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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
544.誓願

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 コユキと善悪は息を飲んだのである、これまでとムードの重さがダンチだったからである。

 いつに無く真剣な表情でフェイトを見つめる二人に対して、運命神の『伝え手』、フェイト・ラダは怖じることなく無茶ぶりを口にしたのであった。

「我が神、カリスマたるルキフェル陛下、お願いします! 一切衆生いっさいしゅじょうをお守り下さい! 何卒、この周回でサタンの力としてアナタ方の命を捧げ給え! 最早、一年プラスを越える為には…… それしか無いのです…… どうか、どうか、どうかっ、その身を、この星の為にお捧げ下さいませっ! 不敬なるは百も承知! 古代神レグバの『伝え手』、フェイト・ラダ、心より願い奉りますっ!」

 言って頭を本堂の床板に叩き付けたまま、プルプルと震え続けるフェイトから目線を父や母、妹と祖母トシ子に移した後、コユキが静かに口を開いたのであった。

「お父さん、お母さん、リエにリョウコ…… お婆ちゃん、ありがとうね、アタシみたいなもんの為に怒ってくれて…… でもアタシはこの願いに答えたい…… それにリエやリョウコの子供達、甥や姪の為に世界は、地球は今まで通り続いて行って欲しい、そう思っちゃったんだよ…… 幸いアタシってニートだからさ! 居なくなった方が良いってネットでも言われてるしね♪ はっきりとは言わないけど地上波だってそんな感じでしょ? 最後位皆の役に立って死にたいのよ♪ んだから心配しないで! きっとサタンちゃんの力になって世界を救って見せるんだからさっ、てへへ、コユキ、今回こそ本気の本気よぉ! 応援求むっ! よおぉっ!」

 善悪が続くのであった。

「皆、心配いらないのでござるっ! コユキ殿を一人で逝かせる訳では無いのでござるよ! 僕チンも一緒なのでござるからねっ! 死のうが吸収されようが喰われようが、僕チンはコユキ殿の願いを守り続けてみせるのでござるからっ! 何だったら、本体になるサタンを内側から食い千切ってでもコユキ殿、いいやコユキちゃんの願いを叶えてみせるのでござるよ? んだから、拙者達の事を心配してくれる気持ちは充分分かった上で、改めてお願いするのでござるっ! 今回の周回がきっとうまい運びになる様に…… 僕チンとコユキ殿の選んだ道、死に行く事を許して欲しいのでござるよっ! これ、この通り、おねっ! 頼むのでござるっ!」

 フェイトより激しく頭を本堂に叩き付けた善悪の隣で、大きな体を一所懸命に折り畳んだコユキも額を床に擦り付けていた。

 その姿を見ていた周囲の面々の中で、父、ヒロフミが静かに、しかし清々しい声音で言った。

「分かったよ、善悪君、コユキ…… 世界の為に…… しっかり、死んでくれ、すまないっ! う、うううっ……」

 この言葉にはいつも元気なアスタもバアルもスプラタ・マンユ、その他のメンバーも言葉を発する事無く無言で俯き続けたのである。

 暫くの間、フェイトとコユキ、それに善悪三人の弱々しい声がハーモニーの様に幸福寺の本堂に響き続けたのであった。

「「「ありがとう…… ありがとう…… ありがとう…… ありがとう……」」」

と。

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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