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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
303.リビングデッド

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 幸福寺の門の前でタクシーを降りたコユキの表情は、リビングデッド、その物であった。
 カサカサ乾いた音を立てながら門を潜りくぐり庫裏くりの入り口へと入った死霊を、いつも通り明るい声が出迎えてくれたのであった……

「あ帰りなさいませ、コユキ様! お疲れでしょう? ささ、居間で皆さんお待ちですよ? ずは濃い目のお茶で一息吐いて下さいませ♪」

ルクスリアだった…… いま一番会いたくなかった相手である、さらに最悪な出迎えは続いた。

「コユキ様! 良かったご無事で! 俺、なんか変に気になって気になって…… ははっ! 心配無用でしたな~! 何か大事な事がお座成りおざなりにされるんじゃないかって勝手に心配しちゃって! てへへ、何も無くて本当に良かったですよ! お帰りなさい!」

 アイツのオヤジ、イラが言った…… こいつ等の感の良さってなんなの?
 もう、家に帰りたくない若者の気持ちがいやと言うほど浸み込んでくる……

 そう打ちのめされたコユキは、会釈だけを残し、唯一の味方であろう善悪が待つ居間へと歩を進めるのであった。
 部屋に入ったコユキは他の誰でもなく、善悪一人だけを見つめて懺悔ざんげをするのであった。

「ジェジェンバグゥ~、アダヂィ、ゴメ、ボイデギジャッタヨォゥ! オンドレどバッグル…… 置いてギジャッダビョォゥ!! おーいおいおいおーいおいおい!!」

善悪も驚きつつ言葉を返すのであった?

「え? なに? オンドレとバックルって? 誰? んで、置いてきちゃったの? 落ち着いて、コユキ殿! 最初からちゃんと話してみるでござる! よーしよしよし! でござる! よーしよしよしよーし!」

 えっ? 今の聞き取れたの? であった、ゲに恐ろしきは愛の力である、それが証明された瞬間である…… 感動、であった!

 善悪は聞き取りにくいコユキの懺悔を聞き取ると、不明瞭で聞ききれなかった上で堂々と宣言したのであった。

「バッカだなー、不意に会ったゴミ同然の言葉を信じて、結果こんな風に悩んでしまうとはぁ! んもうっ! 人が良いんだからぁ!! 二人、オンドレとバックルでござったか、その子達の元に戻ろうと思った時に戻っていれば良かったのにぃ、でござるよ~! こいつらがそうさせないように誘引したのでござろ? コユキ殿! 大概でござろ? コイツ等ごときアーティファクトっの言う事なんて端から信じてはいけないのでござるヨォゥ! だって、こいつ等悪霊の類でござろうぅ? し折る? 燃やしちゃう? でござるよぉぅ!」

 善悪の頭の中に大きな声が届いた、これ多分ライコーだろう。

『おい! 小僧、随分な物言いじゃないかのぅ? これでも麿たちって神に仕える身なんじゃがのぉ? 悪霊とは…… 片腹痛し! じゃぞぃ?』

 この抗議には善悪の横に座って、成り行きをじっと見守っていた、アスタ、アスタロトがトシ子を片手にはべらせながら答えるのであった。

「小僧? 小僧だと! 貴様等兄上に失礼であろうが! そもそも神と悪魔の違いだと? 宜しい言ってみるが良い! 貴様等の言う神が悪魔とどう違うのか! この魔神の前で語って見せよ! このクズ共がぁ!」

『え? うっ! 魔神? アスタ、ロト…… 様、ですか? えーっと、あの……』

 なにやらライコーの態度が豹変してしまったが、コユキが気になっているのはそこでは無かった様であった。

「んまあ、良いわよアスタ! でもこいつ等なんだか他の主のために動いているんだってよ? 内掛けを手にした時に卜部うらべっちが教えてくれたわよん! なにやら企んでるんだよね? オマイラ? でしょ? もう気持ちよくゲロっちゃいなさいよ!」

『あーエットーぉ、すんません…… 無理です…… ごめ…… です』

『お前単純で馬鹿なんだから騙し通せる訳無いって随分昔に言ってやったのに…… ダっセっ!』

『ほらぁ、ライコー様ヤッパダメだったじゃ無いですか~! もうバレバレですよ~! おばさんは優しそうだから素直に話せば良かったんですよぉ!』

 卜部に加えて、綱までもが寝返った感じである、にしても始めて聞いた卜部の声ってヤ○デラさんみたいな渋めで良い声であった、なんか安心した……

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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