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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
460.ファナティシズム

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 コユキは丁寧な礼のまま止まっていた執事っぽい悪魔に言うのであった。

「ねえ、おじさん(見た目は同じ位)! おじさんってハミルカルさんなの? ハンニバル君たちに聞いて来たんだけど、どう? そうなのん?」

「おお、そう言われるとハスドルバル君に似ているのでござるよ! 君がハミルカルというのかな?(見た目は同じ位)若いのに確りしていて偉いのでござるな、褒めちゃうのでござるよ、ヨシヨシ、でござる!」

「え? ええ、まあそう呼ばれています、が、それが何か?」

 執事の答えを聞いた善悪は胸を撫で下ろしながら言うのであった。

「良かったのでござるよ、実はさっきから出て来ているルキフェルっていうの、僕チンとこっちのコユキ殿なのでござるよぉ~!」

 コユキも同様に肩の力が抜けた感じで続けた。

「そうなのよねぇ~、ここまで問答無用っぽい感じのばっかりだったからさぁ~、漸くようやくまともに話が出来る人、ああ、悪魔か? が出て来てくれて助かったわよぉ! なによ、全然狂信者じゃないじゃないのぉ~! 風評被害よね、駄目よねそう言うのって、絶対!」

 二人の言葉を聞いたハミルカルは満面の笑顔を浮かべて答えたのである。

「私が狂信者ですって? それは…… 確かに風評被害、酷い言われ様ですねぇ、とんだ汚名でございますよ、私は只々、主の望むままに生きる事だけを歓びにしているだけだと言うのに…… 不徳の致す所でしょうか? ふふふ、それでどう致しますか皆様、お入りになるんですよね?」

 思った以上に話の通じるハミルカルとのやり取りに安心し切った一行は揃って頷きを返すのであった、満面の笑顔で。

 誰一人ハミルカルのこめかみが滅茶苦茶引き攣り捲ってピクピクっている事に気が付かないままに、誘われた扉の中へと嬉しそうに談笑しながら姿を消したのであった。

 遅れて扉を潜ったハミルカル・バルカの背後に紫電の雷が迸りほとばしり、酷薄そうに変じた灰色の瞳が一行をめ付けながら、真っ赤な舌をチロチロと首に這わせつつ、誰にも聞こえない様な小さな声で、独り言のような呟きを漏らすのであった。

「ようこそ、絶望の広間へ…… イヒヒヒヒ、イーッヒヒヒヒヒヒヒィ!」



 ゾックゥっ! ゾクゾクっ!

 茶糖の家で食後のデザート、季節のフルーツ丸ごと入れちゃいました! 初夏の味夏みかん、に舌鼓を打っていたリエとリョウコの二人が顔を見合わせて、口に運び途中のスプーンを止めるのであった。

「ね、ねえリョウちゃん、今のって!」

 リョウコが真剣な表情を浮かべて言うのである。

「う、うん、あの悪寒ってぇ…… やっぱりそう言う事だよねぇ? アタシはそう思ったけどぉ? リエちゃんもぉ?」

「うん、アタシもだよっ!」

 見つめ合う二人はまるで一卵性双生児の様に声を揃えるのであった。

「「美味しいもの食べてると、絶対現れるんだよねぇ、取られる前に早く食べ終わらないとぉ!」」

 ツミコが呆れた顔で割って入った。

「いやいやいや、流石にこんなに早くは帰ってこないと思うよ、尾瀬だよぉ、幾ら何でもないでしょ?」

「甘い! 奴は美味しい物を家族がこっそりと喰っている時に限ってはね、物理法則を越えるんだよ!」

「そうねぇ、取り敢えずぅ食べ終わってればぁ切れ方がぁ弱めだからねぇ~、せーのぉ~」

 リョウコの声を合図に、味わうと言うより、只々腹に収納するかのように高級ゼリーを掻き込んでいくコユキが大好きな妹達であった。

 実の所、コユキは結構な危機に足を踏み込んだのだが、虫の知らせは正しく届くことは無く、因果応報、自業自得、これまでの自分のせいでコユキは誰にも心配される事なく絶望の広間へと向かってしまうのであった、とほほ、仕方が無いよね。

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拙作をお読みいただきありがとうございました!


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