見出し画像

【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
409.エキスパート ②

はじめての方はコチラ→ ◆あらすじ◆目次◆

 コユキはビックリ仰天であった。

 初めて泊まった幸福寺…… 不穏ふおんな空気に起きて来てみれば、善悪+昔馴染みの悪魔達、まあ多分に魔狼達の力と、コユキの腹肉の協力もあったのだが、襲撃とか、悪魔を捕まえて置く為の核シェルターの存在とか、その為の行動に対する阿吽あうんの呼吸とか、全てコユキの想像以上、ガチガチの攻略組、悪魔退治の専門家集団が巣食っているのがここ、幸福寺であることを今更ながらリアルに知ってしまったのだから、驚いてしまったのも無理は無い事案であったのだろう。

「それじゃあ部屋に戻って眠ろうよ、コユキ殿ぉ! ふぁあぁ~! ねむねむ~、でござるよぉ!」

「う、うん…… そうね、そうだね! 眠ろうか、善悪!」

 さっきまでのお寺恐いはどこへやら、途端に心強さに胸がいっぱい、夢いっぱいになってしまったコユキは、勇気凛凛、善悪ん家のママン、いやおばさんから引き継いだ自室に戻ると、安心してゆっくりと、そしてぐっすりと眠りこけてしまうのであった。

 ムニャムニャムニャ。

 翌朝、居間にみんなが集まった朝食の時コユキの質問に答えた善悪の言葉はこうであった。

「それだったら焦らなくて良いでござるよ、三日間は放置した方が効率が良いのでござる」

 質問の内容は、昨夜捕らえた地蔵の処遇についてであったが、やはり善悪たちは長い間の経験からか、こういったときに悩むそぶりも見せなかったのだ。

 餅は餅屋、ということで黙って従う事に決め込んだコユキに変わって元怠惰たいだの大罪、現努力の徳であるアセディアが味噌汁を汁椀に注ぎながら聞くのであった。

「悪魔ですか? 夕べの騒ぎですよね、我々は善悪様の指示で自室待機していましたが、強敵だったのでしょうか?」

 三角巾と割烹着の完全武装で問う一見執事っぽいアセディアに答える善悪であった。

「どうでござろうな? 強いというよりも器用なタイプだったのではなかろうか? アネモス以上グリゴリ以下の瞬発力とここまで追いかけて来る執念、それにシロクロチロに何度も噛まれたっぽいのに、痺れも焼かれも腐りもしていなかった辺りから考察するに、三属性の攻撃に対する耐性持ち、しくはラマシュトゥみたいな回復スキルか? いづれにしてもちょっと『馬鹿』状態だったのかな? お陰で簡単に捕獲出来たのでござるが、あれ、普通に戦うとかだったら結構難敵だったかもしれないのでござるなぁ」

「へえ、善悪様がそこまで仰られるとは…… 大物ですね、何て言う悪魔ですか?」

 アセディアの重ねた問い掛けに善悪は首を傾げつつ答えるのである、真面目だ。

「ん~っとねぇ、自称地蔵菩薩らしいんだけどさ…… なんだっけな? そう! 確か、運命の神? 運命神に逆らうのかとか何とか言っていたでござるけど…… 残念無念、名前までは聞いていないのでござるよぉ!」

 この発言に反応したのは例のちびっ子兄姉弟きょうだい達であった。

 それぞれが自身の前に置かれたペットボトルの蓋に、善悪から分けて貰った朝食、本日は小松菜とアボカド、リンゴとバナナのオリジナルスムージーを楽しんでいたのだったが、兄弟の五男、シヴァが兄姉弟の紅一点であるお姉ちゃんの脇をツンツン突いたことで、仕方なさそうに言葉を発するラマシュトゥなのであった。

「あの善悪様、コユキ様? その地蔵で回復と高速移動していたその悪魔って? えっと、どんな格好していましたか?」

 これには昨晩傍観者として、念入りな観察に徹していたコユキが納豆ご飯の糸を粘つかせながら答えるのであった。

「うん、なんかインドのお坊様みたいな感じなんだけどさ、手足とか首、胸辺りに奇麗なアクセサリーをじゃらじゃら着けてたわね! イメージだけどバラモンやバイシャ、スードラじゃないわね、あれ! 多分クシャトリアなんじゃないかな? それもかなり身分高い感じのね、王族とかかな?」

 ラマシュトゥが頷いた後、もう一度聞いてくるのであった。

「銀の錫杖しゃくじょうを持って、下半身にピンクのオーラを纏い、赤錆色あかさびいろの後光を背負っていたんですの?」

 コユキは味噌汁を啜りながら言った。

「そうそう! そうだったわ、何? ラマシュトゥちゃん知っているのん?」

「え、ええ、まあ…… ほら自分で言いなさいよ!」

 ラマシュトゥはコユキの問いには直接答えることは無く、傍らで俯きながらスムージーを啜っていたシヴァを小突いて返事をするように促すのであった。

 コユキと善悪は頭の上にハテナを浮かべて見つめていたが、二人の視線に気が付いたシヴァがキャップを置いて、覚悟を決めた感じで話し出すのであった。

「……あの、なんか、えっと、すいません! うちのヤツが……」

 コユキがデジャブを感じつつ目を剥いて聞き返すのであった。

「う、うちの? またなのんシヴァ君!」

 シヴァは心底ばつが悪そうにしながらも頑張って言うのである。

「はあ、多分、その襲撃者って俺ん所のバカ息子、スカンダの奴だと、思います…… 女房の事と言い、重ね重ね、すんません」

 コユキと善悪は声を合わせた。

「「ええぇぇーっ! 又あぁ?」」

***********************
拙作をお読みいただきありがとうございました!


この記事が参加している募集

励みになります (*๓´╰╯`๓)♡