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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
504.餌

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 感情の起伏が激しい悠亜が落ち込んでしまったのを見て善悪が庇うように言葉にした。

「ご、ごほん! にしても三匹のトカゲの違いはなんでござろう? 餌とか? であろうか? どうなの?」

 これには落ち込んでいる悠亜では無く、結城昭が答えた。

「フトアゴヒゲトカゲは最近購入したばかりなので判りませんが、アルマジロトカゲは普通にコオロギを与えていますね、オオヨロイトカゲの方は悠亜がふざけてあげた白米や冷凍あさりなんかが好きなようで、それを食べさせているんです」

 ここまで黙って聞いていたコユキがふんすっと鼻を鳴らしながら言うのである。

「なるほどね、ペット業者が与えていたのはタンパク質系とかビタミン系とかのサプリだわね、簡単だから、それで魔獣か! んでコオロギは単純に家畜的な餌で魔物、白米とかアサリで悪魔って事ね、納得だわん!」

 一人で納得しているコユキに善悪は馬鹿を見る様な視線を送り、丹波晃は辛抱できないと言った感じで確認したのである。

「ねぇコユキさん? それってどういう意味なのかな? もう少し分かり易く教えてくれないかな?」

 コユキは溜息を吐いてから、仕方が無い、本当に面倒だ、もう部屋に戻って寝てしまおうか? そんな表情を浮かべながらではあったが、親切にも説明をしてあげるのであった。

「ほら前に言ったじゃない、土は食べ物だって! サプリとかにもカオリナイトとか使ってんじゃない? 野生動物とか泥とか食べてるヤツって魔獣化するんだってさ、んで家畜みたいに炭水化物中心だと魔物になるんだと、んで食べ物に鉛が多かったりすると悪魔になるのよ、ウチのお婆ちゃんとかがそうね、サパ飲んでるし」

 コユキ達と向き合って座っていたメンバーは、コユキの話に目を剥いて驚きを示している。

 驚いた事に悪魔、魔王種達もそういった分析は初めて聞いた感じである。

 コユキに魔獣と魔物の違いを説いたスプラタ・マンユも同様だった事が、コユキには逆に新鮮であった。

 アスタロトがコユキに聞いた。

「コユキ、カオリナイトってなんだ?」

「ケイ素ね、シリコンよシリコン」

「なるほどな」

「そう言う事か」

 アスタロトだけじゃなくバアルも納得している様である。

 善悪が左右に並んだ三人に言った。

「どう言う事でござる? 拙者イマイチ判らないのでござるが?」

 この声に答えたのは善悪に向き合って座っているメンバーの内、従兄弟の光影であった。

「ほら、前に話しただろうよしお、ガラス玉とくずダイヤモンド、んでコユキさんの話からすると悪魔は核がPb、鉛って事か…… という事は硝酸を使えば倒せたりするのかな?」

 ニヤリと挑発的な表情を浮かべてアスタロトとバアルを見た光影にバアルが答えた。

「小者はね、魔王種とかになると核の表面を酸化膜で覆ったりして予防しているよ、勿論、妾達はもっと別の方法を使ったりしているけどね」

「だろうな、じゃなきゃ死んだ親父も浮かばれないだろうからな」

 バアルと光影のやり取りを聞きながら、ようやく理解したのだろう、善悪が呟きを漏らした。

「炭素とケイ素、それに鉛でござるか……」

「そうよ善悪、それと魔力を流す為の回路、その循環スピードよ、アンタエスディージーズ持ってるんだから判るでしょう? 魔力の量に対して循環スピードが足りていなかったらどうなるのよ? どう?」

「そ、それは…… えーっと、魔力が無くなれば死んじゃうけど、魔力が回らなくて留まったりしたら…… 多分だけど滞留している部分が魔法で攻撃されたみたいに徐々に破壊されていくんじゃないかな?」

「でしょうね、お互い気を付けましょうね、多分アタシ等も既に核持ちだろうし…… 非核三原則を堅持し続けている日本国内で、まさかこんな風に核保有者になるとは思ってもみなかったわん、悲劇ね」

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