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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
464.瀆神の輩

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 バアルが疑問に感じたのも無理は無い、普通、一般人がコユキや善悪程の聖魔力をその身に纏えば、コユキが大好きな言葉の文字通りに爆ぜる、のである。

 故に、ラファエルとかガブリエルとかミカエルなんかの名前の語尾に付くエール、バアルの別名に連なる天使、隕石の権化ごんげだと思われたのであろう。

 もう、お気づきかも知れないが、現在の人間が万物の霊長とか言われる変化のきっかけは、最初に飛来したアスタロトのディープインパクトであるにも拘らず、その後訪れた天使、天体衝突には漏れなくバアルの別名、エールが付随されているのである。

 バアルがどれ程強力な信仰と畏敬をあらゆる時代の人間達から一身に受けているかが分かって頂けるのでは無かろうか?

 と、尊いたっとい尊いバアル少年に向かって、我らが『真なる聖女』、茶糖コユキが鼻息荒く応えるのである。

「だからぁ、アンタの手下の狂信者、そこに隠れて声ばっかり大きいハミルカルにも言ったんだけどさぁ、アタシとこの善悪、二人合わせてルキフェルなのよ、どうぞよろしくっ! って事なんだけどね? そんじょそこらのチンピラ天使じゃなくて大物なのよぉ! 分かる? 因みちなみに単なる聖女と聖戦士じゃなくて真なる聖女と聖魔騎士でもあるのよ、尊いでしょ? ところでおばちゃんが一緒にお風呂とか入ってあげよっか? どう? どうなの?」

 バアルが答えて言う。

「お風呂はお断りしますよ、真なる聖女様…… にしても許せませんねぇ~、事もあろうか、我が兄、至高たるルキフェル兄様の名を騙るかたるとは、きつめのお仕置きが必要でしょうね、これは、中々の機転と器用さ、後はその膨大な聖魔力のせいで勘違いしておられるのでしょうね~、何れいづれにしても抵抗不可能な世界で教えてあげるとするね~! これが神たる魔神の戦いだよぉ! 『因果混沌カオスティック領域フィールド』、ふふふ、君たちの魔力は意味をなさない! さあ、僕に見せてよ、君たちの命が最後に見せる抗いの『ワルアガキ』をねぇ~! ふふふふ、ふふふぅ」

 カオスティックフィールド、因果混沌領域だったか?

 バアルがスキルを発動した瞬間に周囲の空気が変わった。

 先程迄広間を覆い尽くしていた闇とは違い、見た目には何の変化も無かったのだが、体に押し寄せてくる魔力の圧が、なんと言うか、凄い。

 具体的に言えば、善悪もスプラタ・マンユの七柱も同様に、周囲に満ちた聖魔力、恐らくバアルの聖魔力の濃密さの中で、自身の聖魔力や魔力が体から出せない状態、ギュウギュウに押し込められた感じになってしまっていたのである。

 それは、コユキも例外では無く、試しにバアルに向けて放ってみた『聖魔弾スリング』は発動される事なく、逆に押し戻されて自身の体に僅かわずかながら痛みをもたらしたのである。

「へぇー、なるほどね、随分得意そうだわね、アンタのご自慢は魔力操作ってことでしょ? そんなら――――」

「『煩い、黙れノイズキャンセル』」

 なんと、スキルの重ね掛けであろうか? コユキの発言中に告げられたバアルの言葉によって、『聖女と愉快な仲間たち』の面々は発声によるスキル発動さえも封じられてしまったのであった。

 誰もが無力、そんな途轍とてつもないピンチ編だというのに、意識を取り戻したアスタロトがコユキの肩に手を置いて、ニヤニヤしながら口をパクパクさせていた。

 コユキの目の前に立った善悪も同様に笑顔と共に口をパクパクさせている。

 答えたのだろうか? 向き合ったコユキはパクパクと口元を動かして何か話し返したようだ。

 アスタロトと善悪が同時にサムズアップをした瞬間、コユキは音も無くバアルに向けて飛び出して、神速よろしく、目の前まで肉薄しつつ口を大きく開け閉めして何やら喋った様であった。

 私、観察者の拙いつたない読唇術で通訳させて頂けるならば、コユキはこう叫んでいた筈である。

『デスニードル』

と。

 次の瞬間、バアル少年の右肩から先が砕け散ったのである。

 驚愕に目を見開き、直後に齎される苦痛によって顔を大きく歪ませるバアル。

 そんな物を歯牙にも掛けないまま、コユキの声なき唇は動くのであった。

『デッス、ニードルッ!』

 今度はバアルの顔面を襲ったデスニードル、容易に上半身を打ち砕かれ消失された少年は口も無いと言うのに、コユキに向けてどこからともなく告げるのであった。

「へえぇ、どうやっているのか知らないけど凄いね、おばさん! スキル阻害エリアでスキル使用するってぇ! 凄いよぉ! でもちょっとムカついたかなぁ? 僕のオキニだったロビー君を壊しちゃったんだからねぇ~、本気で殺そうかな? 仕方ないよねぇ? おばさん! お前、もう死んどけよ!」

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拙作をお読みいただきありがとうございました!


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