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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
558.双子

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 一時的に視力を失っているコユキの代わりに、いち早く回復を果たしたアスタロトの声が本堂に響いた。

「むっ! ほーうぅ! 噂には聞いていたが…… 本当に美しいなぁー、只奇麗とか愛らしいんじゃなくて、戦う美女、って感じじゃないかぁー、銀色の狩人かぁー、なるほどなるほど、我、納得! アルテミス、お前美しいなぁー、ラーの犬っころには惜しい位だぁー! あ、いや、これは失礼、失言であった、許せよ」

 コユキ同様、まだ両目を3にしていたバアルが、両手を前方にフラフラと漂わせながら答える。

「だろう? この娘、アルテミスは妾配下では一番美しいからね? んまあ、イーチ休の純白の骨も美しいっちゃぁ美しいんだけどさっ、いささか馬鹿すぎるでしょ? あれ! そこら辺を考えればアルテミスが妾の配下中一番の自慢なんだよ! どう、どう? 美しいでそ?」

 コユキは視界の中心に捕らえようとすると一々キラキラしてしまっていたので、ギリ影響を受けない様に、瞳の中央を避けた形で、分かり易く言えば、明後日の方向に視線をずらしたまま、斜視っぽい感じでアルテミスを視界に捕らえて答えたのである。

「あ、ああ、確かに奇麗っぽい、わねぇ…… お姫様、正にそんな感じじゃないのぉ! これからよろしくね、アルテミスちゃん」 

 言いながら手探りで近付いたコユキは優しく彼女の体を抱きしめたのである。

「コユキ姉様、何で妾に? アルテミスなら後ろだよ」

「なんだ、バアルちゃんだったか、道理で小さくて見覚えあり過ぎると思ったわよ、なはは」

 徐々に幻惑から復帰して来た視線を背後に向けたコユキは、改めて目にしたアルテミスの美しさに思わず息を呑むのであった。

 銀髪の長い髪を背中の真ん中あたりで一つにまとめ、白く引き締まった身体に銀の胸当てとガーダー、ブーツだけを纏った美しい少女が自分に向けて微笑みを見せている。

 瞳の色もやはり銀色に輝き、転じて唇は鮮やかな朱色に艶めきどこか淫靡いんびにすら感じる。

 手にした大弓と背負った矢筒は共に純白で、収められている矢はこちらも揃って銀色に輝いていた。

 背丈はコユキよりもやや低い物の、百七十センチはあるだろう。

 彼女の足元に群がって歓びの涙を流しているチビ共の妹とは、俄かに信じる事が出来ないサイズ感であった。

「こうして見ていると白雪姫と七人のドワーフにしか見えないわね……」

 何の気なく発した言葉で悪気も何もない、と言うより見たまんまの言葉であったが、アヴァドンは何か引っ掛かった事でもあったのか、コユキに対してとがめるように言ったのである。

「コユキ様ー、何か気になる言い方をしてくれるでは無いか! まるで、我々スプラタ・マンユがこの愚妹ぐまいに劣る、そんな風に聞こえてしまったのだが? 不本意の極みっ! まるで我々が妹みたいに大きくオリジナルの姿になれない、みたいでは無いか! 失礼千万!」

 コユキが瞬で返す。

「だってなれないでしょ? 元の姿、どころかちっちゃいお人形サイズじゃん、ずっと」

 アヴァドンも瞬だ。

「今までは周囲の魔力が足りなかったから自重していたんだが? 仮にも魔王種たる者がこのような矮小な依り代だけで居る訳が無かろう? 全く、コユキ様、いやコユキってばオッチョコチョイであるなー! 魔界や今の幸福寺位に魔力が満ちている場所なら、ほれ、この通り」

 言い終わるや否や、アヴァドンは小さな金色の暗黒騎士の体から黄金のオーラを噴き出させ、一瞬後にはコユキの前に二メートル前後の姿を現したのであった。

「チッ!」

「馬鹿めがっ!」

 パズスが舌打ちをし、シヴァが憎々し気に言葉にしたが、当のアヴァドンは自慢げな表情を崩さなかったのである。

 フィギュア時の狼っぽい顔付では無く、どこか中性的な金色の天使に変じたアヴァドンは美しい二対四枚の蜻蛉トンボみたいな羽を震わせながらコユキに言う。

「どうかな、コユキ? これでも我輩がドワーフに見えるかな? 見えまい、クーフフ、クッハッハッハッハァーッ!」

 うん、見えない。

 と言うか、今までの天使や神々のイメージが安っぽく見える位の神々しさまであるな、こりゃ。

 コユキも同感だったのだろう、美しく光り輝くアルテミスとアヴァドン、月と太陽の化身を交互に見つめながら深い嘆息と共に答えたのであった。

「す、素敵よぉー! ドワーフ所か、んもうっ、えーとっ、ワオッよっ! もう、ワァオォッ! よっ! 何よ、アンタやれば出来るんじゃないのぉ! んもうっ格好良いんじゃないのよぉぅ!」

「お褒め頂き光栄ですわ、コユキ様、ンフフ」

「クハハ、そうであろうそうであろう! 我輩満足なので、あるっ!」

 コユキの称賛に嬉しそうな双子、アルテミスとアヴァドンであった。

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拙作をお読みいただきありがとうございました!


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