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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
406.担保

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 被害を聞きつけたラマシュトゥが駆け付ける事で命に別状が無かった善悪、トシ子、アスタロトの三人は本堂で待っていたコユキから、ホウレンソウの大切さを懇々こんこんと叩き込まれたのであった。

 実感させるためにコユキが行った伝言ゲームの結果に一々大仰に驚く三人をポンコツ認定したコユキだったが、この後思いもよらない出来事が自分自身の身に降りかかるとは思ってもいなかったのである。

 ブロロロォ~ 

 幸福寺の駐車場に重低音を響かせて入ってきた車、あの排気音はツミコの愛車ハマーの物だろう。

 時を置かずにコユキにとって見覚えが有り過ぎる布団や壊れたパソコ、ブルーレイやコミックを、両手にこれでもかと抱えたリエとリョウコが境内に姿を現したのである。

「はーいぃ、第一弾持って来たよぉぅ! 蟹ちゃん元気ぃ?」

 明るく弾むリョウコの声に砂利の中からハサミだけを突き出してチョキチョキ動かすカルキノス、ギリースーツ繋がりのお陰かここ数日で随分仲良くなっているようであった。

「なによ、アンタ、それアタシの私物じゃないのよぉ! 何してくれてんのよ? どういうつもりなのぉ!」

 リエが息を切らせながら答えるのである。

「どういうって、こないだ言ったじゃん! よしおちゃんも了解したでしょう? 茶糖の家から一人預かってくれるってぇ! ね?」

 善悪は草履を履きつつリエの言葉にに応えるのであった。

「うむ、その通りでござるな…… 後は某に任せて欲しいのでござるよ……」

 言うと境内に降り立った善悪は、既に二往復目に突入したリョウコとリエに遅れて境内に入ってきたツミコに向けて話し掛けたのであった。

「幸福寺へようこそツミコさん! お待ちしていたのでござるよ」

「え? ああ、すまんな面倒を掛けちまって…… 見た目と違って臆病な所もあるんだよ、優しく接してくれると安心なんだけどね」

「僕チンに任せるのでござるよ! しっかり面倒を見るのでござるっ!」

 ツミコは少し驚いた感じで言葉を続けるのであった。

「驚いたな…… いや、悪い意味じゃあ無いよ、ただ、ここまではっきりコユキとの同居を喜んでいてくれるとは思わなかったから……」

 今度は善悪が驚きの表情で言葉を返すのであった。

「へ? コユキ、殿との? え、えー! 同居ぉ! でござるかっ? 何それ? なんなのそれっ? 説明求めるので、ご、ござるよぉ!」

 コユキも慌てて境内に降りようとしてオキニのモスグリーンのスニーカーを履き履きしながら声を上げた。

「そうよ、なんなのそれ? 勝手に決めるなんて酷いじゃないのぉ! こんな性欲塗れまみれのド助平の家に、清純無垢なアタシを、はっ! 人身御供ひとみごくう、生贄なの? そんなの…… 聞いてないよぉ、善悪臭いし…… 酷いじゃない、叔母さん……」

 ツミコこそ頭にハテナを浮かべて答える。

「いやいや、アタシが聞いたのはさ、担保? アーティファクト探しの資金供出の担保にコユキ、アンタの生計に関わる一切を幸福寺持ちになったから、『車出して♪』とかリエとリョウコが言ってたからさぁ、なに? そうか! そんなに嫌だったの? じゃあ、そんな理不尽! アタシがぶっ潰してあげるわね! 任しときなさいコユキ、善悪! こんなどちらも苦しいだけの押し付けとかってアタシ許せない質なんだよね! ムフゥっウゥ!」

 その頼りがいしかない言葉にも、善悪の言葉は歯切れが悪い。

「ああ、そ~言う~…… 別に嫌とかじゃないんだけど、さぁ~、でへ、でへ、むしろ嬉しいカモとか何とかいう噂も~、とか、みたいなあぁ~?」

 こういう時の善悪爺ちゃんって残念の極みなんだよなぁ、コユキ婆ちゃんは善悪よりもマシであったが、同じくはっきりしない口調であった。

「ああ、何か言ってたわね? 担保とか田んぼとか短波とかタンパベイにもう彼はいないとかって……

ん、まあ、そうね…… 約束なら仕方ないんじゃないのか、な? 約束ならね、破るのとか…… アタシの主義と違うし、さっ…… 約束なら辛抱してあげても、まあ、我慢してあげても、約束だから、その、良いんだけどねっ! 約束だしっ!」

 ほう…… これがツンデブのツインアクティブ、ツンデブ掛けるツンデブってやつかぁ~、勉強になるな!  

 んな私、この時代とは価値観や恋愛に対する概念自体が違う、未来に生きる、生きる? まあ、存在はしている観察者、ツンデブ二人の可愛い孫は勉強したのであった。

 また一つ賢くなれたようである、良かった良かった♪

 モジモジモジモジ、良いおじさんとおばさんが服の裾をいじりつつ、縫い目を広げたり閉じたりしている所に、茶糖家では珍しいキャラ、シャキシャキメンのリエが声を掛けるのである。

「ねえ! よしおちゃん! ユキ姉の荷物ってよしおちゃんの部屋に運べば良いんだよね? 一緒に寝起きするでしょう?」

「え、え、え、え、え、え、え、え、ええええ!」

 急性の言語障害に陥ってしまった和尚に変わって相方たるコユキが頑張って答えるのであった。

「ばばばばばばばばばばばば馬鹿、いいいいいいいいいい言ってんじゃないわよ! そそそそそそそそんな、ははははははははははしたない、じゃじゃじゃじゃじゃない! ののののののののっ!」

 うん頑張ったな、ギリギリ言葉になっている始末であった、とほほ……

「えーそうなのぉ? 面倒臭いわねぇー、んじゃどこに運び込めばいいのん、ユキ姉! よしおちゃんっ!」

 リエの面倒臭そうな声に必死に答える善悪である。

「ま、ま、ママンの部屋、で……」

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拙作をお読みいただきありがとうございました!


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