ゴミ野郎、ううんゴミ女神って事なのぉ? ねえ、何でなのぉ?」

 善悪も続いた。

「本当にコユキ殿の言う通りでござるよっ! 何故だか知らないのでござるが、某たちはレグバのビームを受け続けても無傷だったのでござるよ? ね、ロットさん」

「うむ、コユキと善悪の言う通りだぞ、何故か二人ともピンピンしてるんだ、不思議だなぁ、な?」

「「「うむ」」」

 善悪の言葉を肯定したロット神の問い掛けに、残りのレグバ達も一斉に同意の声を返す。
 このやり取りを見て、カーリーも不思議そうに首を傾げて考え込んでいる、どうやらゴミ女神という訳ではなかった様だ、良かった、主にスカンダとガネーシャの名誉的な意味で。

「おかしいわね、さっきも言ったけどレグバのフルバーストで無事な人間なんて考えられないんだけど…… 前回も一撃で二人とも消失しちゃってサタナキアが残った魔力を吸収していたし…… 今回との大きな違いは、時間を遡及そきゅうした時にレグバが居ない事で戻る時と場所が狂ったって事と、その時間以降アタシ自身が関与できなかったって位だし、その期間にやっていた事って言っても大した事はやっていなかったわよね…… ん? そう言えば、今回はアタシが記憶を戻した訳でもないのに、なんで善悪まで聖戦士の記憶を取り戻しているわけ? コユキは失敗したけどアンタには完全な記憶改竄かいざんが成功したはずなのよ、おかしいじゃないの!」

「何でって言われても、覚えている物は覚えているとしか…… あっ! そう言えばコユキ殿が幸福寺にご家族のピンチを伝えに訪れるまでは、一切合切忘れていたのでござるよ! その後少しづつ思い出して行ったんでござった! そうだそうだ」

 この善悪の言葉にコユキも同意を示した。

「あー、そう言えばそうだったわね、最初のアンタの解説とか適当だったもんねぇー、オルクス君をバフォメットだとかいい加減な事言ってたわねー、アタシもスプラタ・マンユやアスタやバアルちゃんと会う度にルキフェル時代の記憶とか思い出したけどさ、確かに善悪はそういう出来事が無くても少しづつ思い出していた感じだったわよね、何でだろうね」

「で、ござる」

「そうなんだ……」

 そう一言呟いたカーリーは目を閉じ腕を組んで考え込んだのである。


拙作をお読みいただきありがとうございました!

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